小説 | ナノ



07
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レッドXV:「ただいま〜!ナナキ、帰りました〜」



コスモキャニオンの近くでバギーが故障してしまい、レッドXVが機械に詳しい人を紹介してくれるというので付いていったら…



ティファ:「レッドXV、様子が変じゃない?」



様子が変、なんてもんじゃない…

キャラ変わっちゃってるんじゃないか?



エアリス:「ねぇ、ユリア?」


ユリア:「ん?」



後ろから小声で話し掛けられる



エアリス:「クラウドと何かあった?」


ユリア:「…………」



一気にユリアの表情が曇ったため、エアリスはそれ以上何も聞かなかった

数分後、ここの長とも言えるブーゲンハーゲンのプラネタリウムを見るとかでクラウドがレッドXVのところから戻ってきた

選ばれたのは、ティファとバレット

残ったユリア、エアリス、ユフィ、ケット・シーはコスモキャンドルを囲むようにして座り込んだ



ユリア:「なぁ…エアリス……ボク」

エアリス:「二人の時は“ボク”じゃないでしょ!」


ユリア:「でもユフィとケット・シーが…」


ケット・シー:「クー…カー…」


ユフィ:「グーグー……」


エアリス:「寝てるよ?」



………ユフィは狸寝入りとしか思えないほど不自然な寝方だ



エアリス:「で?なぁに?」


ユリア:「……あたしが小さい頃に聞いた昔話、聞いてくれる?」


エアリス:「うん。わかった」


ユリア:「むかしむかし、あるところに小さな兄妹がいました……」











「よし、今日は何して遊びたい?」


「うんとね……おままごと!」


「いいよ。じゃあ俺がパパな?」


「うんっ!」



兄妹はいつも一緒で、とても仲良しでした

しかし、数年後…

兄は家を出て遠いところで働くと言い出したのです



「俺、立派になって帰ってくるから!父さんも母さんもお前も、元気でな!!」



そう言って兄は家を飛び出しました



「お兄ちゃん!!待って!お兄ちゃん!!」



妹は必死に兄を追い掛けます



「お兄ちゃん!あたしも……あたしも一緒に行く!!」



すると兄は立ち止まりました

妹は兄に縋りつきます



「あたし、お兄ちゃんと一緒に行きたい!!」



兄はゆっくりと妹を引き離し、同じ視線になるようにしゃがみました



「お家帰りたい、とか言わないか?」


「うんっ」



その力強い声と瞳に兄は頬笑み、手を差し出しました



「それじゃあ、一緒に行こうか」


「うん!」



そうして兄妹は二人で旅立ちました






長い年月が経ち、兄も妹も立派になった時…



突然、兄は事故で死んでしまいました

一人になった妹は仕事を辞め、当てもなくふらふらと彷徨う日々

ある日、道端に人が倒れていました



「大丈夫ですか!?しっかり!」


「う………」


「お兄、ちゃん…?」



そう、倒れていた人は兄だったのです

しかし、兄は事故で死んでしまったはず……

一人で混乱していると、兄が口を開きました



「アンタ……誰だ?」



残念ながら、兄は記憶喪失になってしまっていました

妹の事も、自分の事も覚えていないのです

妹はひどくショックを受けました、が丁寧に一つ一つ兄に教えていきました

けど、妹は自分達は兄妹だとは教えませんでした

妹はいけないと分かっていても、兄に恋心を抱いてしまったのです

やがて兄も妹に恋をしてしまい、二人は互いの想いを打ち明けました

そして、二人の兄妹は結ばれました


兄は真実を知らず、妹は真実を隠したまま…











エアリス:「……悲しいのか嬉しいのか、分かんないね」


ユリア:「でしょ?…でも、本当に………だったら…」


エアリス:「ユリア?」


ユリア:「あ、うん…ごめん…」



俯くユリアを覗き込み、笑顔を向けるエアリス



エアリス:「今度はわたしが喋る番だね」


ユリア:「え?」


エアリス:「クラウドと、何があったの?」



真剣な表情で見つめるエアリスに、ユリアは視線を落とした



ユリア:「……怒られただけ、だよ」


エアリス:「それだけでお互い口も聞かないの?」


ユリア:「あたしが悪いんだよ、勝手な事ばっかりしてるから。だからクラウドも怒るんだよね…」


ユフィ:「……なんか、ゴメン。アタシがマテリア盗ったから、こんな複雑な事になっちゃって…」



いつから起きてたのか、ユフィも申し訳なさそうな面持ちになる



エアリス:「マテリア?」


ユリア:「ゴンガガでユフィに大事なマテリア盗られちゃってさ。バギーで移動してる時にちょうど見つけて……あんな…」


エアリス:「そうだったんだ。いきなり“止めて!”なんて言うからびっくりしちゃった」


ユリア:「エアリス…ごめんなさい……」


エアリス:「うぅん、いいの。後はその“ごめんなさい”をクラウドにも言わなきゃね」


ユリア:「クラウドは…もう許してくれないよ…」



あの怒りようは相当だった

謝って許してもらえるだろうか…



エアリス:「クラウドはね、ユリアが嫌いだから怒ってるんじゃないの。すごく、すご〜く心配だから怒るの」


ユリア:「?」


エアリス:「だから、ね?クラウドにごめんなさい、しよ?」


ユリア:「うん……分かった」


エアリス:「うん、ユリアは偉い子!!」



よしよしと頭を撫でてくれるエアリス

照れ臭かったけど、嫌じゃなかった



ユリア:「……お姉ちゃん…」


エアリス:「ふふっ、なぁに?」


ユリア:「呼んでみたかっただけ」


エアリス:「何それ〜」



笑い合う二人のそばにユフィも近づく



ユフィ:「ね、ね、その大事なマテリアってさ、なんで大事なの?」


ユリア:「これ?」



輝く紫のマテリア

何も危害はない、独立マテリア



エアリス:「それ、本来の効果の他に何かあるの?」


ユリア:「…うん。会いたい時に会えるようにって。これがあればいつでも一緒だから」


ユフィ:「やっぱりユリアは変わってるよな〜」



しげしげとマテリアを眺めるユフィに軽く頬笑む



ユリア:「いいの。おまじないだから」



マテリアをポケットにしまい、立ち上がる



ユリア:「さて!行ってきますか」


エアリス:「じゃあ、わたしがクラウド呼んでくるね」


ユフィ:「アタシはここで応援してるよ〜」



なるべくクラウドと二人で話したかったから、人目につかない場所を探した

見つけたのは、景色がすごくいい所



エアリス:「ク〜ラ〜ウドっ」


クラウド:「どうした?エアリス」



梯子を降りてきたクラウドに、エアリスが左の扉を開けるように指示する

首を傾げながらも、その扉を開けると



クラウド:「…………っ」



夕日を浴びながら遠くを見つめるユリアがいた


クラウドが歩み寄ると、その気配を察してユリアは振り返る



ユリア:「……クラウド…」



あの時のように眉間に皺を寄せているが、瞳は冷たくなかった

かと言って優しいわけでもない



クラウド:「何か用か?」



言葉には未だ怒気が含まれている

それに怯えながらも頑張って言葉を探す



ユリア:「あ…と、その……」


クラウド:「用が無いなら行くぞ」



身を翻し、扉へと向かう



ユリア:「………!!」



早く言わなきゃ!
──でも、なんて?

嫌われたくない!
──もう嫌われてるよ

一人になりたくない
──また置いてかれるの?


 弱 い か ら ?



クラウド:「……………」


ユリア:「…………」



咄嗟に掴んだクラウドの腕

クラウドは立ち止まった



クラウド:「なん………っ」



腕に軽く振動が伝わる

見れば小さく震えているユリアの腕



クラウド:「ユリア…?」


ユリア:「…ラ、ド……クラウド…」


クラウド:「………………」



ユリアの手に力が籠もる



ユリア:「ごめ、なさ…ごめんなさいっ……っ…」



異変に気付き、慌てて後ろを振り返るクラウド

ユリアは大粒の涙を零しながら俯いていた



ユリア:「分かったから……クラウドの迷惑も…み、んなの迷惑も……わ、分かったから…」


クラウド:「ユリア……」


ユリア:「もう勝手にしない……、迷惑かけないようにするから……だからっ」



顔を上げ、真っすぐクラウドを見つめる



ユリア:「一人にしないで……置いてかないで…」


クラウド:「ユリア、分かった」

ユリア:「嫌われたく、ないよ……ごめんなさ…」


クラウド:「ユリアっ」



優しく、力強く抱き締める

初めて見たユリアの弱い面

その姿に胸を締め付けられる

しゃくり上げているユリアの背中を軽く叩いた



クラウド:「俺も…悪かった。ひどい言い方をした…」


ユリア:「クラウドは、悪くないよ……」


クラウド:「でも、こうしてユリアを泣かせただろ?」


ユリア:「…………」



クラウドはそっ、とユリアの体を引き離した



クラウド:「ユリア、約束しよう。もう無茶はしないでくれ」


ユリア:「うん……、しないっ」


クラウド:「分かってくれたならいいんだ……行こう」



そう言ったクラウドの瞳はとても優しく、暖かかった



ユリア:「うんっ!」




クラウドの後ろにくっつくようにして下に降りる



ユフィ:「おっかえり〜!お、ちゃんと仲直りしたみたいだね」


エアリス:「ユリア、目赤いよ?大丈夫?」


ユリア:「うん……ぁ、おう!余裕余裕っ」


エアリス:「よかった!」



エアリスが頬笑んだ瞬間、ユリアの体が揺れた



ユリア:「あ、れ?…っ、」


「「!?」」



突然倒れたユリア

その様子に男性陣は慌てふためいた



バレット:「た、倒れちまったぞ!?」


ケット・シー:「偉いこっちゃ〜!」


レッドXV:「オ、オイラ、お医者さま呼んでくる!」


クラウド:「俺は宿を借りに
ティファ:「スト────ップ!!」



皆の動きが一斉に止まる

それを確認し、エアリスはユリアの額に手を置いた



エアリス:「ユリア、熱があるみたい。少し寝れば治ると思うよ?」


バレット:「なんだ。よかった…」


ケット・シー:「ほな、医者と宿は必要でんな」


ティファ:「そうね。二人とも、お願い」


レッドXV:「うんっ!」


クラウド:「分かった」



二人が行ったのを見届け、ティファはケット・シーにユリアを運ばせ、バレットには氷を頼んだ



ユフィ:「さぁて、アタシはユフィちゃん特製お粥でも作ろっかな!」


エアリス:「あ。わたしも手伝う!ティファ、ユリアの事お願いしていい?」


ティファ:「もちろんよ!」



笑顔でエアリス達を見送り、ユリアが運ばれた宿屋へと向かう



ティファ:「ユリアの様子はどう?」


レッドXV:「薬の効果で眠ってる。相当疲れが溜まってたみたいだよ?」


ティファ:「そう………さぁ、後は私に任せて!!行った行ったぁ!」



部屋の中にいる男性陣を強引に外に押し出す



バレット:「お!?押すな押すな!」



抗議の声も無視して全員を締め出してドアを閉め、溜め息を吐いた



ティファ:「ふぅ……」



これで邪魔はいなくなった…

















ユリア:「ん………?」



ふと目覚めればベッドの上

頭が冷たい

なんで………?



ティファ:「あ、起きた?」


ユリア:「ティファ…?」



体を起こそうとしたが、頭がボーッとする

なかなか体が言う事を聞いてくれない



ティファ:「無理に起きないで?まだ熱はあるんだから」


ユリア:「熱?」



だからこんなに熱いのか……

って違う!!



ユリア:「クラウド達は!?」


ティファ:「ギ族の洞窟に行ったみたいだけど…」


ユリア:「マジかよ……」



ホントはティファも行かなきゃいけないのに……

またパーティー編成したのかな?



ティファ:「……一緒に、行きたかった?」


ユリア:「え?」



俯き気味の視線が遠慮がちにこちらを見る



ティファ:「ユリアは…クラウドが好きなの?」


ユリア:「………へ!?」



な、なん、なんだこの質問!

突然もいいとこだろ!!



ユリア:「や、別に…?」



無意識のうちに口から出た言葉

これは本心なのか嘘なのか、ユリア自身もよく分からなかった


すると、ティファの表情が変わる



ティファ:「……よかった」



と、ニッコリと頬笑まれた

“よかった”って……何が?



ティファ:「私、ね?クラウドの事…好きみたい」


ユリア:「へぇ……」


ティファ:「クラウドの頑張ってる姿とか見ると、ドキドキしちゃって……」



典型的なパターンだな…

『久しぶりに会った幼なじみがあんなに格好良くなってるなんて…!!』ってやつだろ?

そんな事を呑気に考えていると、ティファがずいっと近づいてきた

すごく真剣な瞳で見つめられる



ティファ:「だから……応援してくれる?」


ユリア:「おう!当たり前だろ?」



親指を立ててニカッと笑う

ティファも安心したのか、表情が柔らかくなった



ティファ:「ありがとう、ユリア!!」



すると、額に乗っていた氷嚢がボト、と落ちた



ティファ:「あ、氷溶けてるね。換えてくる」



そう言って部屋を出ていくティファ

その後ろ姿を見送り、ティファの足音が遠退いてから大きなため息を吐いた



ユリア:「やってらんないよ、マジで……」





その後、ユリアの熱はすぐに下がり、クラウド達が帰ってきた時には元気にユフィと遊んでいた



クラウド:「もう平気なのか?」


ユリア:「おうよ!ばっちりさ!!」


クラウド:「そうか……なら、パーティーを変える必要があるな」



…ボクをパーティーに入れるのかな?



───応援してくれる?



ティファの声が頭をよぎる



ユリア:「あ〜、まだ本調子じゃないかも…」


クラウド:「そうなのか?」


ユリア:「エアリスの介護は必要として……護衛にユフィをつけとくか…ティファはさっき世話してもらったからクラウドの方な?」


クラウド:「分かった。後はこっちで決めていいか?」


ユリア:「あぁ。任せた」



これで、いいんだよな?


気持ちがすっきりしないままコスモキャニオンを出ると、故障したバギーは直っていた

そして一行はニブルヘイムへと向かった







ティファ:「え〜っ!!燃えちゃったはず、だよね?」


クラウド:「…そのはずだ」



5年前、ニブルヘイムは英雄セフィロスによって燃やされた

村人もほぼ皆殺し状態

生き残ったのが奇跡だと思う



ティファ:「それなのに、どうして?私の家もある…」


バレット:「………なんか変じゃねぇか?」


クラウド:「俺は嘘なんか言ってない。俺は覚えてる…あの炎の熱さを……」



当時を思い出し、眉間に皺を寄せる

5年前、ニブルヘイムに来たのは二人のソルジャーと二人の神羅兵

その中にセフィロスとクラウドはいた

だからクラウドは知ってるんだ

セフィロスがした事、その時の村の様子、自分の故郷を焼き払ったセフィロスへの憎しみ…



ユリア:「手分けして調べよう。エアリス、ユフィ、一緒に
エアリス:「だ・め・よ」


ユリア:「……へ?」


エアリス:「クラウドに聞いたよ?ユリアはまだ本調子じゃないって」


ユリア:「うっ………」


ユフィ:「勝手はしないって約束でしょ〜?」


ユリア:「だ、だから!一緒に来てくれれば…」


エアリス:「だぁめ。クラウドにユリアは戦線に出すなって言われてるもんっ」



なにぃ!?なんでそこまでされなきゃいけないんだよ!



ユリア:「レッドXV〜、ケット・シー、ボクも一緒に連れてってよ〜!」


ケット・シー:「……それがな、ユリアさん……」


レッドXV:「オイラ達もクラウドに言われて…」



なんて抜け目のない男なんだ、あいつは!!

こんな事ならクラウドと一緒に……



───応援してくれる?


───ありがとう、ユリア



ダメだ!ティファのために選んだ道!!

このくらいの犠牲、どうって事ないっ!



ユリア:「あ、人みっけ〜」



道端にうずくまっている人を見つけ、声を掛けようと近寄る



「うぁぁぁあああ……」


ユリア:「え……」


「呼んで…る……セフィロスが…呼んでる……」


ユリア:「こいつ………」



黒マントを被ったその人は、うずくまったまま唸っている

その隣にももう一人いた



「セフィ…ロス……さま……近くに…いる……屋敷…の…中………おおぉぉぉ……セフィ…ロス……さま」



ユリアはその人の腕を捲った



ユリア:「無し、か…」


エアリス:「ユリア〜、何してるの?」


ユリア:「調べたい事があるんだ。民家にいるはずだから…」


ユフィ:「何?何?何を調べるのさ!」



二人に理由を説明しないまま、民家やら宿屋やらに押し入る

すると、ほとんどの家に黒マントの人がいた



「行かな…くては……リユニ…オン」


ユリア:「11……」



「あれ…を……手に入…れ、セ…フィロスに…届けるの…だ。そ……して…おぉ……セフィ…ロスと…ひとつ………に」


ユリア:「こいつは5…」



「…どこ…で…す…か?セフィ……ロス…さま」


ユリア:「4、か…」



「う……あ…ぁああ……リユ…ニオン……行きたい……」


ユリア:「……6」



「聞こ……え…る?セフィ…ロスの……声……」


ユリア:「12…だな」



そういや、伍番街に“2”がいたような…

一人一人の特徴をメモしていき、考え込む

この数字は……



ユフィ:「くぉら!アタシに分かるように説明しろっ!!何調べてんの?」



突然後ろからタックルされ、痛む腰を擦りながら渋々説明する



ユリア:「これは…」

クラウド:「ユリア!」



駆け寄るクラウドにメモ帳から顔を上げる



ユリア:「どうした?」


クラウド:「神羅屋敷に来てほしい…」



思ってもみなかった言葉にユリアは唖然とした



クラウド:「ユリアが本調子じゃない事は分かってる……けど、ユリアは何か知ってるかもしれないし…」


ユリア:「分かった。とりあえず行くよ。じゃな、ユフィ、エアリス」


エアリス:「気を付けてね〜」


ユフィ:「だぁ〜!話の途中なのにっ!!」



そんな声を背に、クラウドと神羅屋敷へ向かう



ユリア:「で?ボクの知ってるかもしれない事って何?」


クラウド:「あぁ……神羅屋敷の地下に、タークスの男が眠っているらしい」


ユリア:「タークス!?」



そんな人、聞いたことない

地下に眠るタークスの男性…

………誰だ?



クラウド:「知らない、か?」


ユリア:「聞いたことないよ、そんなやつ…。でも、気になるな。一緒に調べるよ」


クラウド:「……無理はするなよ?」


ユリア:「分かってるって!」



笑顔で答えれば、クラウドも軽く頬笑む

屋敷内に入り、宝条の手紙を読む



ユリア:「ふぅん……厄介な事してくれるな」


バレット:「ったくよぉ。神羅ってのは何考えてんだかさっぱりだぜ!」



愚痴るバレットを宥めるティファ



ユリア:「…ボクはこっちを調べる。クラウド達はそっちでいいか?」


クラウド:「分かった」



二手に別れ、そのタークスの男性の捜索を始めた

クラウド達が中央の部屋を調べに行ったのを見届け、二階へ上がる


……タークスの男性なんて今はどうでもいい

ボクが見たいのは……


ベッドの近くの壁を押す

バンッ、という音を立てて壁は開き、扉となった

地下へと続く螺旋階段を下り、とある部屋の前に着く

左の部屋にはそのタークスの男性が眠っているはず

でもボクはこっちに用があるんだ


正面の扉を開ける

部屋の中は薄暗かった

何よりも最初に目に飛び込んだのは、大きなビーカー

それに近寄り、見つめる


“C-PROJサンプル-A(コードZ)”

“C-PROJサンプル-B(コードC)”


確かにそう書いてある


と、ビーカー内にも文字が書いてあった

どうやら爪で傷をつけたらしい



サンプルAには
“エサの時間がチャンスだ”

サンプルBには
“ここから逃げよう”



ユリア:「……………」



そっ、とビーカーを撫でて部屋の奥へ進む

奥は書斎になっていて、さまざまな本が散らばっていた

ユリアは、とある書類を探す

あるはず……絶対に、ここに……

さまざまな書物が積み重なるなか、あるタイトルに目が留まった



『逃亡者に関する報告書』



ユリア:「……これだ」



計4冊の本を見つけ、ユリアは座ることなく読み続けた



『逃亡者に関する報告書1
×月×日
当施設から逃亡した2名を
ミッドガル近辺で発見しました』



『逃亡者に関する報告書2
:発見時の状態

A 元ソルジャー/ナンバー〔無〕
魔晄照射及びジェノバの影響は
見受けられませんでした。

B 一般/ナンバー〔無〕
ジェノバの反応過多が
見受けられました』



『逃亡者に関する報告書3
:処分に関して

A 抵抗したため、射殺
B Aが抵抗する間に逃亡』



『逃亡者に関する報告書4
:その他

現在Bの行方は不明です。
しかしBは意識の乱れがかなり
進行している様子でしたので
このまま放置しておいても
問題はないというのが
我々の見解です。
今後に関する指示を
お願いします』




ユリア:「っくそ……」



読み終えたユリアはわなわなと震えた

人をA、B扱いしやがって……!!

許さない………
宝条も軍も……神羅も!



ユリア:「ジェノバねぇ…」



ふん、と鼻で笑い、報告書を閉じる

その時、隣の部屋の扉が開いた

クラウド達が扉の鍵を見つけたらしい


ゆっくりと部屋を出る

そっ、と隣の部屋の中を覗くと、棺桶がごちゃごちゃしていた

そこに一人の男性が立っている



「私は…元神羅製作所総務部調査課、通称」

ユリア:「タークス」


クラウド:「ユリア!!」



突然現れたユリアに驚く面々



「ほう……お前が着ているのはタークスの制服か?」


ユリア:「そ。アンタと同じ、元タークスだ」



一歩一歩と黒髪長髪赤マントの男に近づく



「そうか……名はなんだ?」


ユリア:「ボクはユリア。アンタは?」


「私の名は………」



長い前髪に隠れて顔が見えない

覗き込もうとした瞬間、男性は顔を上げた



「ヴィンセントだ」



真紅の瞳から目が離せなかった

いや、離れなかった

じっと見つめられ、身動きがとれない

やがてその瞳は笑みを含んだものに変わった

……笑みというよりは嘲笑かもしれない…



ヴィンセント:「どうした?私に何か付いてるか?」


ユリア:「あ、いや、別に!何も!!」



やばい……!この人、顔整いすぎだよっ!!

そ、そりゃクラウドも美形だけど………なんか…違う雰囲気を漂わせてるような…



ヴィンセント:「どうした?」


ユリア:「うぅわっ!!」



さっきまで正面にいたはずのヴィンセントが隣に来ていた



ユリア:「お、お前!気配消して近づくな!!」


ヴィンセント:「消した覚えは無いが?」


ユリア:「っく…」


ヴィンセント:「お前……ユリアは短銃を使うのか?」


ユリア:「ん?あぁ。ヴィンセントもそうなのか?」


ヴィンセント:「まぁな。少々腕が鈍ったかもしれないが…」

クラウド:「話してる最中に悪いが、俺達は先を急ぐ」



部屋を出ていこうとするクラウド達

が、ヴィンセントはそれを呼び止めた



ヴィンセント:「お前達についていけば宝条に会えるか?」


クラウド:「さぁな。でも奴もセフィロスを追っているとなれば、いずれは……」


ヴィンセント:「ルクレツィア…」



ヴィンセントは何やら呟くと決心したように顔を上げた



ヴィンセント:「よし、分かった。お前達についていく事にしよう。元タークスと言う事で何かと、力にもなれると思うが……」


クラウド:「いいだろう」



頷いたクラウドだが、すぐに顔を上げて隣の部屋──実験用具があった部屋を見た



ユリア:「クラウド?」



と、突然クラウドは部屋に向かって駆け出して行った

ユリアも慌てて後を追う



バレット:「おい、クラウド!ユリア!」


ティファ:「どうしたのかしら…?」



不思議そうな二人の声に止まることもなく、クラウドは実験室に飛び込んだ



ユリア:「クラウド、どうしたんだよ?」


クラウド:「何か感じる……気のせいか?」



そのまま奥の部屋へ足を進めるが、途中でクラウドの足は止まった

書斎の前には、セフィロスが立っていた



クラウド:「セフィロス!」


セフィロス:「懐かしいな、ここは」



クラウドの声など聞こえていないように悠然と辺りを見回すセフィロス

ふと、その目がこちらを見据えた



セフィロス:「ところで、お前はリユニオンに参加しないのか?」


クラウド:「俺はリユニオンなんて知らない!」


セフィロス:「ジェノバはリユニオンするものだ。ジェノバはリユニオンして空から来た厄災となる」


クラウド:「ジェノバが空から来た厄災?古代種じゃなかったのか!?」



その発言にセフィロスはため息を吐いた



セフィロス:「……なるほど。お前に参加資格はなさそうだ。ならば………そこの女はどうだ?」


ユリア:「は?ボクがジェノバとどういう関係にあるんだよ」


セフィロス:「ククク…忘れたのか?“あの日”の事を……」


ユリア:「あの日…?」



“忘れた”って……“あの日”ってなんだよ!!



セフィロス:「まぁいい。私はニブル山を越えて北へ行く。もしお前が自覚するならば……私を追ってくるがよい」



それだけ言ってセフィロスは消えた

しかし、クラウドとユリアに残った疑問は消えなかった



クラウド:「……リユニオン?空から来た厄災?」


ユリア:「…あの日って…いったい……」



さまざまな謎に頭を悩ませつつも、一行はセフィロスを追うためにニブル山を越えて北へ向かった


ニブル山を越える途中、ユリアはとある物を見つめた

ニブル魔晄炉…

5年前に悲劇が起きた、あの魔晄炉



ユリア:「ボクは……戦うよ」



誰に言うでもなくそう呟き、その場を後にしようとした



ティファ:「ユリア、ここを知ってるの?」


ユリア:「ティファ……」



いつの間にか背後にはティファが立っていた

表情もどこか険しい気がする



ティファ:「ねぇ、何か知ってるの!?」



詰め寄るティファに軽く後退った



ユリア:「話だけ、な。クラウドに聞いた話……」


ティファ:「そう…」



心なしか肩を落としているように見える

ユリアはどこか胸を締め付けられた思いだった




ユリア『ティファ、ごめん……』



その謝罪の言葉は口に出されなかった

今はまだ、話せないんだ…





第七話 −終−