天邪鬼の猫。 | ナノ






(no side)


「は、てめェ如きにそこまで言われるとは俺も堕ちたもんだな」

「生意気ですよ」

「やっぱ会計なんて最低ー」
「最低ー」


涼以外の役員たちはそう涼を嘲る。涼本人はカタカタと小刻みに震える体を何とか隠そうと必死で声を絞り出し涙を堪えて下唇をぎゅ、と噛んだ。


「お、俺は涼に謝れって言ったのに…!なんでお前は謝らないで“篠”たちにそんなこと言うんだよっ!!俺の友達を傷つけるな!!」


凛は防音効果抜群の生徒会室内全体に響くほどの大声でそう言った。


「“凛”、無駄だ。こいつ、さっきまで親衛隊の生徒とヤッてたんだろ。放っておけ」


篠が己より幾分小さい凛の体を涼に見せ付けるように抱き寄せた。涼は更に下唇を噛む力を強めた。ピンクのふっくらとした唇から真っ赤な血が少し滲んでいる。悔しさと悲しさが入り混じっていて、いつもは笑顔を貼り付けている端麗な顔が歪んでいた。


「……っ、誤解だって、言ってんじゃん…っ!小川くんは俺の親衛隊の隊長で…、それ以上でもそれ以下でもない…!朝陽のことだって、クラスメイトだから…セフレとか、好きな人とか、そんなつもりで俺はあの2人に関わったつもりはない…!」


震える声で必死にそう訴えるが


「は、どうだか」


嘲笑と共に一蹴された。


「私、さっき貴方がこの部屋から1人の男子生徒と出て行くの見ましたよ。生徒会フロアは一般生徒立ち入り禁止のはず」

「なっ…!それじゃあてんにゅーせいだって一般生徒なのにこの生徒会室に入ってるじゃん…っ!風紀だって生徒会フロアには何度も立ち入りしてる!」

「凛は特別だよー」
「僕らの大切な子だからー」

「さっきからやけにあの風紀の野郎と1年のガキを庇うな。本当にセフレじゃねェのか、お前のことだから信用できねーぜ」


「違うって言ってんじゃん!!」


涼は転入生を挟んで篠の胸倉を掴む。これ以上あの2人を馬鹿にするような発言は幾ら篠でも許さない、そう黒い真っ直ぐとした目で伝えた。


「触んじゃねーよ」


パン、と涼の体は軽くあしらわれ強い力のあまり床に尻餅をつき篠を含め他の役員、凛のことを見上げる形になる。


「…あんたらのこと、見損なった…っ!!」


涼は決して、自分が受けた責め苦のことについては篠たちを責めなかった。
誤解を解こうと必死に必死に訴えた。泣きそうになりながらも涙を堪えて。自分の弱いところをこれ以上篠たちに見せないよう涙を堪えて、訴えた。



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