更新履歴2012 | ナノ






別に、なんともなかった。
自分の指先からライターの火のようにか細く小さな火が灯っていても、なんともなかった。

熱いなんて感じなかったし、指先が燃えている感覚もなかった。

でもなんだろう。腹の底から湧きあがるこの感情は!
もしかすると、俺は祖父や父、兄弟たちのように能力を手に入れたのだろうか!

代々柳家の血を受け生まれる男児は何かしらの能力を持っていた。
風を操る者、雷鳴を轟かせる者、水を扱う者、緑と会話できる者、そんな凡人とはかけ離れた能力を扱う者達の中でも自然の力を扱う柳家は国家や裏社会、その能力を利用する者たちから何世紀も前からとくに重宝されていた。

でも俺はその能力を持って生れなかった。どれだけ検査を受けても、いくら特訓を積んでもその成果は出なかった。
それと比例するかのように、俺は何事においても突出した点はなかった。能力がなければその他の点で優秀な成績を収めることもできない。特技もない。容姿もどこで遺伝子がねじれたのか美しい母とも男らしい掘り深い顔の父ともスッキリとした顔立ちの兄とも美少女のような可憐な弟とも似ていない。

そんな俺が、能力を手に入れた!何もかもを燃やしつくす最強と謳われる火の能力!
俺の指先で小さく灯るソレは確かに俺が能力者であるということを示していた。

これで俺もやっと柳家の男として認めてもらえる…そう考えると今までのつらかった15年間なんてどうでもよく思えた。
屋敷の母屋から隔離された小さな埃まみれの物置に一人暮らすこともない。親族たちやこの屋敷に仕える者たちから蔑まれることも見下されることもない。

父にちゃんと、息子として見てもらえるかもしれない。
俺はあなたの血を受け継いでる。母はやっぱり不倫なんてしていなかった!

指先にともる小さな灯りを燃え盛る劫火に変えて俺は俺を15年間閉じ込めた物置の頑丈な鎖で封じられた扉を灰にして外へ出た。



主人公はずっと閉じ込められてたわけではなく、学校はちゃんと行ってました。友達はいません。
家族と隔離され一人で孤独に暮らしてたのでちょっと人が苦手?過去有りの嫌われ?不憫な子…と今のところは考えてます。また設定変えるかも。



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