更新履歴2012 | ナノ






「ただいまーマルぅ…」

あ、この声、たろうが帰ってきた。おかえりって言ってあげなくちゃ!

「どうしよう…俺またサナと喧嘩しちゃった…」
「みゃあ」

あら。たろう、元気がないって思ったら。

それより、またけんかしたの。ほんっと、しかたないなぁ。どうせ今回も、たろうがサナさんをおこらせちゃったんだろ。

しょうがない、ぼくがなぐさめてやる。ほら、今日はいっぱい抱っこしていいぞ!

「俺にはやっぱマルだけだぁ〜」
「にゃっ」

ちょ、そんなところをさわるな!だっこはしていいけど、しっぽさわるのはゆるさないぞっ。

「…このまま、あいつと別れることになったらどうしよ」
「にゃあ、」

そんなかお、するなよたろう。ぼくがいるだろ。

「…俺のこと、励ましてくれてんの?」
「みゃあ」

ほら、なめてやるよ。たろう、ぼくに手をなめられるのすきだろ。
だからさ、げんきだせって。な、たろうっ。

ピンポーン

「誰だ?こんな時間に…マル、ちょっと待ってな」
「にゃあ」

たろう、ぼくのあたまなでていっちゃった。
おいていくなよ、たろうのばか。せっかくなぐさめてやってたのに!だれだよ、じゃましたのは!

「にゃーお」
「あ、マル」

あ、サナさんだ。
サナさんが泣きながらたろうに抱き締められてる。

ずるい、ずるい、
たろう、ぼくもぎゅうしてよ。ぼくもサナさんにしてるみたいに、ぎゅうして。

「マル、ちょっとあっち行っててくれる?」
「みゃあ、みゃあ」
「ごめんな」

なんだよ、なんだよっ。
たろうのばか。だれがたろうのことなぐさめてやったと思ってるの?
サナさんがいればぼくのことなんていらないのかよっ。

もういいっ、たろうなんてしらない!




「あんっ、あぁっ、たろぉ…んあァッ」

「サナっ、サナっ」


また、こうびしてる。
目をはなすといつもそうだ。今日はなかなおりのこうびだな。

なんだよ、なんだよ、ぼくがなぐさめてやってたのに、
むかつくなあ、いやだなあ、ぼくよりサナさんのがたいせつなのかなあ、
さっきまで、あぁんなに泣きそうになってたくせに、

「みゃあ、みゃあ」

「やぁん、マルがっマルが見てるぅ…っ」

「んふ、サナかわいい。マルは猫だから、分かってないよ」


ばかにするな!たろうのばか!人間のくせに!

そっちこそ僕のこと分かってないくせに!


「たろう、んっ、すきぃ…あんッ」

「俺もっ。サナ好きだよ…俺もうイきそ、」

「ああんっ、中、中きてぇッ」


なんだよ、なんだよ、なんだよ、なんだよ、なんだよ!

ぼくだってたろう好きだもん!
せかいでいちばん好きだもん!


「じゃあまたね、たろう、マル」

「そこまで送る」

「え、あ、ありがとう」


もうくんなっ。たろうも帰ってくんなっ。


ガチャン


なんだよ、なんだよう…。

「みゃあ」

たろうの、ばか。だいきらいだ。



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