天邪鬼の猫。 | ナノ






(背後注意)



「…お、れは大丈夫だから、君は今すぐ逃げて。風紀の人を呼んできて…!」

「な、涼も逃げないとダメだろ!!」


ああ、もう、うるさい。耳元で騒がないで。俺、てんにゅーせいとふつーに喋れるほど精神立ち直ってないんだから。
襲われそうになったときは鳥肌が立って気持ち悪くて手が震える、ってぐらいだったのに今、てんにゅーせいと喋ってると吐き気がして手だけじゃない、全身の震えがとまらない。


「俺が君と一緒に逃げたらこいつら追いかけてきて捕まっちゃうだろ、俺、走るのニガテだし」

「わ、わかった!!す、すぐ行って来るからっ」


わお。今回は聞き分けいいね。まあ確かにこんな状況じゃ我がまま言ってらんないもんね。
てんにゅーせいがが美術準備室の廊下へ繋がる出口から出て行ったと同時に4人の男達は俺に近づいてきた。反射的に一歩後ずさりするけどすぐに追い詰められて壁にぶつかってしまう。もう逃げられない。


「ちょっとー、会計さんのせいであの1年逃がしちゃったじゃないですかー」

「あんたら3年だろ。こんなことして退学になったら将来どうなるか分かってんの」

「うっせェよ。てめェにゃ関係ねェだろ」

「そうそ、黙ってヤラレとけばいいんだよ」


両手を頭の上で押さえつけられてネクタイをしゅるり、と簡単に外されるとその外したネクタイで両手首を縛られた。ボタンはいつのまにか全部外されてるし。…くそう、今度からボタン3つ開けやめよう。2つだけにしとこう。って、そんなことより!


「ほ、んと、やめて…っ」

「やめて、だってー。かわいーね、会計さんは」

「そんな目で見て煽んなっつーの」

「ぅ、やぁ…」


フゥ、と耳元で喋られて吐息が耳に掛かる。もーほんと気持ち悪い。はやく誰か助けてよ…!!涙出てきた。くそう、俺情けない。ちょー情けない。

ズボンにも手をかけられてパンツごと下ろされそうになった瞬間、


「てめェら何してんだ」


かなり低い人を殺せそうな勢いの声が準備室内に響いた。


(この声…っ!!)


俺の、大好きな人の声。


「し、の…っ!」


“篠”の声が、俺を助けた。“篠”が俺を助けてくれた。



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