天邪鬼の猫。 | ナノ
16
「別に何もされてないよー?」
「じゃあなんで泣いてるんだ」
「これは目にゴミが入って…」
「嘘を吐くな。…西園寺がまたいらん勘違いしたのだろう」
うげ、バレてる。つか分かってんなら最初から聞かないでよね。
「また…っつーか前から誤解されてるやつ」
“お前久代が好きなんじゃねぇか”
…あんな真っ直ぐ目を合わせられて言われるとか…さ。本気で篠、俺のことそう思ってんだろーなあ。そんなこと、篠には面と向かって言われたくない。他の生徒からは「セフレいっぱい」「近づいたら孕む」「頼んだらヤらせてくれる」…とかまで言われてるのにムカついたりはするけどあんまり心に留めない。でも篠は違う。篠の一言一言が俺にとっては嬉しいことだったり、悲しいことだったり、時には腹が立つことだったり。
「…あ゛ー…考えたらまた涙でてきたぁ…」
「…馬鹿だな涼は。素直になればいいものを」
よしよし、と朝陽は俺の背中を前から腕を回してさすってくれた。つまり俺は今朝陽に抱きしめられている状態になる。目線を横にやれば朝陽の髪。爽やかないい匂いが鼻を衝いた。…俺は顎を朝陽の肩に乗せて泣く。
「素直になれたら苦労なんかしねぇんだよ朝陽のばかちん…」
それもそうだ、と笑う朝陽にムッときた俺は朝陽の肩に鼻水をつけてやった。
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