天邪鬼の猫。 | ナノ




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(side 朝陽)


『篠のこと!だいっ嫌いだから絶対向かない!』

締め切りを過ぎてるのに風紀に回ってこない生徒会が処理するはずの書類が幾ら待っても届かないから風紀室を出て生徒会室へ向かう。

この前、西園寺の奴が仕事してくれて助かる、と涼は言っていたけれど西園寺が仕事をするのは当たり前のことなんだ。…助かる、なんて涼に思わせるほど仕事を放棄していた西園寺たちに苛立ちを覚える。今度、風紀委員として忠告してやろうか。

だから、たまたま生徒会フロアで涼の言葉を聞いたときは西園寺ざまあみろと思った。だが涼が西園寺のことを“会長”と間延びした呼び方をせずに“篠”と呼んでいたことにその言葉が本心じゃないことを知る。涼はできるだけ西園寺を会長と呼ぶようにしてるようだが、そんな余裕もなかったんだろう。あんな風に怒鳴って西園寺の名前を呼ぶなんて。

正直かなりむかついた。でも明らかにショックを受けたであろう西園寺を見ればやはりざまあみろと思った。


「――――無様だな、西園寺」


怒りに任せてフロアの壁を壊す西園寺を見下しながら言ってやった。西園寺は不機嫌丸出しで俺を睨む。舌打ちとともに厳つい顔が更に眉間にシワを寄せたせいで厳つくなった。やたらと低い声で俺が此処にいる理由を問う西園寺を虐めてやろうと涼に会いに来たと言えば罰が悪そうな顔をする。…どうやら、涼を悲しませている自覚はあるらしい。


「帰りやがれ」


お前にそんなことを言える資格はあるのか。阿呆め。


「何故お前にそんなことを言われなくてはならない」

「お前に涼はやらねェ」


やらないだと?。涼を悲しませているお前にそんなことは言われたくない。…涼の心を西園寺から奪おうとしても俺では意味がない。今も昔も涼の心を占領してるのはお前のくせに。俺がどれだけ手を伸ばしても届かない涼の心を独り占めするお前が涼を悲しませていながらよくもそんな台詞を吐けるな。


「ふざけるなよ。どこぞの猿に惚れたと抜かし涼を泣かしておきながら今更、涼はやらないだと?涼はお前の玩具じゃないんだぞ」


涼がお前なんかの為にどれだけ涙を流したと思っているんだ。今更、仕事をしたぐらいで罪償いした気になるなよ。


「玩具だなんて思ったことはねェ!!」

「じゃあ何故もっと涼のことを大事にしなかったんだ!!今更、お前が涼に何を言うつもりだ!!どれだけ涼が傷ついたかもしらないで!!」

「黙れ!!涼のことは俺が一番――…ッ」


俺は西園寺の発言に怒りが沸点に達し胸倉を掴み上げ怒鳴った。俺なら涼を泣かせなかったのに。絶対幸せにしてやれるのに。
西園寺に対する怒りがどんどん込み上げる。

情けない話、俺は一度涼に振られているが諦めきれない。少し…いや、かなり女々しいと自分でも思うが友人として涼を好きとは思えないんだ。


「己が傷つくことを恐れて涼を傷つけるお前に涼を好きだと言う資格はない」


俺にも、涼に好きだと言える資格は無いけれど。
涼が西園寺のせいで泣く度、何度も何度も俺は涼にいっそのこと西園寺のことを嫌いになってしまえばいいのにと思う。西園寺を嫌えば、涼も少しは俺を見てくれるだろうか。

俺はすっかり生徒会室に用事があったことを怒りで忘れ風紀室に戻ってきてしまった。…あとで副委員長にでも書類を取りに行かせるか。苛々が治まらなかった俺はそのあと、書類の整理中にシャーペンの芯を何本も折ってしまった。



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