天邪鬼の猫。 | ナノ
4
ざわざわ ざわざわ
周りの音が煩い。
真っ暗な世界に叩き落されたみたいに、一面灰色。
その中にも“色”はあって
俺の大事な人が、転入生にキスしてる。
灰色の世界の中で、俺と、篠だけに、色がある。
「なっ、何すんだよっ!!?」
転入生がかいちょーをぶん殴った。殴られるとは思わなかったんだろーな。喧嘩とか力とかちょー強いかいちょーが殴られるなんてありえない。てか俺も思わなかったし。おかげでボーっとしてた俺は正気に戻ったよ。
そんなことより、さっきより一層食堂内がざわついた。チワワちゃんたちが「篠様が…」「あの黒毬藻ありえない!!」って言ってんのが聞こえる。俺その気持ちすげー分かる。黒毬藻ありえないよね。てかそれよりもっとかいちょーがありえないんだけど。
「…お前、俺に媚びないのか」
「媚びるわけねェだろ!!俺達友達なんだから!!」
キスされても“友達”で片付ける転入生ってある意味すごいなあ。ほら、新条柚木…だったけ。ちょー睨んでるし。てか何で俺睨むんだよ。俺何もしてないじゃん。
ふくかいちょーもちょー怒ってるしさーかいちょーの親衛隊のコだと思うんだけどちょー泣いてるしねー?双子にいたってはアレおもしろがってるし。
ほんと、なんなんだろーね。“葉山凛”くんはさ。
「お前も俺と友達になりたいんだろ!?不器用な奴だな!!そうゆう時はキ、キ、キスなんかじゃなくてっ、ちゃんと名前から教えろ!なっ?簡単だろ!!」
すんごーく、幸せな頭の持ち主なんだね。俺ついてけない。
「はっ。おもしれェ奴だな。俺の名前は西園寺篠だ。好きに呼べ」
「分かった!篠だな!俺達はもう友達だぞ!!」
……―――何で?何で、俺以外の奴に名前呼ばせてんの?
………所詮、俺のことは本気じゃなかったってコトだよね。
…他の奴に、笑顔見せないでよ、
俺は篠が、こんなにも好きなのに。
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