girl meets angry girl

※痴漢プレイ

 少女はかなり混雑した電車に揺られていた。
 下校する学生と通勤客が丁度重なる時間帯に帰宅が重なったことを呪い、座れないことと息苦しさにはぁっと
ため息をつく。
 薄闇に街の光が流れていく窓を眺めていると、電車が揺れ、いくらか人ごみがかき混ぜられた。
 不意に、視界に知り合いの顔が映る。
 同じクラスの村田が、右手前方のドアに押し付けられているのが見えた。彼女とはそれほど親しく話すわけで
はないが、他人の群れの中ではやはり目を引いた。だがベンチシートの真ん中あたりに立つ少女からは距離があ
り、声を掛けられない。どうやら、押し付けられているわけではなく、背の高い男性が村田をかばうようにドア
に手を突いているらしかった。
 村田は申し訳なさそうに男性を見上げている。それに答えて男性は、構わないとでも言ったのだろう、こちら
からは後頭部しか見えないがそんな仕草に見えた。
 その後の何気ない二人のやり取りは親密な様子で、ああ、あの男の人は村田の彼氏なんだなあと少女は納得す
る。しかし、真面目で成績はいいがダサめで地味な村田に、彼氏がいたことに驚きを隠せない。しかも少女が今付き
合っているカレシより、村田の彼氏のほうが何倍もやさしそうで様子が良く見える。
 なんか、つまんないの。
 そう思いながらも、二人の方を見てしまう。
 一つ、二つと駅を過ぎ、どんどんと乗客は増える一方だ。
 とある駅を過ぎたとき、村田の表情が歪んで、すぐに真っ赤になった。


「ちょっと、せんぱい、やめてください」
 しー、っと唇に左手の指を当てられる。その間にも右手は雪子の尻を這い回り、厭らしい動きで撫で回した。
 ちょっとした刺激なのに、ずっと玉緒に密着していたせいなのか、それとも電車の中と言う圧倒的な衆人環視
下のせいでか、びくびくと雪子の体は跳ねる。
「ちかんは、はんざいですっ!」
「ごめんね」
 そう言いながらも、手のひらは止まらない。それどころか制服のスカートの中に侵入しようとする。さわさわ
と太股を撫でられ、つうと足の付け根まで撫でられると、声が漏れそうになり、雪子は己の手で口を塞いだ。
「んっ…」
 それを見て玉緒の瞳が細められる。
 いけない兆候だ、と雪子はおののいた。偶に驚くほどの嗜虐性を露にする先輩が、その気になりかけている。
 下着の上から、性器をなぞるように指で何度か強くなぞられる。もともと直接触れられる前から少し濡れてい
たそこからとろとろ液が溢れ、股布はすっかりそこに張り付いてしまっているようだ。
「っつ…んぅ、ひぅ…」
「気持ち良くて仕方がない、って顔してるね」
 必死に声を我慢しているのに、耳元で囁かれては堪らない。
「あ…んっ、だめ、ですっ、こえ、でちゃう」
 雪子が限界を迎えそうになったとき、電車は止まり、また沢山の人が乗車してきた。
 いよいよ人々の隙間はなくなり、雪子は完全にドアと玉緒の間に挟まれ、彼に抱きつく形になってしまう。
「僕のシャツ、噛んでていいから」
 そう言うと、密着が好都合とばかりに男の手が雪子の下着をずり下げた。周りに沢山の人がいる電車と言う公
共の場で、下着を剥がされる羞恥と興奮で足が震える。
「ひぅん!」
 ざりっと陰毛を梳かれ、恥丘を何度も撫でられると、踵が浮いて体が揺れてしまう。この異様な状況の原因で
ある男が楽しそうに笑う吐息が頭上で聞こえたが、縋る相手は彼しかいない。
「っつーふぅ、ん、んっ」
 言われたとおり、目前のシャツを噛むことでようやく息を押さえ込む。
 タタン、ッタタン、と音を立て電車は走り続ける。目的の駅まであとどれくらいなのか、電光掲示板は玉緒や
他の男性に遮られて、見えない。
「――!う、ぁう!」
 急に、男の指が中に突き立てられる。ずぶりと沈むそれは、異物感しかもたらさなかった。まだ軽く布越しに
触れられて陰毛をいじられだけだから、若いそこは奥で快感を得られるほどに拓かれてなかった。もうすこし、
入り口のところか肉芽を摘まれていたらひとたまりもなかったはずだ。
 しかし戸惑う反応すらも、玉緒の思惑通りだったらしい。わざと、探るような真似はせず指を挿れたままで電
車に揺られ続ける。
「あ、ぁ?」
 電車が駅に入る前の僅かなブレーキで、体勢が変わりナカも少し動いた。
 ぞくり、と背筋に寒気が走る。直接的な痺れる快感ではなく、玉緒に貫かれているときにたまに感じるどうし
ようもなく脱力するような感覚。
 ドアが開く音とホームから入る発着音とアナウンスにかき消されるが、細かな吐息が抑えられない。
「よくなってきたみたいだね?」
 にこり、と笑顔で見下ろさないで欲しい。一人で狂っているみたいで自分が馬鹿みたいだ。
「ぅ、ん!」
 力の入らない手で、軽く玉緒の腕を叩く。密着しているから、彼の下腹部が何も反応していないのも分かって
いる。恥ずかしい。
「ごめん、次の駅で降りるから」
 行為を終わらせ服を直してくれるのかと思いきや、指が出入りを始める。
「ふぁ!ぁ…」
 中だけでいかせるつもりらしい玉緒は、服を噛むこともできなくなった雪子に飴を含ませて掌で口を塞いだ。
そうされると舌すらも、玉緒にキスされているときのように感じてしまう。
 身体から力が抜けて、頭が真っ白になる。気持ちがいいではなく、本当に虚脱して飛ぶような感覚にがくがく
と震えた。
「凄いな」
「ぁ…?」
 刺激を受け取ることを知り始め息づくように蠕動するナカは、強烈に男を誘った。
 とりあえず指で溢れる蜜を拭ってやり、下着を元に戻す。ドアにもたれてなすがままになっている雪子はもう
一人で立てない様子だった。


 少女は本来降りる駅を通り過ぎても、ずっと村田を見ていた。何度か人の波に飲まれそうになったが、何とか
見える場所をキープして、とろけていく表情に魅入っていた。
 不思議と、うちのクラスのバンビちゃんに何してんのよ、と言う怒りがふつふつと沸く。
 遂にぐったりしてしまった村田をドアに寄りかからせ、男がぐるりと少女の方を見た。気付いていたのだ。ど
こかで見たことがあるような無いような、しかし背の高い知的なイケメンは、薄く笑って唇に指を当てた。黙れ、
忘れなさい。そういった意思がびりびり伝わってくる。
 しかし少女も気が強いのでぎりっと見返す。大して仲が良い訳ではないのに、ドSな彼より村田に味方してや
りたいと心から思った。

「ねえ、村田さん」
「はい、なんですか?」
 あくる日、村田は目の下にくまを作って登校してきた。あの後何されたんだよ、と聞きたくなる。
「メアド教えて?内緒の話、したいんだけど」
 ごめん、ちょっと昨日見ちゃったんだけど、彼氏さん、意地悪じゃない?相談乗るよ?
 そう囁いてやると、村田の表情からざぁっと血の気が引いた後それでもふわりと表情が明るくなる。
「う、うん。ありがと、うれしい」
 赤外線通信をする間よくよく観察すると、首にぐるりとうっすら何かの跡が残っているし、さらりと揺れた髪
から覗く耳の下に、べったりキスマークが付いている。
「誰にも言わないし。アタシも前彼がちょっとアレで悩んだから」
「うん」
 こくんと頷いた村田は酷く可愛く、ますますあの男への苛立ちが募った。


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