天邪鬼の猫。 | ナノ




13


ああ、もう、俺のばか。ンっとにばか。自分がよく嘘つくとか自覚してるけど!自覚してるし言ったあとに言うんじゃなかったってよく後悔するけど!

…今回のは後悔で済むレベルじゃない。俺は取り返しのつかないことを言ってしまったんだ。
あの日、篠は俺にいらないと言った。そんな俺に嫌いと言われて話しかけたり、今日みたいにキスして、抱きついたり…って真似、篠はもう絶対してくれない。寧ろ、今日の出来事は夢の中の奇跡としか言いようが無い。…キスをしてくれたことも抱きしめてくれたことも、それらが篠の気まぐれでしたことだったとしても俺は嬉しかったんだ。その幸せを自分で溝に捨てるような真似をした俺…ほんとばか!ばか通り越してあほだあほ。俺のばか、どじ、まぬけ、おたんこなす。


「うぅ…あーもう、涙とまんね…っ」


部屋で泣き崩れる今の俺に髪や服を濡らすふくかいちょーにぶっかけられたコーヒーを気にする余裕なんかなかった。

しんどくてずっと投げ出したかった生徒会の仕事も最近から篠が俺と一緒にやってくれるようになって、やっぱり生徒会の会計って役職に任命されてよかったなあって思えるようになってきたのに。

…俺、どこから間違えたんだろ。とにかく実家から離れたくてこんな全寮制の学校に来たのが間違いだったのかな。この学園に来なかったら生徒会会計になって、篠に出逢うこともなかったのに。大袈裟だけど、こんな気持ちなんか知らずに済んだのに。


「くそう…嫌いじゃねーもん…。その逆で…俺、篠が好きなのに…ぐすっ」


いっそのことさっきの言葉通り篠のこと嫌えばいいんじゃね?そーだよ。俺は天下の会計さまなんだから。下半身緩々でセフレもたくさんいるってみんなからは認識されてんだ。俺は一途とか泣き虫とかそんなキャラじゃないんだよ。少なくとも以前までの俺はこんな女々しくなかった。1人の人間にんな執着したことねーし…。血の繋がった家族にも、あんだけ尊敬した前生徒会メンバーの先輩たちにも…こんな風に思ったことないのに。


「…ヒッく、…篠に嫌われたくねぇー…うぅ」


何でもするから、さっきに戻ってあの言葉を取り消すことはできないだろうか。誰か俺に今すぐ魔法のランプください。それか濁声のあの青いロボットたぬきでもいいので。

俺のこの性格、ほんと嫌になる。凛くんみたいにあんな素直で思ったこと全部言葉にできたら誤解なんかされずに済んだだろうか。…素直な俺は俺じゃないよね。分かってるもん、そんなことぐらい。ああ、もう。考え出したらキリないよ。…くそう、さっきの俺しんじゃえばか。

とりあえず俺はコーヒー臭い体を洗い流す為と少しは自己嫌悪に陥る心を紛らわせるためシャワーを浴びることにした。



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