天邪鬼の猫。 | ナノ




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(side 朝陽)



「…涼の元へは行くが、お前もちゃんと来い。最低でも涼の熱が下がるまでは極力涼の元を離れないように。これは風紀委員としての忠告だ。分かったな」

「…んなことぐらい分かってる」


何が分かってる、だ。全然その顔は分かってないだろう。俺の言葉を聞いた途端、飼い主に怒られた犬みたくしゅんとなる。そしてすぐに眉を顰め悔しそうな表情を見せた。

絶対、分かってない。


「……お前ら、ほんとめんどくさいな」

「あ?」


ここ最近、西園寺は猿…葉山凛のところへは執拗に行かないようになり、いるとしても副会長や書記とともに義務的に葉山の側にいただけ。歓迎式の日あたりから西園寺が2人で葉山といることはなくなった。
これは西園寺の親衛隊隊長の証言と風紀の情報網を持って確認済みだ。

生徒会の仕事は会長である西園寺にとって当然の執務だが自分の仕事に加え、涼に隠れて副会長や書記の分の書類整理や会議にまで出席。夏休みからここ1ヶ月、明らかに涼の負担を減らしたと言える。


“篠は俺のこと嫌いだと思うよ”と涼は言うが俺ならいくら他の仲間が仕事しないからと言って自分から嫌いな奴の負担を減らす真似はしない。


涼は素直じゃない。天邪鬼で、自分を見せない。西園寺もきっと自分の気持ちに気づいてないのか、はたまた認めたくないのか、意地っ張り。


お前ら、本当にめんどくさいよ。
はぁ、と溜息と共に俺は呆れて笑ってしまう。


さっさと、――だと言ってしまえばいいのに。そうすればこんな誤解どうでもよくなるに決まってる。

――だと言って、しまえば。



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