天邪鬼の猫。 | ナノ




「  、」


「はぁー…」


放課後の生徒会室。見栄張って朝陽にあんな生意気なこと言ったはいいけどやっぱりこれだけの量の書類を目の前にすると風紀に頼りたくもなる。俺は無意識のうちに恒例と化した溜息を零した。

涼ちゃん特製コーヒーを入れて早速席に着く。学園祭の出し物の調整をしなくちゃ。ざっと目を通したところやっぱ女装とかコスプレ系が多い。そーゆーうちのクラスも女装喫茶です。

そういえば篠のクラスって何組だったっけ。んー…Sクラスか。Sクラスの出し物は…。


「ほ、ホストクラブ…?」


ちょい待ち。ここは男子校のはず。男がホストクラブって。
…他のクラスの出し物に文句つける気はないけど…ね。うん、この学園って生粋のホモ校だなって実感するよ。
え、じゃあちょっと待って。ホストクラブってことは篠も接客すんの?…カッコいーんだろーなあ…。


ガチャ、とちょうどそのとき、執務室に篠が入ってきた。片手に書類を持っているところを見ると今日もまた自室で仕事してたんだと思う。見た感じ篠は1人らしい。前に大嫌い、って言ったこともあって、2人きりは少し気まずい。


「…か、かいちょーも仕事に来たの…?」


恐る恐る話しかけてみる。俺にしては頑張ったと思うんだ。どんな返事が返ってくるかと緊張したけど篠の口から返事は返ってこなかった。でも篠が会長席に座って書類整理をし始める様子を見ると仕事しに来たんだなと俺は勝手に納得する。え、てか今俺…篠に無視、された?夏も過ぎ去り蝉の鳴き声も止んだ9月、そんな小声で喋った覚えはない。蝉の鳴き声も、凛くんのあの大声も何もない静かな生徒会室で俺の声が篠に届かないはずはないのに。


「え、あ、あの…か、かいちょーのクラスの出し物ってホストクラブなんだねぇ…俺のクラスは女装喫茶でさぁ、」


返事してくれないかな、と期待の意を込めてそう言うけどそれは簡単に裏切られて。やはり無視された。…これはさすがに俺の被害妄想、ではないと思うんだけど…。
俺は一気に寂しくなって、やっぱり前の大嫌いだと言ったこと怒ってるのかなとあれだけ後悔したのにも関わらず俺はまた後悔した。
だけど俺は1つ学んだんだ。後悔して泣いてばっかじゃ駄目だってこと。諦めて何度も朝陽に迷惑掛けてるようじゃ駄目だ。
こうなったら意地でも篠が返事してくれるまで話しかけてやるんだ。



「学園祭のことについてなんだけど、風紀が凛くんがトラブルに巻き込まれないように細心の注意を払えって…」


生徒会の執務に関する質問なら答えてくれるんじゃないだろうか。
俯いた顔を上げることができずに頬杖ついたまま書類と睨めっこする俺の耳に入ってきたのは


「…分かった。凛のことは心配しなくていい」


それは篠が凛くんを守るって意味?だから心配するなってこと?


…あり、書類がボヤけて見えねー…


書類の文字が滲んでよく見えない。…泣いてるって認めたくなくて俺は手元にあった涼ちゃん特製コーヒーをぐいっと飲み干した。
大好きなはずのコーヒーの砂糖の甘さがこんなにも鬱陶しくなるとは思いもしなかった。
胸焼けがして吐き気がするのは多分コーヒーだけのせいじゃないと思う。…すっかり治っていたと思っていた頭痛がより酷くなって再発した気がする。頭が痛みでガンガンと響いた。



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