天邪鬼の猫。 | ナノ
「久しぶり」
俺が倒れた日からちょうど10日目の昼。
今から俺は久しぶりに生徒会室へ足を運ぶところだった。なぜ久しぶりかと言うとこの10日間、篠は俺に仕事を一切させてくれなかったから。
俺が仕事をしないってだけでかなりの量の仕事に追われるはずなのに、篠は休んでる俺の分まで仕事をきっちりこなして、授業もさぼることなくしっかり受けて、正直そこまでしてもらわなくてもほんと大丈夫なのに看病のうちだと言って俺のご飯まで作ってくれて。
絶対しんどいはずなのに平気だなんて嘘なんかついてまで篠は俺に仕事をさせてくれなかった。だから俺にとっては久しぶりの生徒会室。
そんな真面目な篠とは反対に俺は授業も休んで生徒会の執務もしないで部屋でごろごろ。我らがかいちょー篠のおかげでゆっくりできました。それに10日前はあった熱も一晩寝たらすっきり治った。
いつまでもぐうたらごろごろする訳にもいかんと俺は休んでる間、これまた毎日忙しいはずなのに俺の様子を見に来てくれてた朝陽のノートを借りて写させてもらってた。朝陽ってばすごい字がキレーなんだよなぁ。…勉強もできるんだし生徒会の仕事もできるよ、と何回も俺は言ったのに篠は安静にしてろの一点張り。大丈夫なのに。
しかもなんで篠が停学になったのか、なんで俺の看病をしてるのか、いくら聞いても教えてくれない。それらは朝陽でさえ教えてはくれなかった。
でもまあそうこうするうちに、短いようで意外と長い篠の停学期間は今日で終わり。俺も篠の子守から解放されたわけだ。
「ん〜っ」
腕を上にあげて背筋を反らしながら伸ばすと腰がポキポキと小気味いい音が鳴る。うん、すっきり。
少し距離のある俺の部屋から生徒会室まで歩くこと数分。豪華な生徒会室の扉の前、俺はそこで立ち止まった。
なんか、緊張する。10日ぶりってだけなのになんかどきどき。
今は昼だから、多分中には誰もいない。かいちょーは授業受けてるだろうし、ふくかいちょーや双子は多分どっかで凛くんと遊んでるだろう。
俺は取っ手に手を掛け、そーっと扉を開ける。すると入ってすぐに甘い紅茶の匂いが俺の鼻を衝く。
え、もしかして誰かいる?
短い廊下を抜けて執務室へ向かうと案の定、人がいた。
「かいちょー」
びっくりした。篠が紅茶を飲みながら会長席に座って書類に目を通してる。…周りを見回すけど他に人はいないみたい。
今ここにいるのは篠と俺だけかぁ…。なんて考えると思わず頬が緩んでしまう。
呟いた俺の存在に気付いた篠は無表情だった顔から一変、一気に眉間に皺を寄せて俺を睨んだ。
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