学年が違うと、思ったより顔を合わせる機会は少ない。愛しい後輩を思うたび、紺野はそう感じる。生徒会活動で会えるとはいえ、
それは放課後の数時間だ。それに部活動ではないので、会議の無い日やイベントの無い月は生徒会活動は短時間だ。
 雪子に無性に会いたくなる時はどうしたらいいのか。教室に迎えに行ったり放課後に待ち合わせをする手もあるが、周囲の目を気にし
てしまう性分がブレーキをかけてしまう。
「会長、あの、大丈夫ですか」
 不意に声をかけられ、びくりと顔を上げる。図書委員が書類を持って驚いたようにこちらを見ていた。
「ああ、悪いね。大丈夫だよ」
 怪訝な態度は崩さないまま、会長決裁を求める書類を差し出してくる。黙々と書類に目を通す紺野の他には生徒会員は誰もいない。
それに気まずさを感じたのか、図書委員は喋りだす。
 適当に相槌を打ちながら、聞き流していた紺野の耳はある箇所だけ綺麗に聞き取った。
「そういえば、生徒会役員の村田さん。いっつも図書館で勉強してるんですよ。さすが学年一位ですよね」
 おもわず、そうなのか、と大きな声を出すところだった。図書館ならば、学年が違っても違和感なく二人で過ごせるだろう。
「ありがとう」
 自然と緩む頬に、図書委員はますます不審の目を向ける。じゃ、ありがとうございます、と言いそそくさと出て行く彼に心の中で手
を合わせながら、明日から図書館を覗く事を日課にしようと誓った。


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