天邪鬼の猫。 | ナノ
6
(篠 side)
「今回だけはお前達を見逃すわけにはいかない。葉山は1週間の停学と反省文を原稿用紙で3枚、新条、古畑は3日間の停学と反省文を原稿用紙で3枚提出。
生徒会副会長、書記の2人は停学10日間の間、生徒会の執務を行うこと。暫くは生徒会としての特典、権利の使用を禁ずる。反省文は原稿用紙10枚分ほど提出してもらおう」
俺は、処罰の対象に含まれないのか。
目に映るのは今にも泣き出しそうな凛を澪や柳瀬兄弟、新条に古畑が慰める光景だった。全員で凛をおろおろと取り囲み励ます。
以前の俺ならその輪に入っていただろうが、今はそんなことよりも涼の容体が気になる。
無理をさせすぎたんじゃないだろうか、傷つけすぎたんじゃないだろうか、
どうして俺はもっと早くに気づいてやれなかったんだ。
焦る気持ちが俺の心を覆う。
「篠、貴方ならこの処罰を撤回できるでしょうッ、こんなふざけた処罰、撤回させなさい…!!」
「そーだそーだ!」
「凛と1週間も会えないなんて耐えられない!」
「…撤回させろ」
「頼むよ、会長さん」
撤回させたところでお前らは仕事をしないんだろ。涼に負担を掛けるだけなんだろ。
昔の俺のように凛の後を金魚のフンみたくついて回って凛の機嫌取りに励むんだろ。
「…西園寺、」
睨みつけるように、でもどこか不安そうな声で俺の名を久代が紡ぐ。
分かってる、涼が倒れたのは俺のせいでもある。涼は睡眠も食事も摂らずに仕事を続けてきたんだ。
凛のことが好きだからだとか、涼を守りたいからだとか、言い訳をしては俺は逃げ回ってただけだ。仕事からも、涼からも。
だから、今回こそはちゃんと涼、お前を守らせてくれ。
「生徒会長として、今回の処罰は撤回させるわけにはいかねェ。特に澪と柳瀬兄弟、お前達は個人的に涼に謝れ」
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