天邪鬼の猫。 | ナノ






(篠 side)



眠っている涼に謝っても意味がないが、起きている涼に謝るなんて真似は俺には到底できないだろう。俺様だの暴君だの周りに言われるがそこまで俺の神経は図太くない。


「…俺が絶対に涼を守ってやるから…幸せにしてやるから…」

だからもう、無理はしないでくれ、涼。



コンコン、とノックの音が部屋に響く。凛たちなら諦めてさっき生徒会室を出て行ったから凛たちではないはず。俺は警戒するようにそっと数センチだけ扉を開けた。


「さっさと開けやがれ」


扉のドアノブをぐっとノックした本人に引かれ仮眠室と執務室を繋ぐ扉が全開になる。

扉の先には生徒の前にもかかわらず煙草を噴かす無精髭の男と白衣を羽織った男がいた。
涼の担任と、生徒会顧問の2人だ。


「涼が寝てるから帰れ」

「んだとこら。俺が我が子のように可愛がってる教え子の様子をわざわざ見に来たっつーのによ」

「様子見にくんのに煙草噴かしてんじゃねぇよ。涼に何かあったら殺す」



すると涼の担任、古賀はわざとらしく俺の顔に煙草の煙を噴きかけた。その憎たらしい動作でさえ酷く美しく見える。

なんでネコだとか言われる華奢な生徒はコイツのこういう仕草に惚れるのか。俺には分からん。


「んな真似しても俺は靡かねェぞ。他のヤツにしとけ」

「あァ?それは俺が葉山に手を出してもいいということなのか?それとも―――」


わざとらしい。古賀はそれ以上言葉を続けず今だ眠る涼の姿を視界の端に映した。



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