天邪鬼の猫。 | ナノ
8
(篠 side)
久代の奴、馬鹿じゃねぇのか。俺に涼を看病しろだと?そんな処罰聞いたことがねぇ。
俺にそんなことする資格がねぇことぐらい久代が一番よく知ってるはずだ。馬鹿じゃねぇのか。
文句を付けようにも久代は足早に生徒会室を去ったせいでつけられず逆に俺が澪たちに文句を言われるハメになった。くそ、めんどくせぇ。
「なんで処罰撤回してくんねぇんだよ篠っ!!」
「今回の件について俺達は今までの己の行動を振り返るべきだ。とくに澪と双子、お前ら凛が転入してきてから仕事をロクにしたことあんのかよ。ねーだろ。停学の間によく考えろ」
俺はめんどくせぇのを追い払うように誰も入ってこれねぇよう鍵をかけて涼の眠る仮眠室へ1人向かった。
廊下では凛の出て来いよとか話は終わってないだとか怒鳴り声が聞こえるが無視だ。今はそんなもんに構ってる場合じゃねぇ。自分の目で涼の様子を確認しないと今にも息が詰まって死にそうなんだ。
ベッドの傍のテーブルランプがほんのりと色づく薄暗い仮眠室、涼を起こさないよう涼の眠るベッドにそっと腰掛ける。…以前の涼なら眠ってる時、傍に人の気配があればすぐ起きるはずなのに今は死んだようにピクリとも動かない。
「…涼……ごめん…ごめんな…涼…」
ぴた、と真っ青な涼の頬に一滴の雫が落ちる。ハッとなってそれを拭うけど一滴、また一滴と涼の顔の至るところに雫が落ちた。
目頭が熱い。涼の顔が見れねぇ。
「…情けねぇだろ…俺」
この歳になってボロ泣きとか情けねぇ。
- 106 -
[ prev * next ]
栞を挟む