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神羅ビル内を散策する一人のタークスの少女
それがユリアだった
今日は任務が入っていなかったため、いちおう“各フロアの警備セキュリティの確認を自主的に行う”という名目で仕事をしているのだが、ほぼサボりに近いことはユリア自身もよく分かっていた
ユリア:「なんか楽しいことないかなぁ…」
ほとんどのフロアは回ってしまったため、普段あまり行かない地下の搬入口に足を向ける
警備強化中や任務が立て込んでいる時間帯であれば人が大勢いるのだが、残念ながら今は誰もいない
……いや、一人いる
柱に身を隠し、そっとその人物の行動を伺うと、どうやら扉のロックセキュリティの解除に苦戦しているようだった
任務時の出入り以外は閉まっているこの扉は特殊なロックがかけられているのだが…知らないのだろうか…
入力パスワードが間違っていることを示すブザー音に溜め息を吐いているその人物は、服装からしてソルジャーだ
ソルジャーが一人でこんなところに来るってことは……
二回目のブザー音が鳴り響いた時、ユリアはソルジャーの背中に声をかけた
ユリア:「おーい、そこのロック、三回間違えると警報鳴るぞ?」
突然声をかけられたことに驚いたのか、ソルジャーは勢いよくこちらを振り返った
「その服は……タークス…!!」
向こうも服装で判断したようで、表情が苦々しいものに変わる
そうだよな、こんなとこでタークスに出くわすと思わないよな
ユリア:「何してんだよ、こんなとこで」
警戒させてはいけないと思い、笑顔で歩み寄ってみるも逆効果だったようでソルジャーは数歩後退った
そのうえ無言だ
ユリア:「ボクが見た感じ、脱走ってとこ?」
「………」
ユリア:「ねぇ、答えてよ」
「……関係ないだろ」
やっと口を開いたと思ったら吐き捨てるようにして言葉が返ってきた
その態度にユリアはムッと唇を尖らせ、ポケットから社用の端末を取り出してソルジャーに向かって突き出した
ユリア:「ちゃんと話してくれないと…ボクの端末で仲間、呼ぶよ」
ほぼ脅しのようなものだったが、ソルジャーは観念したように大きな溜め息を吐いた
ユリア:「で?脱走、するの?」
再度問いかけるとソルジャーは渋々といった感じに頷いた
「……あぁ、そうだ」
やっぱりな…
ユリアは軽く唸ると、パッとソルジャーの方を見上げた
ユリア:「じゃあ、ボクも連れてってよ」
「はぁ?」
ユリア:「決まり〜!そこ代われ、 クラウド」
先程までソルジャーが向かい合っていたパネルの前に立ち、手早くパスコードを入力する
その様子を彼は…クラウドは呆然と眺めていた
クラウド:「どうして俺の名前を知っている」
どうしてって…そんなの決まってるだろ
ユリア:「忘れたのか?前に、」
前に、 会っただろ?
それは……いつ?
…………わからない………
降りしきる雨、
「お兄ちゃん…っ!」
赤く濁った水溜まり、
「お前は…幸せになれ…」
どんよりとした灰色の空、
「俺が…お前の生きた証」
冷たくなっていく大切な人………
「あたしが強かったら、もっと力があれば…そしたら…お兄ちゃんがーーーー」
何が真実で何が嘘なのか
今となってはもう、分からない
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