天邪鬼の猫。 | ナノ
3
部屋に戻ってさっそく俺は書類整理。あまりの多さに倒れそうだよ。夏休み中にいくら学園祭に関する書類を片付けてたって言ってもそれはあくまで事前準備みたいなもの。本番に近づけば近づくほど絶対にミスしちゃいけないような書類もあるし出し物調整だってそんな短時間でできるようなものじゃない。猫の手も借りたいぐらいなのに副会長や双子書記は仕事をしないわ凛くんは書類汚すわで無駄に俺の仕事が増える。今更、俺が土下座して頼んでもあの3人は仕事してくれないんだろーな。土下座なんてしないけど。はぁ、と俺は溜息をついた。
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次の日、結局俺は徹夜して仕事を片付けるも終わる事無く寝不足のまま―寝不足どころじゃないけど―学校に来ていた。学校ではさっそく学園祭の話題で盛り上がってるから失敗させられないってゆープレッシャーが掛かる。
「涼、おはよう」
「あ、朝陽ー。おはよ」
頬杖ついてクラス全体を眺めていた俺に朝陽がそう声を掛ける。返事をすると朝陽は荷物を机に置いて座りながらこっちを見て優しそうに笑った。うお、イケメンの笑顔はまぶしすぎる。朝陽は今日もカッコいいなあ。キラキラ輝いてんぜこんちくしょーめ。
「涼、寝不足なのか?」
「うぎゃっ!?」
「あ、悪い」
不意に朝陽が俺の左頬に手を当てて親指で目の下をそっと撫でる。突然のことに俺は変な声を上げてしまった。朝陽はパッと手を離して涼は色気のない声を出すんだな、と一言。ちょ、この人セクハラ!なーんて朝陽もこんな下ネタっぽいこと言えるんだな、と感心したのは内緒だ。
「俺のクマ…そんなにヒドイ?」
「パンダみたいだ」
「それ絶対言いすぎだよね」
確かに寝不足の自覚はある。だって今日、俺一睡もしてないんだもの。授業中に寝んのもありだけどなー、前みたくこーちゃんに呼び出されて生徒会の仕事できなくなんのはホントやだ。しかも長い説教の後、数学のプリントを何枚出されたことか。プリントも書類も見たくないのに。
「ご飯は?ちゃんと食べてるのか?」
「…ん、食べてるよう」
「嘘吐け。ちゃんと食べてたらこんなにやつれる筈がない」
「ひゃっ!」
「あ、悪い」
お母さんみたいだ、と突っ込みたくなる朝陽の質問に半分嘘になるけれど答えると両方の脇腹を突然持ち上げられた。椅子に座っていた俺のぷりてぃーなお尻は宙に浮く。それに加えて朝陽の指がちょうど俺の脇下を掠ってくすぐったくなって俺は奇声を上げてしまった。すると朝陽はパッと手を離す。軽くお尻打った。ちょー痛ぇ。
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