天邪鬼の猫。 | ナノ
9
(side 篠)
「…何してんだよ」
暫く重い沈黙が流れた後、俺が口を開いた。
「仕事だよ。見て分かんじゃん」
「ンなこと聞いてねェよ。お前今さっきまで風紀の野郎と2人でいたのか」
「はぁ?あーそれならさっき…」
ガンっ!!
涼の返答に俺はムカついて思いっきり涼の机を殴ってやった。くそ、ちょっと痛ェ。
「いきなり何、何の真似?」
いつもの気の抜けた態度ではなく、明らかに怒りを隠さない態度のこいつに苛立ちを覚える。食堂で俺がちょっと他の奴にキスしたぐれェでさっさと飯食って出て行きやがって。俺の顔を見ようとせずに、感情を顔に出さずに、人が心配して探しに来てやったら風紀の野郎の事を考えて。
「ふざけてんじゃねェぞ。お前、風紀の野郎の事が好きなのか」
「はぁ?」
「好きなのかって聞いてんだよ」
「意味分かんないし。何で俺がふーきいんちょー好きになるわけ?」
「お前独り言で言ってたじゃねェか」
「アレがなんで好きに繋がんのさ」
「好きじゃなかったらソイツのこと考えねェだろ」
眉を少し顰めていつもより声の低い涼。その姿に俺自身も怒りを覚える。
「っ、意味、分かんない。何考えようが“かいちょー”には関係ないじゃん」
『…篠、2人のときは篠と呼べ』
俺は、そう言っただろう。なんでそんな呼び方なんだ。
「もういい、お前もういらねェよ。別れてやるから、風紀の野郎でも何でも付き合えよ。お前のことだからどうせ腰でも振って誘ったんだろ」
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