天邪鬼の猫。 | ナノ






「りょ、涼さま…っ!」

「…なあに?」


生徒会室のある生徒会フロアへ行くには1階にある食堂から寮棟を抜けて校舎棟の最上階に行かなくちゃ駄目なの。すんごい無駄に遠いんだよね。で、俺は生徒会室へ足を運ぼうと階段を上がろうとする。そしたら可愛い声の男の子に声を掛けられた。ネクタイを見るとあのてんにゅーせいと同じ赤色。高等部の1年生だ。この学校には初等部から高等部まであって各学年ネクタイで色分けされている。ついでに高等部の2年は青、3年は緑と言った感じ。


「ぼ、ぼく高等部1年でっ、涼さまのことが好きなんです!もしよろしければ涼さまの親衛隊を結成することを許可してくださいませんか?僕、涼さまに昔、助けられたことがあって、お役に立ちたいんです!お願いしますっ」


わお。すっごい切実。俺、そーゆうの嫌いじゃないよ。でもね、今そーゆう話する気分になれないから。


「昔の話なんて忘れていいよ。俺、親衛隊なんていらない」

「そんな…っ」

俺はその1年を無視してスタスタと止めていた足を進め階段を一段、また一段と上がった。

たかがキス、篠があのてんにゅーせいに告白したわけでもない。ただの好奇心なのかもしれない。それだけでこんなに怒っちゃって関係ない人に八つ当たって俺ってかなり心が狭い。

「僕、諦めません!絶対に、また来ますっ」

後ろからそんな声が聞こえたけど、あの衝撃的なキスを見た俺の頭はそのことで頭がいっぱいで1年生の言うことを気にとめられるはずがなかった。



*


生徒会室に行くとその絢爛豪華な扉の前に漆黒の艶のある髪を少しハネさせて濃紺の縁の眼鏡を掛けたうちのかいちょーのやたらと仲の悪いふーきいんちょーがいた。その手にはずっしりと書類の束があって。


「ソレ、かいちょーの判がいる書類?」

「…会計か。これは生徒会の奴等に押し付ける歓迎会の書類だ。あの馬鹿の判なんていらん」

「そう。じゃ、これ生徒会でてきとーに決めとけばいいんだよね?」

「ああ、くれぐれもミスのないように」



俺はいんちょーから書類を預かり生徒会室に入る。

…そういえば俺、いいんちょーと同じ2-Cだった気がする。同じクラスなのに喋ったのに今が初めてだ。俺はそんなことを考えながらいつものように涼ちゃん特製コーヒーを淹れて机に向かい合って書類と睨めっこ。歓迎式に掛かる費用の計算をして思うんだけどこの学校はどんだけ金掛けてんだよ。「0」の数が一々すごい多いんだけど。


「…ふーきいんちょー…名前、何てゆーんだろ」


ふ、と思った。そー言えば俺、ふーきいんちょーだけじゃなくて同じクラスの奴の名前も全然覚えてない。ちゃんと覚えてんのかいちょーと他の生徒会メンバーとてんにゅーせいぐらいなんだけど。

ガチャン、扉の閉まる音。生徒会室に人が入ってきた。


「……かいちょー」


なんであんたがここに来るんだよ。



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