天邪鬼の猫。 | ナノ
19
(side 朝陽)
風紀委員として巡回を終えて職員室前を通りかかっているとチン、という音とともに西園寺が書類片手にエレベーターから降りてきた。途端に自分の表情が硬くなっていくのが分かる。あっちも俺の存在に気づいたらしく西園寺の馬鹿も明らかに嫌悪を顔に出していた。
それより、何故こいつがここにいる。
俺はこいつに涼の看病を任せたはずだぞ。
と、一瞬その考えが脳裏を掠めるも書類を持っているし仕事で森田先生にでも会いに来たんだろう。それは分かるが、
「西園寺、おま―――」
「――さっさと、涼のところに行きやがれ」
は、と思わず間抜けな声が出た。俺の言葉を遮ってまで何故こんな馬鹿なことを抜かす。
俺の言葉をもう忘れたのか。鳳凰学園の生徒会長が…笑わせてくれる。
「……涼の容態は」
「…さっき目ぇ覚ました」
「はぁ…お前なぁ、俺はお前に涼を任せたんだ。分かってるのか」
いや、任せたという言葉は少し語弊があるな。処罰だ、そう処罰。風紀委員長として俺はこいつに処罰を与えた。
「…風紀の処罰を受けないとは…退学処分にされても文句は言えな――」
「―いいから黙って涼のところへ行けよ…ッ!」
また俺の言葉を遮りやがった。
…それにしてもなんだその余裕のない態度は。お前らしくない。
どうせまたくだらない勝手な勘違いをして動揺してるんだろお前は。なんて口には出さないが。
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