柔道部アナザー

※あまりにもバンビの性格付けを濃くしすぎた為、性転換ではなく
 柔道部にもう一人同級生男子部員がいて、大迫先生が女だったらと言う趣旨の妄想文になっています
 もはやオリジナルの域ですのでくれぐれもご注意ください
 



「先生?」
 文化祭で一方的にローゼンナイツとかいう称号を贈られた雪隆は、エスコートの相手に大迫を指名した。
 あくまで騎士であるゆえに、授賞式では好きな相手から勲章を授与されるという形式になっているらしい。
 大体彼女かローズクイーンを指名するようだったが、自分がここまで来れたのは全て大迫のおかげだと思って
いたので、何のてらいも無く呼んだ。
 いつものように、おお、すごいなぁ村田、お前は私の自慢の生徒だぁと言ってもらえると思っていたのに、女
教師はうろたえたまま手を引いても動いてくれない。
「すんません、迷惑ですか」
「や、いや、違う。大丈夫だ、行こう」
 大げさに頭を振る教師を授賞式会場に連れ込み、彼女の前で膝を突く。
「ありがとうございます。俺は先生がいなければ高校を中退していたかもしれません」
 真っ直ぐに見つめてそういう教え子は、文句のつけようが無いほどに格好良かった。
 進行役の生徒に言われたとおりに彼へ勲章を授与する。本来はこの後キスをするらしいのだが、大迫が教師と
いうことでそれは不問になりそうだった。
 だが首を振った教え子は、膝をついたまま大迫の手を取って甲に口付けた。あまりにストイックなその様子に、
周りから悲鳴とため息が漏れる。
 大迫も例外ではなかった。心拍数が跳ね上がり、膝から崩れ落ちそうなくらいぞくりとした。
 今年の夏に柔道部で合宿をしたとき、彼に襲われた。
 好きです、好きなんだ。先生…。
 抱き締められて何度も囁かれた。部長の不二山を含む他の柔道部員はもう教室で休んでいる時間だった。
 更に一番恐ろしかったのは、彼を受け入れてしまった自分自身の心だった。

 二年前、新任でクラス担当を任され、意気込みと同時に不安も抱えていた大迫は毎日精一杯だった。しかし、
モットーとしている青春一直線は崩すことなく、押し付けない程度に生徒たちを励ましていた。
 のっそりとしてやる気の感じられない村田が気になり始めたのは初めての定期テストの後だ。授業での受け答
えは普通で提出物の期限も守るのに、全教科赤点。これはやる気の問題ではないかと、個人的に補修を行った。
何度か話を聞くうちに、彼は何にも興味を示せていないのだと気付いた。
「青春真っ只中なのにもったいないぞぉ!」
「…先生の方がよほど青春みたいですが…」
 中学の経歴を見ると成績は上の下で部活は水泳部とあり、教師からの推薦文も意志が強いことを褒めた普通の
ものだった。
 やれば出来るタイプが、出来るがゆえに悩んでしまったのだろう。
「んーでもやる気は自分で出さないとどうしようもないしなぁ、…そうだ。運動できるなら、柔道部に入らない
か?」
 それは雪隆にとって意外すぎる誘いだった。同じクラスの不二山が何か懸命にやっているのは知っていた。し
かしそれは自分には全く関係の無い事だと思っていたのだ。
「無理にとは言わないし、私が顧問だからな!不二山ならお前とも気が合うだろう」
「そう―っすかね?」
「うん、先生の眼力を舐めちゃあいけないぞ!」

 始めのうちは週に一回ほど柔道部に参加していたが、彼らが部室を貰う頃にはほぼ毎日参加するようになって
いた。大迫の読みどおり、硬派な不二山と一本気な村田は気が合い、ケンカをするときも全力で、しかし必ず分
かり合える、そんな仲になっていた。マネージャーもそんな二人を見て楽しそうに笑っている。
 元々行っていた不二山への補修に村田も参加し、試験前には柔道部直前勉強会が開かれた。
 もともと頭の回転は速い二人なので、たまに大迫がたじたじになる事もあった。ただ不二山は適度に切り上げ
て柔道に専念するのに対し、村田は理解できるまでずっと大迫に教えを請うた。
 二年に上がってもどういう訳か柔道部三人組はそのまま大迫のクラスとなり、珍しく村田が嬉しそうに笑うの
を見た。
 新入生が何人か入部し、いよいよ正式な部活に昇格した柔道部は活気を増していた。
 順風満帆に見えたが、大迫は思いもよらないことを村田から相談されることになる。

 暑い夏の日、夏季休暇中も練習を続ける柔道部に大迫がアイスを差し入れたとき、ちょっと話イイっすか、と
村田に呼ばれた。
 プレハブを出て、木陰に移動すると彼は言いにくそうに口を何度か動かした後に告げた。
「どうも、新名と不二山がきな臭いんですが」
「きな臭い?どういう風にだ」
 どうやら、一年の新名とマネージャーが以前からの知り合いだったらしく、三角関係のような状態になってい
るらしい。今のまま三人が固い絆で結ばれていればいいが、いつかそれが壊れるのではないかと村田は危惧して
いた。
「俺の不安は…言いたくは無いですが、当たります」
「だろうなあ」
 無口で明晰、よほどのことが無い限り相談等しない彼が大迫を頼ったのだ。当人達よりよほどその未来が見え
ているのだろう。
「それもそれで青春だぁ!そのときは又相談に乗るから、お前もとりあえず今は成り行きに任せとけ!」
 じっとこちらを見て、こっくりと頷く大柄な生徒の頭をぐりぐりとなでる。
「お前は優しいなあ、なんだ、お前もマネージャーのことが好きなら遠慮するこたないんだぞ」
「違います、俺は…」
「ハハハ、何だぁ、お前も別に好きな人がいるのかぁ!青春まっさかりだな!」
 撫でていた手をとられ、じっと目を覗き込まれる。高校生にしては深い色のその瞳は、大迫の童顔だけを写し
ている。
「俺は―」
 煩いほどに鳴いている蝉の声で彼の声が聞こえない。強い太陽に何もかもが死んでしまっているような昼下が
りの時間が止まる。
 キスをされる。大迫は直感的にそう思った。
「村田君ー!大迫せんせー!」
 寸でのところでマネージャーの声が響く。体の自由を取り戻した大迫は村田を突き飛ばして立ち上がり、行く
ぞ、と促した。
「…押忍」
 つかまれた手の熱もキスをされそうになったことも、嫌では無かった自分に凄まじい嫌悪を覚える。その辺の少女マンガ
ではあるまいし、と唇を噛む。自分は教師で、彼は生徒だ。そして大迫は何より教師という職を愛している。
 始めてたった二年目で禁を破りそうになる自分を呪った。
 それでも一年間何事もなく過ぎた。思ったより不二山達の三角関係は良好に続き、村田も楽しそうに部活をし
ていた。
 ただ、ことあるごとに彼から強い視線を感じた。授業中に目がばちりと合ったとき、欲を隠しもしないその視
線に大迫もぞくりとすることがある。ぎりっと睨み、止めろと伝えるとふいっと目線をそらされる。
 まるで消耗戦だ。

 妙な組み合わせだとは思ったがバレー部エースの花椿と、易者顔負けの宇賀神とは仲がいいらしい。何度か三
人で歩いているのを見たことがあった。
 毎日充実しているからか、個性的で優れた友人らに囲まれているせいか、村田はどんどん魅力的になっていく。
桜井兄弟や花椿のように目立つ王子様タイプではないが、隠れファンが沢山いるようだった。
 バレンタインでは数こそ少ないものの複数の本命チョコに困惑している様子が見受けられた。
「村田君?大丈夫、私のは義理チョコだよ」
「―あ、ああ、悪い」
 小さなチョコレートを差し出したマネージャーにすら嫌そうな目線を向けるほどの疲れようだったらしい。な
んとなく、村田には誰か心底好きな人がいるんだなと気付いていたマネージャーは、気遣って聞く。
「本命からは貰えなかったの?」
「貰えないのは最初からわかっている」
 種類の違う愛情、始まりもしない恋。それでも大迫が好きだった。茫洋とした白い闇の中から自分を救ってく
れた人。真っ直ぐで信念を曲げず、傷つきながらも進むことの出来る強い人。
 最初はただ心から尊敬していた筈なのに、いつしか大迫に向かう感情は肉欲を伴ったどうしようもない感情に
腐り果てた。
 好きだという言葉でごまかしているだけなのかも知れないといつも思う。皆が好感を寄せる『大迫先生』を征
服してねじ伏せて、自分しか見えないようにしてみたい。あの幼いのに頼りがいのある表情を歪めさせて、良く
通る声がかすれる様を見てみたい。

 そして三年目の夏が訪れる。

 柔道部の正式な初合宿を執り行った最終日に、雪隆は宿直室で大迫を押し倒した。
 プールに飛び込むわ花火はするわと思い切りはしゃいだ部員らはもう眠っており、後片付けは一人冷静な雪隆
と大迫で行った。勿論、下心はあった。
 バケツを片付けるという口実で、教師が宿泊する宿直室に入ったところですばやく後ろ手に鍵をかけ、大迫を
抱き締めた。
「なにっ―を、っ」
 喚かれる前に、深くキスをする。ぼんやりと過ごした時期に付き合った女と別れてから二年経っていたが、感
覚は覚えていた。
「ん、んんっ、ふ…ぁ」
 完全に身体を封じ、逃げることは許さない。舌や唇を噛まれそうになるたびにうまく快感で逸らし、抵抗が失
せるまで教師の唇を貪った。
 酸欠と強制的に与えられる快感でぐったりした大迫を抱え上げ、そのままベッドへ押し倒す。
「先生、―大迫先生、好きだ。知ってるだろう」
「ぁ…」
 小柄な身体を押しつぶすようにのしかかり、両手を頭の上でまとめてシーツで拘束する。
「俺に、隙を見せたアンタが悪いんだ」
 突き落とされた快感から戻ってこれない大迫のジャージを乱す。ファスナーを下げTシャツを捲り上げると、
ベージュのレースに包まれた胸がこぼれた。
 ごくり、と生徒は喉を鳴らす。大迫はこんな下着をつけて授業や指導を行っているのだ。
 下半身の方も見たくて、乱暴にズボンを引きずり下ろす。そこにもブラジャーとお揃いのレースが使われた下
着が秘所を覆っていた。
「エロ…」
 もっとシンプルな装飾の無い下着か、あるいはスポーツタイプのそれを想像していた雪隆には刺激が強すぎた。
 中途半端に脱がせたまま、下着の上から胸を揉む。柔道部で一番手の大きい雪隆が少し掴みきれないくらいの
肉量で、とてもやわらかい感触がたまらない。
「っぁ…あ、んっ、ひぅん」
「…先生」
 特に抵抗もせずに腹筋の浮いた腹をよじる大迫は、快感に全てを投げ出していた。
 反る背中に手を回して、下着のホックを外すとカップ部分がずりあがり、胸が露になった。支えをなくしてや
わらかく潰れる形とつんと赤く充血した乳首が厭らしい。
「ふぁ…あうっ、ぁっ」
 先端を弾いてからそれごと手のひらに包み込み、じかに感触を堪能する。その度にびくびく震えて、瞳から涙
をこぼす様子に煽られる。
「なあ、抵抗しろよ、先生」
「ふぁ…?」
 何度口腔を犯してもあからさまにキスマークを付けても胸を揉み倒しても、感じるばかりで大迫は抵抗しない。
それどころか、徐々にだが向こうから仕掛けてくる気配すらある。何も言わずに雪隆は彼女を拘束していたシー
ツを解く。
「犯すぞ」
 最後まではしないつもりだった。というかそれ以前に噛まれるか金的をやられるか喉を絞められるか急所を潰
されると思っていたのだ。このままでは止まらない。

「…いいぞ」
 もう、随分前からこうなることを望んでいたのかも知れないと大迫は自嘲する。中途半端ではなく、いっそ殺
してくれ。そのほうがどれだけ楽になれるのか。
 許可を出した大迫の言葉に、生徒の理性は失せたのだろう。ぎらりと光る目が大迫を捉えた。今にも犯されそ
うな状況に、さすがに待てと手で制し、下着を下ろして自分で入り口を馴らす。年単位で久しぶりなので不安だ
ったが、十分に熟れきったそこはぬるりと指の侵入を許した。
「ん…あぁ、はぅ…んぅ」
「俺がする」
 目の前で繰り広げられる痴態に煽られたのだろう、大迫の手を払い太い指がねじ込まれた。
「あ!ぁあ…あっん、あんっ、や、そこぉ…」
 性交の感触を思い出す度に、甲高い声が喉から出る。足りない快感に自ら胸を弄る。
「エロすぎだ…」
 はぁっ、と堪らないといった吐息を漏らす生徒の逞しい体にしがみ付く。
「ゴム…もって無いなら、だめだぞ」
「俺がぬかる訳無いだろ」
 そういわれた途端に、熱いものがねじ込まれる衝撃が大迫を襲った。
「うあ、あああああっ」
「っつ、ぐ」
 気持ちよくて死にそうだ。ずっとギリギリの駆け引きをしていた相手だからか、それとも学校で生徒に犯され
ているというどうしようもない状況からか、挿れられただけで頭がぐらりとした。
「ひぃ…あ、あん、やぁ、村田ぁ」
「先生…っ、先生…」
 ぬちゃぬちゃ音を立てるそこは喜ぶように若い雄を食み、打ち込まれるだびに音を立てる肌の衝撃にすら酔っ
た。
「も、もう、そこ、やぁ、村田、むらたぁ…」
 先程指で暴かれた弱点を執拗に狙われる。腕を伸ばして生徒の首にかじりつき、自分も腰を揺らす。
 不意に腰を掴んでいた腕が胸に回り、思い切り掴まれた。
「あ――、はぁうっ、――っ!」
「今ちょっとイったろ。胸弱いな、先生」
 荒い息の中それでも下半身を突き上げ、胸も苛める生徒に、空恐ろしさを感じる。
「うん、好きっ、胸触られるのすきだぁ…」
「わかっ…た」
 そこで耐え切れずに射精した村田は、ずるりと性器を抜き去りゴムを付け替えた。
「もう一回、よろしくお願いします」
「え、ええっ?あ、あああん」
 ぬかりのない生徒に、また深く犯される。根元まで挿れたあとぐるりと体勢を変えられ、ベッドに腰掛けた村
田の足の間に背を向けて座る姿勢になる。背面座位だ。
「あー、あ、ふぁ」
 深く侵入したままの性器が、姿勢を変えるたびにごりごりと敏感になっている膣を擦る。
「上から見ると、良いな」
 やわらかい胸を下から掬う様に掌に包むと、それだけで大迫は甘い息を吐いた。
 エロい。本当にエロい。まさかここまで大迫が乱れるとは思わなかった。ショートカットの黒髪を気持ちよさ
そうに自分の胸へと擦り付けてくる様子も堪らない。
 これからどうなるかとか退学だとかそんなことは今なにも考えられない。ただ、目の前の女を心行くまで貪り
たかった。
「はぁう、むらたあっ」
「なんだ」
「きもちいい」
 その言葉と同時に見上げてくる大きな瞳は蕩けていた。ずぐりと腰が振るえ、達しそうになる。だめだ、ゴム
はもう無いからもう少しだけ持たせないと勿体無い。
 緩やかに間隔をあけ突き上げながら、柔らかな感触を楽しむ。たまに体を捻ってキスを求めるのにも応えてや
る。だらだらと緩慢に行為を続けると次第に大迫の体がくたりとなってくる。
「あ…、うぅ、も、ちょっと、きつぃ」
「無理か」
「明日、立てなくなるっ」
 そりゃ不味いな、と低く耳元で囁いてやるとぶるりと震えた。柔道部の合宿のシメで顧問が腰を抜かしていた
ら仕方ないだろう。
 ベッドにもう一度押し倒し、思うままに揺さぶる。なお熱く絡みつく中に持って行かれたのか、愛しい先生が
力尽きたのが先かは分からなかった。
 シャワー室から持ってきた湯で、腕も上げられない様子の大迫の体を拭く。
「しなくていいぞ、もう少し休んだら自分で出来るからなぁ」
 もう遅いから雑魚寝の部屋に帰れ、と促される。日付けが変わって三十分ほど経っていた。
「雑魚寝…、そうだ」
 何やら思案を始めた村田は、思い出したように言った。
「そろそろ、新名がキレそうだ」
「あ、ああ例の三角関係か?」
 遠慮なく先生の鼻先を食み、至近距離で薄く笑う。
「存外、ぬるい時間が続いたもんだ」
 相手が動けないのを良い事に、頬をなでたりキスを落としたりやりたい放題やる。
「ほら、やめろぉ!」
 ずりずりと壁際の方に逃げる大迫の顔は真っ赤だ。
 仕方なく手を離し、ぎっとベッドに座り込んで話を続ける。
「せめて部長引き継ぎまでは穏やかに過ごして欲しいなァ」
「なんだ、随分他人事なんだな」
 呆れたように返す大迫に、驚いたように村田は返す。
「一年の頃自分の気持ちは自分でどうにかするしかない、と教えてくれたのは先生だろうが」
 興味が無いわけでも引いているわけでもない。ただ冷静に観察してギリギリのラインを超えないように三人を
助けようと思っている。
「マネが危ない目に遭わないように奴らの気をそらしたり、他の部員へのフォローとか結構働いてるんだが」
「―それは知っている」
 何だかんだ言って、大迫もきちんと部活を見ているのだ。情熱的なリーダーの不二山、冷静なサポートに村田、
サブリーダーでムードメーカーの新名、よく気の回るマネージャー。それを仲良くしかし真剣に取り巻く部員達。
 車輪はきちんと回っているなら奇跡的にまとまった部活といえた。だが今までが上手く回りすぎていたため、
いちどがたつくと大変なことになるだろう。
「さすがに、気が重いな」
 ごきごきと首を鳴らす生徒は、よしと声を掛けて立ち上がった。
「あんま無理すんなよ!先生もなるべく顔を出すからなぁ!」
 ふと振り向いた生徒は、にたりと笑ってもう一度大迫の顔に手を掛けゆっくりと深く口付けた。
 ひとしきり口内を貪って笑う。
「気に掛けてくれんなら、コッチのほうが嬉しいんだが」
「あんまり調子に乗るなぁ…」
「好きだ。なあ、何回でも言うぜ、先生のことが好きだ」
 いよいよ真っ赤になって、壁に懐いてしまった大迫に肩までシーツをかけてやり、村田は大きく伸びをした。
本当はここでこのまま寝てしまいたいのだがそういうわけには行かないだろう。
「帰るな」
 すっかり冷めたお湯と洗面桶を持って、足でドアを開ける。硬く絞ったタオルだけを置いて部屋を出た。

 ドアを閉めると、そのままずるずると座り込む。
 やってしまった。後半年待てば、どうせあちらももこちらのことを好いている風だったので、押し倒すなり何
なりして丸め込むのも自由だったのに。
 大迫の手前格好つけて何時もと変わらない風に装ったが、今更頭に血が上がる。
 先程も言ったように、これから雪隆は荒れるであろう柔道部を導かなければならない。
 しかし脳内は、次に触れられるのは何時だろうということで占められていた。今日みたいに偶然を装って追い
込んでさえしまえば、向こうだってまんざらではなく対応してくれるが、やはり生徒と教師だ。しかも大迫はか
なり倫理観が厳しい。
 足りない。圧倒的に足りないと思う。正直一週間くらい軟禁したい。
「はぁ…」
 出るのは溜息ばかりで、むっとした熱帯夜の空気に汗が流れる。
 まあ、今は今夜の出来事に満足して、そのまま眠ろうと決意して立ち上がり、宿泊する教室へ向かった。



 文化祭が終わり、雪隆は私服に着替えて軽い足取りで大迫のアパートへ向かった。カレンの選んだ服は普段の
雑な装いではなくかっちりしたもので、青年を一回りは上に見せた。
 死ぬほど照れながら芝居じみたことをやってくれた大迫は、今日おいでと耳打ちした。
 以前から家に上がりこむ機会はうかがっていたのだが、どうやら公衆の面前で大迫が大事だと宣言したのが効
いたらしい。意外と単純だ。
 実に三ヶ月弱ぶりの逢瀬に、喜びが止まらない。いよいよ不二山達の関係は逼迫しているし、受験もあるが、
それなりに積み上げてきた実績によりなんとか解決は出来る自信があった。
 小ぢんまりしたアパートの三階角部屋のドア前で先生が待っているのが見え、生徒は喜び勇んで駆け出した。




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