天邪鬼の猫。 | ナノ
2
「俺の名前は葉山凛って言うんだ!!お前は何てゆーの!!?」
第1印象は、動く黒い毬藻だった。
あーもう、どうしてこうなったの。
ふくかいちょーがてんにゅーせいを迎えに行ったあと、双子書記は自分達の部屋へ帰るとか言い出して結局生徒会室には俺と篠の二人っきり。ま、当然っちゃ当然だけど俺ら一応付き合ってるわけで彼氏さんの方がちょっかいをかけてきたの。んで、じゃれあうみたいにイチャイチャしててさ、チューとかギューとかいっぱいした。今日の篠かいちょーもカッコよかった。
で、ここまではいいんだけど30分ぐらいしてからふくかいちょーが顔を真っ赤にして戻ってきたの。
「ふくかいちょー、顔真っ赤ー」
「…惚れたかもしれません」
「は?」
「転入生に…惚れたかもしれません…!」
俺とかいちょーは目をパチクリさせた。ちょー驚いたってこと。だって普段は沈着冷静、何にも惑わされないちょー美人の大和撫子でちょー腹黒鬼畜なふくかいちょーがだよ?顔真っ赤にさせてそんな爆弾発言しちゃったら普段しかめっ面のかいちょーでも、チャラけてて周りはどうでもいいですよ〜みたいな俺でもちょー驚くよ?てか今驚いてるし。
で、それをまたかいちょーがおもしろがって「見に行くぞ」とか言い出したの。時間はちょーど夕方ごろでふくかいちょーが同室の子と一緒に食堂でもいるんじゃないかって言ったから食堂に3人で行ったの。
「きゃーっ!西園寺様が食堂にっ!」
「澪様!今日も麗しすぎる!!」
かいちょーとかふくかいちょーの親衛隊ってすごく可愛い子多いよねー。なんでだろ、2人が抱かれたいランキングの1と2位だから?…俺親衛隊ないんだよなあ。くそう。欲しいとも思わないけどなんか寂しいよね。羨ましいなあ。なんて考えながら可愛い子たちにヒラヒラとへらへらの笑顔で手を振る。
ぼこっ
「いたっ」
…かいちょーに頭殴られた。拳骨で。
「何、“篠”ってばヤキモチー?」
「フン、お前は俺だけ見てろ」
「ふふっ、どーしよっかなー」
「あぁ?んだと?」
うそうそ。俺、ずーっとかいちょーのことしか見てないし。なんて2人でてんにゅーせいを探すふくかいちょーの後ろでかいちょーとヒソヒソ話をする。
「あっ、会長」
「澪副会長とりょうちゃんもいるー」
すると、食堂の生徒会専用スペースに双子書記がいた。
「ありり、柳瀬が2人いる」
「僕らはもともと」
「2人だよっ」
「冗談だし」
生徒会専用スペースは一般生徒の座る一般スペースにある螺旋階段を上る2階にある。ソファもふかふかだし―生徒会室のソファには負けるけど―テーブルも一般スペースのより広いし結構贔屓されてる。
ふくかいちょーとかいちょー目当てのてんにゅーせいもいないし、そんな豪華な生徒会専用スペースへ俺らは上がってとりあえずご飯を食べることにした。
「和食定食」
「じゃあ私は中華定食で」
「んー…俺はサラダとコーンスープとデザートセットと…他は何にしようかなーんー…」
「お前食いすぎだろ」
「いーの。ほっといて」
タッチパネル式のメニューとにらめっこ。全部おいしそうなんだよねー。あ、パンも食べよーっと。
「あっ!おい!澪!そんなトコで何してんだ!!?」
俺がいろんなメニュー選びながら注文してる途中、突然下から大声、いや叫び声?がする。生徒たちがたくさんいて騒がしいはずの食堂なのに、よく声が通るなあ。
その大きい声で呼ばれた「澪」っていうのはふくかいちょーの名前でそれを一般生徒が軽々しく呼び捨てにするなんて。俺はちょっとした好奇心で双子書記と一緒に金色の何かと装飾が施された柵越しに下の一般スペースを見下ろす。
そこにいたのは摩訶不思議、動く黒い毬藻なのでした。
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