天邪鬼の猫。 | ナノ
2
「お前…なんでここにいるんだ。部屋に帰れ」
「だって今日でかいちょー停学期間終わりだろぉ?だから俺仕事しに…」
「駄目だ。部屋帰って寝とけ。俺もこの書類に目通し終わったら行くから」
俺の言葉を遮る篠は書類を机に置いて立ち上がりずかずかと大股で俺の側までくる。
「はぁ?そんなんいいよ!俺ここで仕事手伝…っ」
「出ていけ。邪魔だ」
有無を言わさない篠の不機嫌そうな顔に睨まれながら俺は首根っこ掴まれて追い出された。ひどい!しかも俺を入れないように生徒会室の鍵まで閉めて。こんなのカードキーですぐ開けれるし!ってパスケースに入れてるはずのカードキーを探すけどない。前のポケットにも後ろのポケットにも胸ポケットにもない。
俺としたことが…多分部屋に忘れてきちゃったのかな。
しょうがない、取りに行こう…
俺は踵を返し寮の自室へと向かった。
**
しばらく歩いてると俺の歩いてる反対側から人が来るのが見えた。目を細めてそれが誰か確認する。
ちょっと遠くにいて見えにくいから、合ってるかどうかは自信ないけどあれは…
「ふくかいちょーだぁ…」
亜麻色の髪に、篠や朝陽と同じぐらい背の高い、背筋もぴしっていつも堂々としてる人が書類を数枚片手にこっちへやってくる。うん、やっぱりあれはふくかいちょーだ。なんでこんな時間にここにいるんだろう。それに周りに双子や凛くんはいないようだし1人だ。驚いて俺は少し後ずさってしまう。
だめだだめだ、逃げちゃだめだ。
『会計さまの頑張り、最後まで見せてもらおうかな』
朝陽と約束したから俺がんばるんだ!とぎゅっと両手の平を強く握りしめた。
以前の俺なら多分ここでふくかいちょーを避けるために逃げてただろう。でも俺はがんばると決めたんだ、こんなことでいちいち逃げちゃだめだ。堂々としていないと。
俺は自室へ戻るため足を一歩踏み出した。
- 126 -
[ prev * next ]
栞を挟む