天邪鬼の猫。 | ナノ
3
「涼さま…っ」
落ち着きのない2-Cの休み時間はうるさい。そんな教室に昨日見た1年生の男の子がやってきた。
「あ、昨日の子…だよねぇ?」
「はっ、はい!覚えていただけているなんて嬉しいです!」
教室の入り口でしどろもどろしてる彼に俺は声を掛けた。するとパッと笑顔になる。なんか可愛いなあ。
「で、2年の校舎までどしたの?」
「え、っと…昨日お断りになられた親衛隊の件なんですけど…もう一度考えてくださいませんか?僕たち、絶対に涼さまにご迷惑をお掛けしません!」
“僕たち”ってことは今、俺と喋ってるこの子以外にも俺の親衛隊になりたい、って子が他にもいるってことだよね。
「…昨日、俺断った時さ、どんな気持ちだった?いらない、って言われて悲しかった?」
「えっ…?そ、それはとても悲しかったんですが…涼さまの言葉ならどんな言葉でも僕は受け止めます。いらないって言われたなら…必要になってもらえるよう努力するんだって…」
「…ふーん」
この子、すごいなあ。俺なんかかいちょーに「いらない」って言われて一晩中泣いて泣いて泣きまくってただけでそんな風に考えなかったなあ。悲しいだけで、かいちょーの言葉を受け止められなかった。
「諦めようとは、思わなかったの?」
「そっ、そんなことはできません!涼さまに貰った恩が大きすぎて…!諦めるなんてできないです!ぼ、僕、涼さまが親衛隊結成を絶対に許可してくれなくても諦めません!」
真っ直ぐだなあ。本当、すごいなあ。…俺も、諦めなかったらせめてかいちょーの誤解は解けるかなあ。
「ふふ、なぁーんか照れるなあー。ね、君名前は?」
「ぼ、僕ですか?!お、小川咲と言います!」
「じゃあ小川くんに俺の親衛隊の隊長、お願いしようかなぁ」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
小川くんは何度も何度も深々と腰を曲げて礼をする。礼儀正しい子だよね。とか思ってたら小川くんは「次教室移動なので失礼します」と去って行ってしまった。…次、教室移動なのにわざわざ俺のとこ来るなんてすごいなあ。
「っは、別れた次の日にゃもうセフレ探しか?」
俺も次の授業の準備しようと教室内に入ろうとした瞬間、低い人をも射抜けそうな鋭い声が俺の耳に入ってくる。
「…かいちょー…」
SクラスのかいちょーとCクラスの俺は教室のある階が違うから基本、学校生活では接点が無い。きっとかいちょーも教室移動でこのCクラスのある階に降りてきたんだろうなあ。なんでこんな誤解されるようなタイミングの悪いときに降りてくんのかなあ。昨日ぶりのかいちょーを見て俺はそう思った。
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