ぽーん、ぽーんとバレーボールが青い空に舞い上がっている。屋上でカレンと雪子、クラスメイトで円陣を組
み、レシーブ・トスでボールをまわしていく。
 普段全くと言っていいほど運動をしない雪子だが、カレンの誘いでここ一週間はよく運動をしている。
 月曜は森林公園をウォーキング、火曜は温水プールでスイムビクス、水曜はカレン行きつけのヨガスタジオ
とやらに同行し、木曜は海岸公園で軽くジョギング、そして今日は放課後にバレー。
 なぜか毎回みよも顔を出し、適当に茶々を入れたり好き勝手なことをしていたりする。三人ともバイトをして
いるので、その合間を縫うことにはなったが、とても楽しい一週間だった。
「よーし、じゃ解散しよっか」
 カレンの号令で、皆それぞれ荷物を持ちおしゃべりしながら帰路に着く。キューティー3で公園通りに寄って
アイスでも食べよう、と言う話になりかけた頃、先頭を歩いていたカレンは前方に生徒会長を見つけた。
 可愛い大好きなバンビの大好きな人。バンビ自身に自覚はあるのか隠しているのか分からないがカレンと
みよの間では決定事項だった。
「あ、ごめんバンビ。私ちょっと教室に忘れ物したみたい」
 言いながらみよに目配せをする。勘の鋭いみよはカレンの意図をすぐに察する。
「私も、思い出した。靴箱でまってて」
 うん、了解。と微笑むバンビを残し、二人は笑みを浮かべながら階段を上っていった。


 先輩!と嬉しげな声を上げて雪子は紺野に駆け寄ってきた。
 やあ、と返事をしようと視線を彼女にやると、いつもと様子が違っていた。運動でもしたのだろうか、頬が上
気していて全体的に生き生きとしている。制服も少し着崩れていて、新鮮な印象を与えた。
 返事をしない紺野を訝しげに見上げてくるので、それを素直に言ってみることにする。
「いや、運動でもしてきたのかなと思って」
「あれ、ごめんなさい。わたし汗臭いですか」
 自分の制服の袖をくんくんと嗅ぎ出す彼女の仕草がかわいく、紺野はつい笑んでしまう。雪子の眉間に皺
がよりだしたので、赤さの引かない頬に手を当ててやる。
「ほっぺたが赤いから」
 じわり、と掌に熱が伝わる。熱を吸い取れば頬の熱もとれるかと思ったら、別の意味で彼女は顔を上気させ
てしまう。
「せんぱ、あの」
 なに、と口をぱくぱくさせている彼女に笑いかける。もう片方の手も差し出してその小さな顔を包んでしまお
うかと思った矢先。ぱたぱたと二人分の足音が聞こえ、はっとした雪子が後ろに少し飛び、紺野の手を逃れた。
「じゃあね」
 革靴に履き替えた男がひらひらと手を振り、外に向かっていった直後に、カレンとみよが帰ってくる。
「どうしたのバンビ、お顔が真っ赤よ」
「や、なんでもない、よ」
 アイス食べにいこ、と無理矢理話題を変えた雪子を見て、女二人はにやりと笑う。
「忘れ物をしたのも、星の導き…」
「みよちゃん?」
「なんでもないなんでもない、さ、いこー!」


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