紺野と犬耳首輪バンビ

※かなりアブノーマルです 優しい紺野さんですが行動がSです

 文化祭関連の激務が始まる前の、穏やかな生徒会室。会議も委員会もないので雪子と紺野のほかには誰も居ら
ず、二人は並んでソファに座っていた。あまり接触に慣れていない雪子も、最近は大分力を抜いて紺野に寄りか
かってくれるようになった。
 以前は街中や学校でべったりとしているカップルの事を疎ましく思ったものだが、いざ自分がそうなると嬉し
くてたまらないなどという身勝手な思考にやきもきする。
 しかし今日は妙に態度がかたい。一応寄り添ってはくれるのだが、背筋に力が入っている。そっと腰に手を回
すと、彼女はびくりとしてぎゅっと目を閉じる。
「ごめん、いやだった?」
「い、いえ、あの、その」
 別に離れたいわけではないらしく、彼女の体から外そうとした手が軽く押さえられる。
 何度か唇を噛み、思い切ったように雪子は足元の鞄から袋を取り出した。それの中身をを彼女がテーブルの上
に空けると、一見して得体の知れないものが出てきた。
「なんだい、これ」
 なめらかな毛皮で覆われた小銭入れのようなものが二つと、それと揃いの長い房状の毛束。
「イヌミミとしっぽ…です」
「は、はぁ?」
 彼女がそれを手に取り、広げてカチューシャのように着ける。小銭入れのように見えた部分は、ビーグル犬の
ような折れたイヌミミで、左右のミミの間と後頭部で結ぶ部分は太い茶色のリボンだ。うなじでリボンをちょう
ちょ結びにすると、ちょうど本来の耳の上辺りにイヌミミが垂れる。
 立ち上がって、腰に上品な鉄色のチェーンを巻き、キーホルダー形式で房状の毛束をつけると、洒落たイヌの
コスプレ姿になる。
「今度の文化祭で、あの、先輩にこういうの言っちゃ駄目なんでしょうけど、非公式にコスプレ喫茶をやるって
友達が言って、断りきれなくて」
 立ったままたどたどしく言う彼女は、叱られた犬のようだ。
「じゃあなんで僕に見せてくれたの?」
「あ、あのですね、あの」
 相当言いにくいか恥ずかしいらしい、目も合わせられずに俯く彼女の手を引いて、紺野は己の膝に座らせる。
そのままそっと撫でると、手にイヌミミがひっかってそれがぱたぱた動いた。相当いい材質が使ってあるらしく
本物の犬の毛並みのようだ。
「『飼い主』がいる子は、分かる様にして来いって」
 一瞬理解できず、紺野の思考が止まる。動物のコスプレ喫茶ウエイトレスの、飼い主。要するに決まった相手
のいる子や興味のない子に不当なナンパが行かないための防護策。
「僕が、君の『飼い主』でいいの?」
 彼女はこくりと頷く。非常に遠回りな表現だが、彼氏だと認めてくれた事が嬉しくて思わず抱き締めてしまう。
小さな体が応える様に背中に手を回してくれるから、シャツ越しの体温が気持ちいい。
「雪子さん、かわいい」
「喜んでいいんですか…」
 もちろん、と笑顔で言うと、変態くさいですと拗ねられた。
「君のほかには何がいるの?」
「えっと、猫とウサギと牛に羊、ネズミと虎だった気がします。あと主催の子がオウム」
「何だかマニアックだなあ」
 彼女についているイヌミミからしても、そのへんのコスプレ用品ではない。誰かは知らないが強烈な奴が主催
なのだろう。
「なんだか、最初から犬役として参加させられたみたいなんです。選択の余地がないというか満場一致で雪子ち
ゃんは犬だ、って」
 紺野も猫より犬が好きだ、と言っていたような気がするので、反対する気はなくそのまま引き受けた。
「先輩も犬のほうが好きですよね?」
「あ、ああ」
 特に好きと言う訳ではない。ただワガママで手のかかる獣より、従順なペットの方が良いだけだ。
 そう、従順なペット。雪子に目をつけた主催というのは、目利きだと思う。
「これ、私に付けてみてください」
 彼女はもう一度足元の鞄に手を伸ばし、ファンシーな袋を取り出す。ペットショップの名前が印刷されたそれ
には、大型犬用の首輪が入っていた。
「また本格的なものを買ってきたね」
「え、だって猫の子は猫鈴買うって言ってたし、牛やる子は耳に識別票つけるって…」
「人間用のアクセサリーか簡単な手作りじゃないの?」
 生真面目な雪子は、ファッション的な代用品を思いつかなかったらしい。目をまん丸にして驚いている。
「は、恥ずかしい…、買うのも恥ずかしかったのに…っ」
「まあいいじゃないか、勿体無いから使ったらいい」
 うう、とうなだれる彼女はその言葉に頷き、サイズあわせお願いします、と紺野に首輪をを渡してきた。
 しかし、彼は首を振る。
「せんぱい…?」
 唇に指を当てられ、にこりと笑われる。怪しげな兆候がするが腰に回された腕がしっかりと雪子を束縛してい
て逃げられない。
「君は、僕のイヌなんだろう?人間の言葉は喋らない、ね?」
 日ごろ余り見せない強い目線で命じられる。
「そうだなあ、手足は多少使えるけど不器用だよね」
 一旦雪子の手から首輪を奪い、それを彼女の目の前に翳す。
「もう一度、おねだりしてごらん?」
「え、ええ?」
 妙な方向に流されそうで、疑問形で返しても無視された。あくまでにこやかな顔で待つ紺野は非常に楽しそう
だ。雪子は彼に逆らえず、必死に今までに見たイヌの映像を思い描く。

 少し本気を織り交ぜた、冗談のつもりだった。もう、といつもの調子で言われたらすぐにごめんというつもり
だったのに。少女の唇は首輪を食み、唇だけでは皮製の重たいソレを支えきれずに、白い歯で噛んで銜えた。
「ん」
 そのまま上目遣いで紺野を見上げてくる。フリスビーやボールを銜えて持ってくるイヌのように、従順に主人
が受け取るのを待っている。
「よく出来たね、ご褒美だ」
 首輪を受け取ってやり、キスを与える。嬉しそうに笑う彼女はそれでも何も言わず、ただ紺野の挙動を待って
いる。
「顎、上げててね」
 赤いシンプルな皮の首輪は、人間のベルトと同じ構造で簡単に装着できた。昔どこかで齧った知識で、指が二
三本入るくらいの余裕を持たせる。
「うん、似合う」
 首輪には揃いでリードもついていたのでついでとばかりに首輪と繋げる。面白半分に、くいとリードを引くと
あっさり少女の身体が引き寄せられた。ここまでしても全く反抗はなく、従順だ。彼女もきっと楽しんでいる。
この面白い状況に何をしようか、と生徒会室を見渡すと先日の大規模風紀検査で使った道具が目に入る。
「待て、…伏せ」
 雪子は男の膝から下ろされるとき少し嫌がったが、命令すると大人しくソファに丸まって伏せた。距離を置い
て俯瞰するとその様子は非常にいかがわしい。
 ブレザーとプリーツスカートに黒いハイソックスというありふれた女子高生スタイルに、リアルなイヌミミと
尻尾。胸元のリボンと同じ色の首輪とリードが華奢な首に嵌っている。
 そしてその娘が、不安と好奇心の混ざった瞳でこちらを見つめながらも、従順に待っている。
「よし、いいよ」
 ソファに腰掛けながら命令を解除しリードを引く。すると彼女はまた紺野の膝上に座り、彼が持つ箱の中身を
覗き込んだ。
 はばたき学園はそこまで風紀に厳しくないが、特に男子生徒に対して身だしなみレベルの指導は行うことがあ
る。個性は尊ぶが不衛生と不精を嫌う理事長の方針だ。髭をそるフォームとカミソリ、コームと散髪鋏に裁縫道
具が箱には収められていた。刃物は全て個包装されているもので、衛生面でも心配はない。
「なにを…んっ」
 不安に口を開いた彼女にくちづけて言葉を封じる。唇を舐め、いきなり舌を捉えて強く吸ってやると、雪子は
びくびくと震えた。
「喋るイヌって結構テレビで放送されてるけど、アレって結局人間の思い込みだよね?」
 そう言ってうるんだ瞳を見下すと、こくんと頷いた。イヌミミも同時に揺れて服従を示しているようだ。
「良い仔だね」
 そういって彼女の体を持ち上げて、背中から抱え込む形にする。そして柔らかい髪の毛に手を差し込み、ゆっ
くり梳いてやる。いくら綺麗な髪でも、暫くとかなければある程度は絡まるものだ。ほんの少し引っかかる髪を
やわらかくほぐしていく。
「きもちいいかい?」
 そう聞かれ、雪子は思わずはいと返事をしてしまいそうになる。思いとどまって顎を縦に振るだけに押しとど
める。
 紺野の手が頭皮と髪の間に差し入れられる感触が、酷く気持ちが良い。すきなひとに髪の毛を触られると言う
行為は、どこか淫靡でくらくらしてしまう。そのうち手が離れ、コームらしき硬い感触が髪を滑る感触に変わる。
これは恐らくブラッシング、ということなのだろう。
「はいおしまい」
 ぽんぽん、と軽く頭を叩かれる。さらさらになった髪の毛が顔の両側で揺れた。ありがとうございます、と言
いたいが言ったら又、怒られる。再度、こういうときイヌならどうするか必死で考える。公園であった大型犬は
たしかいつも。
 紺野のほうに向き直り、ぺろりと頬を舐めた。家の近所に住む元気なゴールデンレトリーバーは、いつもこう
やって雪子に親愛を示してきた。
「は、ははっ、くすぐったい」
 笑う紺野にのしかかり、顔中にキスを降らせる。そのままずるりと男はソファに倒れこむと、リードを引いて
雪子の身体を引き寄せた。正直引かれるたび首輪が喉に食い込んで、少し痛い。
「ほら、僕が主人なんだぞ」
 今度は首輪を直に掴まれて顔を引き寄せられる。だが存外にキスはやさしく、ブレザー越しに背をなでてくれ
るやさしい感触とあいまって幸せな気分になる。紺野の体の上に乗った姿勢だと、鼓動や呼吸が直に伝わってき
て面白い。懐くようにごろごろすると、不意にごりっと言う感触が太股に当たり彼の興奮を知ってしまう。
「あ、っわ、ハハハ…」
 シチュエーションに酔って、僅かなキスや接触で興奮してしまった己を知られてしまい、紺野は動揺した。
 これは変態と言って叩かれてもいいレベルだと思ったが、彼女はそのまま体を下にずらし、あろうことか男の
股間に顔を伏せた。止めないと、と言う気持ちと、いつかはやらせるつもりだったんだろ、という欲が壮絶な戦
いを繰り広げ始める。
 両手を制限されたままの雪子は、歯と顎を使い何とか制服のジッパーを下げることに成功する。ただそれだけ
で結構疲れてしまい、下着を脱がせることなくその上から、熱を唇で確かめることにする。何度も舌を行き来さ
せ、グレーの生地が黒く変色するほど形を確かめる。
「ちょ…っと、っふ、雪子さん待て!」
 その命令には従わず、いよいよ今度は下着を持ち上げる紺野自身を甘がみする。何度か噛んで、下から上まで
ぞろりと舐め上げるとビクビク震えたソレが萎んだ。
「っつ――、マテ、って言った、よね?」
 ぐっとリードが引かれ、もう片方の手でも持ち上げられてぐるりと姿勢が入れ替わり、ソファの上に押し倒さ
れる体勢になる。
 見下してくる紺野の表情はすうっと冷めたものになっていて、えも知れぬ恐怖と正体不明のぞくぞくが雪子の
背を這い登った。
「躾が必要だね?大丈夫、酷いことはしないよ。ブラッシングの続きだから」
 笑顔でそう言うと、紺野は風紀検査の箱から散髪時に使う白いポンチョとシェービングクリームを取り出す。
「ひゃ、やぁ、あ」
 男は膝で少女の足を封じ込め、スカートをめくり下着も一気に引き下げた。身じろぎをするたびにスカートが
下がってきてしまうので、命じて裾を持ち上げさせる。
 雪子をわざとソファの隅に追い詰めて、半身を起こさせ、自身の下半身が見えるよう体勢を整えてやる。
「やっ、やあっ」
 鳴き声は許すことにして、腰の下にポンチョを敷いてやり、少女らしい薄い陰毛にクリームを塗りつけてカミ
ソリをあてた。
「トリミング、って言うんだっけ、ねぇ」
 一度剃り落とすごとにティッシュでカミソリを拭き、それを四度繰り返すだけでそこは無毛になった。簡単に
後処理をし、ポンチョにカミソリとティッシュを丸め入れて、床に放り投げる。
 刃物の感触とそこをじっくり見られることで興奮してしまった雪子の敏感な突起が、隠すものがない所為で紺
野の眼前に晒される。
「凄いね、気持ちよかった?」
 興奮と恐怖で訳が分からなくなりかけている彼女を落ち着かせるように、抱き締めてやる。ひくひくとしゃく
りあげながらもまだ喋らない雪子に、もう喋ってもいいよと囁く。
 さあどれだけ罵倒されるか、と覚悟を決めて言葉を待つ。
「ひっ…く、も、もう、やです、せんぱぁい」
「ご、ごめん。そんなに怖かったかい」
「いやで、こわいのに、ぞくぞくするんです」
 きゅうっと抱きついてくる彼女に、紺野も歯止めが利かなくなる。紺野も雪子も上半身は一切乱れていないの
に、アブノーマルな行為に興奮しきっている。
 剃ったばかりでほんの少しざらりとするそこに手を這わせ、男の手が突起をつまみ上げるとびくっと大仰に
少女の体が震え、こりこりと弄られるたびに腰を震わせ、唇から唾液をたらす。
「もう、も、そこ、変になるっ、やだぁ」
「や、じゃないだろ、う?」
 紺野も結構ギリギリだ。速やかに露な秘裂に指を滑らせて、潤んだそこを確かめる。いつも指で馴らした後く
らいには潤っている、と思う、と自分を納得させ、唐突に挿入する。
「あ、あああああん、あ…」
「っ、ぐっ、へぇ…?」
 指で広げられることなく押し込まれたソレにショックを受けて、それだけで雪子は達してしまったらしい。ゴ
ム越しにも分かるそこのうねりと熱さに紺野も驚く。
「やん、やぁん、せんぱ、い、せんぱぁい」
「ホントにイヌみたいだね、そんなにヨかったの?」
 生真面目で思い込むタイプの彼女は、シチュエーションプレイに弱いタイプのようだ。普段殆ど自分を解放し
ないせいで、一度きっかけを与えてたがを外してやると暴走しやすいらしい。
 望みの通り突き上げてやると、彼女の体が揺れてイヌミミもゆらゆらと揺れる。すっかり存在を忘れていた尻
尾で太股をくすぐってやると、それですら感じているようだった。
「こんなに可愛いイヌの飼い主になれたなんて、嬉しいよ」
「ふぇ?せんぱい?」
 いいや、なんでもない、と頭をなでてやりそのまま動きを早めて快楽に沈めてやった。


「い、今生えかけで凄いちくちくするんですっ!」
「わ、雪子さん、声大きい」
 忙しい生徒会活動の合間に、雪子は件のアニマルコスプレ喫茶に勤務し、わざとらしく巡回に来た紺野に給仕
をする。ほんの少しがにまたなのを指摘すると、先輩の所為だと怒鳴られた。
 その二人のやりとりと所有のしるしの赤い首輪を見て、何人かの客がため息をついている。
「ねえ雪子さん、指輪でも買ってあげようか?」
「なんですか急に?」
 他人に自分のものだと見せびらかすのも悪くない、そう思って紺野はとりあえず、暫くの間生徒会からの呼び
出しが無い事を祈った。



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