天邪鬼の猫。 | ナノ
「天邪鬼みてェ」
「かいちょーはコーヒーブラックでいい?」
「ん、ああ」
「じゃじゃーん、涼ちゃん特製コーヒー。はい、どーぞ」
ふふん、会計補佐時代に先輩達にシゴかれてきたからコーヒー淹れたりするのは得意だ。俺は熱々のコーヒーを淹れたカップをかいちょーの机に置く。
自分の分もついでにいれて角砂糖をぽちゃぽちゃと何個かコーヒーにいれる。かいちょーの席は役員全員を見渡せる席で俺はかいちょーから見て左側の席に座る。よし、決めた。ここ俺の席。後で私物持ってきて俺の机にしてやろう。
(お気に入りのお菓子とか持って来よぉーっと)
シロップとミルクも混ぜてティースプーンでくるくるくる。俺専用超甘甘コーヒーのかーんせーい。
ズズ、とコーヒーの香りと味を味わいながら飲む。うむ。超うまい。やっぱ甘いのはおいしいなあ。
「お前、よくそんな甘ったるいもん飲めるな」
「えー?もちょっと甘くしてもいいトコだよう。てかかいちょーこそそれ苦くないのぉ?」
「ちょうどいい。またコーヒー…淹れてくれ」
「お?それは涼ちゃん特製コーヒーが気に入ったってことですかぁ?」
「…ああ」
「かいちょー素直でいいこでちゅねぇ」
「馬鹿か」
赤ちゃんを相手にするような喋り方をすればかいちょーにそう言われた。くだらなさすぎておもしろい。あと意外にかいちょーと喋るのおもしろい。かいちょーはなんか絡みたくなる人だ。
「ねーかいちょー」
「なんだ」
「コーヒーのお返し、なんかちょーだい」
なんて冗談だ。俺はこんなもので見返りを求めるような人間じゃない。ちょっとかいちょーからかってみたくてした質問なのに。
「…こっち来い」
と、かいちょーに手招きされた。
「なーにー?」
何かもらえるのか、もらえるものはもらっとこうと本気にしてるかいちょーの目の前に立つ。ちょっとワクワク。
椅子に座ったまま俺を見上げるかいちょーはニヤニヤしててなんで笑ってるのか疑問に思った瞬間、グイっとネクタイを引っ張られて唇に柔らかいものが触れる。
目の前にはかいちょーのこんな間近で見ても欠点1つ見当たらないキレーな顔があって口の中ににゅるっとかいちょーの舌が侵入してくるまで俺には一体何が起きたのか理解できなかった。
ただ1つ今言えるのはかいちょーが好き好んでこの俺にキスしてる、ってことだけだ。
- 11 -
[ prev * next ]
栞を挟む