天邪鬼の猫。 | ナノ






「裏方がイイ。つか裏方じゃないとヤダ。朝陽もなんか言ってよぉ」

「俺、涼の女装見たいよ」

「ひどい!裏切った!」


諦めろとクラスいいんちょーにぽん、と肩を押される。他の奴らはどんな女装させようかとか盛り上がってるしチワワ系の子たちは涼さまの女装が見れる!とか言ってるしもうほんとヤダ。
俺ひょろいけど男だよ?腹筋も人並みに割れてるよ?筋肉だってあるもん。少女漫画に出てくる王子様みたいにお姫様をかるがると担げるぐらいの力はあるのに何が悲しくて女装なんかしなきゃいけないんだ。しかも俺、生徒会の仕事があるから準備もロクに手伝えないのに当日は接客をしろと?むり、みんなの涼ちゃん疲労で倒れちゃうぜ。


「俺、準備もあんまり手伝えないし当日も生徒会の巡回とか開会式の挨拶とかでいろいろと忙しいし…」

「もう決まったよ、佐倉くん」

「いいんちょぉおお!」


…どうやら抵抗は無意味らしい。うぅ、いーよ。開き直ってやるもん。やるならメイクをしてとことん気持ち悪いぐらいにやってやるからな。売り上げ落ちても知らないから!つーか絶対売り上げ落としてやる。



**

その日の授業も終わってすっかり学園祭のことで意気消沈した俺は今、生徒会室に来ていた。…完全防音の筈なのにどうして凛くんや双子の騒ぐ声が生徒会室の外にまで聞こえるんだろう。ものすごく入りたくない。凛くんがいるってことはかいちょーもいるんだろーな。今日だけサボっちゃだめ?でも今日の執務サボると明日の書類がハンパないことになる。各クラスの出し物のアンケートの集計もしなくちゃいけないし学園祭に関する予算案も提出しないといけないし。

はぁ、とユウウツながらも俺は生徒会室の扉を開いて執務室に向かった。


「あ!涼!来るの遅かったな!俺、涼のこと待ってたんだぞ!!」

俺に向かってそう叫ぶ凛くんはまた勝手に人の席に座って俺のお菓子箱から俺の許可も遠慮もナシにクッキーを食べていてクッキーのカスをボロボロと書類の上に零していた。…ああ、もう。ほんっっっとめんどくさい。


「うん、ごめんねぇ。でも俺仕事しないといけないからすぐに部屋に戻らないと」

ふくかいちょーと双子を睨みながら嫌味を言ってみる。3人とも顔を歪めて俺を睨んでたし仕事してない自覚はあるらしい。ちょっと気分イイ。

…どーでもいいんだけどこの執務室内に篠の姿は見当たらなかった。少し疑問に思いながらも俺は俺の机の上にどっさりと溜まった書類を両手で持ち生徒会室を出る。去り際に凛くんがなんか言ってたけど俺にはその言葉に耳を傾ける余裕がない。ふくかいちょーたちの視線が怖くて、あれ以上生徒会室には居られなかったから。最近の俺に逃げ癖ついてんの自覚あるよお。



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