天邪鬼の猫。 | ナノ
強がり
(side 朝陽)
森田先生のところへ行くという西園寺と別れ、俺は急いで生徒会室へと向かう。
降りてくるエレベーターを待つのも煩わしくて階段から向かおうと走った。階段からなんて体力的にしんどいと分かってはいたけどエレベーターの中でじっとしてるなんて体が落ち着かなくて無理だ。
形振り構わず生徒会室を目指した。
*
階段を上がっては踊り場に、上がっては踊り場に、何度かそうしてるうちにやっと最上階の生徒会室にたどり着く。仮眠室で1人きりで泣いてるであろう涼を思うと胸が苦しくてノックするのも忘れて扉を勢いよく開けた。
そこには目元に涙を浮かべながら鼻を真っ赤にして驚いた様子で俺を見る涼の姿があった。
俺はすぐさま涼のそばに寄る。
涼が西園寺に何かされたのは検討はついていたが涼は“篠にまた誤解された”と言った。
俺は泣きだした涼を宥めようと前から涼を抱きしめ背中に腕を回し摩る。
涼の甘いコーヒーの匂いが鼻を掠めたと思ったら、涼が俺の肩に顎を乗せて泣く。…正直、かわいい。状況が状況だけにそんなこと言ってる場合ではないけど。
くだらない誤解とすれ違いで泣く涼。素直になればいいだけの話だろ?俺がそういうと涼は少し怒ったのか俺の肩に鼻を擦りつけてきた。涼は冗談だろうが鼻水をつけたかったらしい。その仕草1つでさえ俺にとってはとても愛しいものだ。
「朝陽まじやさおー」
俺がここに来た理由を話し、逆に俺の心配をしてくる涼に心配しなくていいと返す。すると涼はそう俺を茶化した。
俺を茶化す余裕があるくらいに元気になった…ように見えるけど、俺には涼が無理してるだけのように見える。
「ちょん、ちょん」
俺は柄にもなく子供のように涼の頬をつねって縦、横、丸にひっぱり最後に少し力を入れて頬を引っ張り離した。
すると涼はほんのちょっぴりだが泣く。もっと、泣けばいいのに。泣き虫な涼はもっと泣いて西園寺のことなんか忘れればいい。
涼は泣かずに俺の腹に顔を押し付けてきた。涼の金色の髪を撫でようとしたら涼は腹に埋めていた顔を上げてありがとうと礼を言った。
泣いて潤んだ瞳、俺の腰にまわす腕、抓ったせいで赤くなった頬、
――俺は涼に、欲情してしまった―――
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