天邪鬼の猫。 | ナノ






頭、痛い。


頬杖ついていた手でこめかみを押さえる。痛みが時間が経つにつれ増して行くように思えた。

湿気た空気の中でカチカチと時計の音だけが響く。


集中…できねー…。


視界がボヤけて焦点が合わない。書類の文字も上手く見えないし胸の辺りがずっと気持ち悪くて吐きそうだ。辛うじて持っていたお気に入りの青のシャーペンも持っていられなくなってするりと俺の手の中から抜け落ちた。


「…おい、大丈夫か」


カシャン、とシャーペンを床に落とした俺の異変に気づいたらしい篠が俺にそう声を掛けた。
嬉しいけどなんで今なんだ。頭痛と吐き気がヒド過ぎて返事なんかできない。俺はなんとか俯いていた顔を上げてこっちを見つめる篠の目を見て大丈夫、と目で返事した。


「大丈夫そうじゃ、ねーじゃねーか…」


篠のこんな弱弱しい声は初めて聞く。意識が今にもどっかにぶっ飛びそうな中、俺は暢気にそんなことを考える。

あまりにもひどいソレに生理的な涙が零れた。俺はハッとなって上げていた顔を俯かせた。
篠のおい、と焦る声が耳に入るけど返事どころか今度は篠の目見ることさえできそうにもない。ただ、俺の傍に駆け寄ってきてくれたらしい篠のワイシャツの裾が俺の目の端に映った。



「――涼、書類を…」


吐き気も治まることを知らず何も考えることのできない俺に予想できただろうか。
まさか、こんな状況のときに朝陽がっここへ来るなんて。

両手いっぱいの書類をバサバサと床に撒き散らして朝陽は顔を真っ青にして俺の元へ駆け寄って背中を優しく擦ってくれた。それでも治まらずに吐き気も頭痛もどんどんひどくなる一方だ。

風紀室から生徒会室まで書類を持ってやってきてくれた朝陽の体は風で体を冷やしたのか少し冷たくて気持ちいい。俺は背中を擦ってくれる朝陽に体を預けるようゆっくりと凭れ掛けた。



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