天邪鬼の猫。 | ナノ




13


(side 朝陽)



「委員長、生徒会室に行くんですか?」

目を通し終えた書類を持って俺は職員室や他の教室より綺麗な風紀室を出る。途中、副委員長にそう話しかけられた。


「ああ、行ってくるよ。今日は俺が見回りしておくからお前らは帰っていい」

「じゃあ他の委員に伝えておきますね」

「頼んだ」


最近はあの葉山凛とかいう転入生のせいで学園が荒れ放題だ。生徒会の親衛隊は制裁なんてふざけたことしているし、転入生はそれを煽るような行動ばかり起こす。
生徒会の奴らは転入生の虜か何だか知らんが涼のおかげで生徒会が機能していることを知っているのか。仕事をしない生徒会なんかこの学園には必要ない。


「今度、風紀から忠告しておくか…」


涼が1人で努力しているのは知ってる。だけど涼はその努力を人には決して見せようとはしない。
辛さや苦しさ、涙だって1人で全て抱え込むんだ。俺は長く、絢爛豪華な廊下を1人歩いてそう呟いた。



*


風紀室と生徒会室の場所は離れてて、遠い。高等部校舎の最上階の生徒会フロアに生徒会室はある。対して風紀室は講堂ホール、図書館、音楽室、保健室などがある全学年共通で使える旧校舎にあった。生徒会室へ足を運ぶたび、あまりの遠さにたまにイラついてしまう。

生徒会フロアは一般生徒は立ち入り禁止、が原則で生徒会の持つゴールドカードがないと入れないがあのバ会長は転入生を生徒会フロアへ入れる為に一般生徒の持つノーマルカードがあれば入れるようにした。ふざけるのも大概にしろと言いたい。

エレベーターに乗って最上階のボタンを押す。チン、と音がして扉が開き少し歩いてから目の前の大きな扉の横にあるカードリーダーにスキャンする。すると扉は機械的な音と共に自動で開いた。
少し歩いてから生徒会室の扉の前につく。俺はまた1人で仕事しているであろう涼の姿を思い浮かべて数回ノックしてから両手一杯の書類の束が邪魔で肩で扉を押して入る。


「涼、書類の追加を――」


俺が見たのは1人で仕事してる涼なんかじゃなくて、のんきにお菓子を食べて笑う他の役員と転入生の姿だった。



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