更新履歴2012 | ナノ
弟と喧嘩して家出してきた聡史を俺のお嫁さんに迎え入れてから早四ヶ月。二人の生活は同棲始めて二週間で慣れた。聡史の料理うめえ。
三週間経った頃には聡史は小ぢんまりとした定食屋さんでバイトを始めた。毎日まかないもらって帰ってくる。なんか嫁っぽいなーって思う。
あと夜、寝るときに部活やりてーと半分寝ながらぼやいてた。何がやりたいのと聞いたら写真部がいいと言った。俺をいっぱい撮るんだとか。かわいいから寝ぼけてるこいつのほっぺにキスしてやった。多分、聡史は覚えてない。
一か月と少しが過ぎたころ、聡史の弟ちゃんがうちに来た。実は聡史には内緒だけど俺、お義父さんとはたまに連絡とったり会ったりしてた。でも弟ちゃんとはそういうの一切なかったから驚いた。聡史はちょうどそのとき買い物行ってたからいなくて、自然と弟ちゃんと俺が二人っきりで喋るハメに。弟ちゃんとまともに喋ったの初めて。
兄ちゃんこんなところに住んでんの、ちゃんとご飯食べてんの、兄ちゃんのこといじめてないだろうな、などなど。お口は結構悪かった。最近流行りのツンデレというやつですか。
弟ちゃんはお兄ちゃんのことが心配で大好きなのね。悪いがお前の大好きなお兄ちゃんは俺の嫁だぜ、義弟よ。
学校生活でも常に一緒の俺達は夫婦とからかわれるようになった。同棲生活二か月目。
そりゃー弁当おそろいだし?ハンカチも色違いだし?帰りとか聡史が居残りしてどんだけ遅くなっても俺待つし?そう言われてもしゃーないってか実際夫婦ですし?ただ婚姻届出してないってだけで。
俺はほんとに夫婦なんだって自慢してやりたかったんだけど聡史が恥ずかしいから無理って言うからしゃあなしキス一つで我慢してやった。ついでに初キス。この日は料理できん俺がレシピ見ながら赤飯炊いた。
聡史と生活を始めて三ヶ月目に入ったころに、俺達は大喧嘩した。些細な口喧嘩とかはいっぱいあったんだけど、あんなに長引いたのは初めて。1週間全く口を聞かなかった。
あんときの俺、バイトとか家の事とかでイライラしてたんだと思う。多分聡史も。お互いイライラしてて、つい俺があたっちゃったんだよね。なんて言ったっけなー…あーそうそう。俺らって一応夫婦じゃん。聡史はそれを未だに冗談だって思ってるみたいだけど、俺は本気なわけ。だから聡史に俺の事本気で好きかどうか聞いたの。聡史は親友として好きみたいな、そんな言い方して。
なんかそれってキスしただけで浮かれてる俺がバカみたいじゃん。風呂だって一緒に何度も入ったのにさ、セックスもしてねー俺バカみたいじゃん。バカみたいじゃん。つか俺バカじゃん。
1週間全く喋らなくて、学校でも共に行動しなくなって林夫婦離婚か?ってバカにされて、その噂聞いた弟ちゃんがお義父さん引き連れて説教しにきて。
喋りたくてもこんな大喧嘩したことないからどうすればいいかわかんなかっただけだし、離婚とか言った奴まじボコったし、聡史は家に連れて帰るとか言いだした樫原家に泣いてやめてくれって頼んだし。
聡史のこと愛しすぎててまじで自分怖い。このままほんとに離婚とかなったら俺死ぬ。生きていけねー自信超ある。って限界超えた俺に聡史は一言こう言った。「今日の晩ご飯何がいい」って。学校、しかも人いっぱいいる教室内だったけど俺思いっきり聡史抱きしめて「お前がいい」って叫んだ。林夫婦再婚おめでとう!!と先生たちまで喜んでくれた。聡史は恥ずかしがって「お前バカじゃねーの」って言ってた。うん、俺もそう思う。俺ってば超聡史バカ。
その日から喧嘩することなくついに今日、四か月目。同棲始めて初めての夫婦一大イベント。聡史の誕生日。
またレシピ開いて慣れない料理をする。メニューは赤飯。前回は米がかたすぎたから今回は気をつけて炊こうと思う。ホールケーキを買う余裕はなくて、泣く泣く小さいショートケーキ二つ買った。来年は聡史の好きなアイスケーキにしてやるって決めた。
「聡史、ハッピーバースデー」
「…金ないくせにケーキなんか買うなよ。祐助食えないじゃん」
「お前が食べればいいよ。俺聡史食べる」
「…バカ。俺、泣きそう」
「嬉しくて?」
「…当たり前だろバカ」
「あんなバカバカ言うなよ……ほら、これプレゼント」
「何?これ」
「カメラ。一眼レフ?らしい。金ないからさ、安もんだけど」
「は?!おま、カメラって高いじゃん!安もんなわけねーだろ!なんでこんなん…っ」
「聡史写真部入りたいつってたじゃん」
「言ってねーよ!」
「いーや、言った。それ持って写真部入れよ。そんで俺いっぱい撮れ、な?」
「…そんなことで金、無駄遣いすんなよバカ」
「バカだよ。俺超バカだよ」
「…ありがと。大切にするわ、これ」
「おう、大切に使え。あとほんとに嬉しいならキスして」
「バカ。………目、瞑れ」
「えっ」
聡史が俺の両頬押さえて思いっきりぶちゅっと。マウス、トゥー、マウス。
こりゃあ明日も赤飯炊かないといけねーな。