天邪鬼の猫。 | ナノ
2
「…会計か。なんだ」
返事はしても俺とは絶対に目を合わせないふーきいんちょー。なんかかいちょーみたいだ。かいちょーも興味の無い相手には目すら合わせようとしないし。この2人って結構似てるんだなあ。…って、なんで俺まだかいちょーのこと考えてんだろ。うん、忘れよう。
「ふーきいんちょーってさぁ、俺の名前知ってる?」
「馬鹿にするな。それぐらい知っている。佐倉涼だろう」
「じゃあなんで“会計”って呼ぶのー?」
「…なんとなく」
…意外とふーきいんちょーって可愛いー。なんとなくだって、なんとなく。そんなの全然理由になってないしー。
「お前は俺の名前知っているのか」
「ううん。知らない」
「…ふん、久代朝陽だ。覚えていろ」
「うん、覚えるねー。朝陽って呼んでいい?俺のことは涼ちゃんでいいから!」
「勝手にすればいい。それに涼ちゃんとは呼ばない」
ふーきいんちょー…ごほん。じゃなくて、朝陽は結構不器用さんだね。うん。だって言葉一つ一つにトゲがあるような怖い雰囲気の人だけど俺が覚えてないって言ったら咎めずにちゃんと教えてくれるし、名前を呼ぶことをダメとは言わなかった。まあいいよとも言わなかったけど。
「涼ちゃん、朝陽と仲良くできそうな気がするよお」
俺がそう言ったら朝陽は初めて俺と目を合わせた。
…顔、キレーだなあ…。かいちょーには負けるけど…
「…俺もそう思うよ。生徒会の奴らは気に食わないがどうやら涼は例外のようだな」
「ソレって俺、喜んでいーの?」
「ああ、喜べ」
朝陽も笑えるんだなあー。
とか思った陽射しがポカポカあったかいある日の午後。篠のことは考えずに過ごせた。
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