『紺野が塾講師をやっている』外出会話ネタ。
若干アブノーマル

「ありえねーし」
「うっわ紺野センセーマジサイアク」
 教え子達に散々こき下ろされ、紺野は萎縮するばかりだった。
 
 先程彼女らと個別補習の話をしながら一緒に塾へ向かう途中、雪子にばったり会ったのだ。
 気軽に声をかけたものの、友達のアルバイト先に用事があって、と言いよどむ彼女は落ち着かない風だった。
彼女の受験が近いせいであまり会えていなかったから、もっと話してよく顔も見たかったのに、じゃあと小さな
声で言って早足で去られてしまった。
 その様子をひそひそ話をしながら観察していた教え子達は、雪子がいなくなるとすぐに矢のように質問を浴び
せかけてきた。
「今の人ってセンセーのカノジョ?」
「年下?」
「ぶっちゃけフられましたよね今」
 先程までは補習がどうのと言っていたのに、物凄い変わりようだ。女の子はやはり恋愛の話が好きなんだなと
ため息を吐く。
「そうだよ、一つ年下の彼女だ」
 ふられたかどうかは別として、事実を告げる。彼氏彼女がどういう基準で定まるのかは分からないが、そばに
いてくれる愛しい存在、触れれば溶ける様に落ちる彼女のことをそう言っても差し支えはないだろう。
「マジ紺野センセーにっぶ」
 ぺちんと少女の手が紺野の腕を殴る。
「いたっ、何なんだい」
 そう口にしたとたん、二人の中学三年生女子は烈火のごとく怒り出した。
「ゲンメツしたぁ!マジでなんもわかんないの」
「…一個違いてことは大学と高校だよね、うっわアタシだったらこんなカレシ面倒すぎて別れる」
 塾に向かって歩きながらも、マシンガンのように紺野を罵倒しつける彼女たちに、驚く。
「僕、何かしたか…」
「しました!」
 小さな呟きにも大きな答えが返ってくる。そこそこに愛らしい顔立ちの彼女らが今は般若のようだ。
「今日は紺野センセーにあたしたちが補習します」
「逃げないでくださいね」
 念を押され、戸惑う紺野を置き去りに、少女らは塾の建物に駆け込んでいった。

 一通り授業が終わり、紺野は大人しくパーティションで区切られた応接スペースに座っていた。
「紺野君」
「ああ、お疲れ様です」
 副所長を勤める中年の女性講師が、紺野の向かいに座る。
「あの…」
「話は聞きました。もう遅いですし、あの子達に代わって私がお話しましょう」
「私のごく個人的なことですので、あの、お気になさらずとも…」
 トン、と強くテーブルを叩かれ、紺野はびくりとする。
「いいえ、一度はっきり言おうとは思っていたのです。紺野君、あなたは無神経です」
 母親と同年代の女性に断言され、紺野はショックを受ける。鈍い鈍いとは言われ続けたが、そこまで自身に感
情が欠落しているとは思わなかった。
「ショック、と言う顔をしていますね」
 副所長は柔らかく笑んで言葉を続ける。
「歳のわりにはよく気が付くし、礼儀もなっている。全体や他人を考えて行動することには長けています。しか
し、役職や肩書きのつかないあなた自身に向けられる感情には余りにも無頓着ではないですか」
 そういわれても、紺野には何のことなのかさっぱり分からない。
「例を出しましょうか、同じ大学生アルバイトの娘と今日あなたと一緒に登校してきた生徒の片方、それと事務
用品補充業者の女性から、何も感じませんか」
「…何も、無いです」
 はぁ、とあからさまな溜息をつき副所長は心底あきれた顔で見つめてきた。
「そこまで鈍感なのに、彼女がいるのよね…、今日聞いてびっくりしたわ」
 口調が砕けた、嫌な予感がする。
「ええ、まあ。そうです」
 あまり明確に他人から彼氏彼女扱いをされることが無いので、照れてしまう。
「で、今日あの子達といちゃついてるときに彼女に会ったと」
「いちゃついていた訳では…」
「あなたはそういうつもりでなくても、周囲から見たらどう見えるか」
 賢い紺野の脳はヒントさえ出されたらすぐに答えを見つける。そうか、雪子は傷ついてしまったのだ。
 がっくりうなだれる紺野を見、女性は微笑む。本当は、全く恋愛の対象にされていないと気付いた塾の生徒も
傷ついていたのだが、それまで言うと紺野は混乱してしまうだろう。
「胸に手をあてて考えて見なさい、その調子じゃたくさん前科がありそうね」
 今日はもう帰りなさい、と背中を押され紺野は荷物をまとめて塾を出る。
 第三者視点で物事を考えることには長けていると言うより病的に他人の目を気にしているはずなのに、恋人に
対しては全くそれが出来ていない。
 彼女が好きで、彼女も僕を好いてくれる。紺野はそれだけで満足なのだ。しかし、お互い思いあっていればそ
れで良いというのは余りにも傲慢なのだろう。カタンと携帯のフリップを開け、彼女に電話をかける。
「もしもし?先輩?」
 ワンコールで出た雪子の甘い声に、一日の疲れがふわりと軽くなる。
「あの、今日はごめん」
「誰かに言われたんですね」
 くすくすと笑う声が聞こえる。最初から紺野は傷心に気付かないと踏んだ上での、言葉。
「…ごめんね。気付かなくて」
「いいえ、こうやって気付いて電話をくれただけでうれしいです」
 どれだけ健気なのだろう。教え子たちや上司は、別れるとかバッグや服で機嫌を取らせるとか言っていなかっ
たか。
「なにか、欲しいものとか無いかい」
 ご機嫌取りじゃ無いけれど、元々何もねだらない雪子になにか贈り物をしようとは思っていたのだ。
「…じゃあ、私にも、個人補習してください」
「そんな事でいいのなら何時でも」
 じゃあ、紺野先輩の部屋にお邪魔しますね、と日時を約束し、おやすみなさいと電話は切れた。

 お邪魔します、と礼儀正しく紺野の家に上がる雪子は、厚いコートを着ていた。あらいらっしゃい、と雪子を
気に入っている紺野の母は歓迎し、じゃあ私は今から出かけようかな、とにやりと笑う。
 俯いて真っ赤になる彼女の様子を見て、紺野は母を諌めた。
「遠慮しなくてもいいのよー」
 臆面も無い言葉に見送られ、二人は階段を登り紺野の部屋に入る。何度か来た事のある部屋でも、雪子はやは
り緊張する。しかも今日は、ちょっとした罰を紺野に与えるつもりなのだ。
「もうすぐ私立大の受験だ…?」
 机に雪子の座る椅子を用意していた紺野は、彼女の行動に瞠目する。なんとコートの下に着ていたニットのワ
ンピースを脱いでいるのだ。ふわふわしたキャミソールと、ごく薄手のミニスカートにオーバーニーのソックス
という、夏場ならぎりぎり外着になるレベルの露出の高さである。しかし服の下に着ていたことと、今の季節を
考えると下着にしか見えなかった。
「きょ、今日はこの格好で、勉強を教えてもらいますっ」
「あの、非常に目のやりどころに困るんだけど…」
 普段あまり露出の高い格好をしない彼女のまれに見る姿に、紺野は目線をうろうろさせる。
「ただし、ただしですよ、決して先輩から触っちゃ駄目です!エッチなこと全部禁止!」
「…っ」
 間違いなく、これは紺野に対する仕返しだ。しかも彼女自身の思い付きではなく、恐らく誰かの入れ知恵。
「今度受ける滑り止めの最終チェックなんですけどっ」
 テキストとノートを持って、雪子は紺野の机に座る。その言葉ははとても白々しく響いたが、紺野は何とか普
段の調子を取り戻そうとする。
 彼女の左側に座り、横から覗き込むように紙面を見ると、何度も解いたらしくチェックマークやラインマーカ
に彩られていた。優秀な生徒は、質問が上手い。彼女も赤いシートで問題を隠しながら、引っかかるところをぽ
んぽんと質問してくる。
 問題に集中しないと答えられないレベルの質問を飛ばされるが、どうしてもやわらかそうな首筋や座面の上で
きわどく皺になるスカートの裾に目が行ってしまう。普段ではありえないほどに詰まる紺野に、上目遣いで雪子
は笑う。
「紺野せーんせ」
 そうやって彼女はぎゅっと紺野の右腕に抱きつく。やわらかな感触が直に当たって非常に気持ちが良い。照れ
屋でおくてな彼女も、今日は何かのたがが外れているようだ。猫のように体を擦り付けてくる。
「せんせい、この問題頻出なんですけど、いまいち納得できないんです」
 それでも拷問のように質問は続く。
「あ、ああそれね、方程式を入れ込めばいいんだけどその理由が…」
 解き方ではなく問題の成立そのものを問われ、必死に頭を冷やしながら答える。
「へぇー、やっぱりせんせいの説明が一番分かりやすいです」
 にっこり笑い、ちゅっと頬にキスされる。今すぐにでも抱き締めてしまいたい腕を必死に押さえる。
「じゃあ、次は化学です」
 そういいながらテキストを取り替える為、席を立った彼女の尻は、もう少しでふくらみの根元が見えるほどに
きわどいラインで布に覆われている。見ない方が体にも精神にも良いのだが、目が離せない。
 その視線に気付いた彼女は、口角を上げる。
「せんせいのエッチ」
 そしてなんとスカートの下に手を差し込み、ゆっくりと下着を脱いだ。ピンク色のフリルがついた下着がニー
ソックスの上を滑り落ち、細い指に摘み上げられた後彼女の鞄の中にぽいと投げられた。
 あまりの事態に固まる紺野そっちのけで少女は跳ねるように机に戻り、なんと紺野の上に腰掛けた。既に硬く
なっている紺野自身をまたぐように、やわらかな尻が押し付けられる。
「ぅ、はぁ…――」
 もうぎりぎりだ。真上から覗き込むことになると胸元も相当危うく、彼女が書き込むために前かがみになる度
きわどいところまでが見える。
「えっと、この化学式一行目の矢印以降の→ -CH2-CH2-CH(OH)-CH(OH)-は、OHが結合しているCにはHが一つしか
ついていないから、これは第二級アルコールと同じ形ですよね?せんせい」
 いじめとしか思えないレベルの問題を吹っかけられる。

「ごめんなさい」
 震える声で、紺野は詫びた。何に謝っているかもよく分からないが、この状況を早く終わらせてしまいたかっ
た。きつく握り締めた両拳が限界を訴えている。
 くるりと紺野のほうに向き直った雪子は、ちょっと怒った顔を作って紺野の頬を引っ張った。
「先輩が鈍いのは解ってます。でもわかってても、もやもやすることってあるでしょ」
「ふぁい」
「無理に気をつけなくてもいいですから、たまには私も怒るってこと覚えておいて下さいね?」
「ふぉれは今身に染みてわかったよ」
 そういう途中で頬を離され、唇に柔らかい感触が重ねられた。すぐに離れていったそれにもっと触れたくて手
を伸ばすが、ぱしりとたたき落とされる。
「まだだめですよ先輩、ベッドに座ってください」
 全く運動の出来ない小柄な彼女と紺野ではこのまま強引に押し倒すのも簡単だが、操られるように男はベッド
に腰掛ける。向かい合う様にキャスターつきの椅子を移動させ、雪子は紺野の前に座る。
「ひっ」
 肉付きの悪い細めの足が、紺野の股間を踏む。黒いニーソックスを穿いているのでよく滑るようだ。ぎゅう、
っと踏まれ何度か下から擦り上げられるように動かされる。
「きもちいーですか?」
 物凄く気持ちがいいが、ここで是というと、自分が変態になるような気がして紺野は黙る。
「もう…勉強してきたのに…」
「何!」
 思わず反応してしまう。何を見てこれを勉強したというのか。混乱する紺野に椅子ごと近づき、少女の手はズ
ボンの前たてから陰茎を出そうとする。ガチガチになったそれは中々取り出しづらいようで、何度も指がかすめ
それだけで達しそうになる。
「ぐ―、うっ…」
 ようやく露出したそれを、また椅子に戻った彼女の足がぎゅっとひねるように踏む。化繊のざらりとした感触
が気持ち良く、紺野のソレはびくびくと精液を放出してしまった。
「あーぁ、靴下ねとねと…」
 荒い息をつく男の目の前で、精に汚された足指が擦りあわされる。その仕草に、少女のスカートがめくれ、そ
の奥に潜む秘所が見え隠れした。
「えーとたしか」
 先端の包皮をむくように、右足の親指と人差し指でペニスをつかまれそのまま扱かれる。左足も容赦なく陰嚢
を軽く踏んでいる。
「っうわぁ、やめ、てくれ」
 手とも口とも違う感触と、踏みつけにされていると言う状況に容赦なく煽られる。あっという間にまたいきり
立つソレを、両足の土踏まず部分で挟まれてこすられる。
「ねーぇ、きもちいーですかぁ」
 もう一度聞かれる。彼女も相当興奮しているらしくとろりと溶けた瞳は潤み、頬が高潮している。
「はぁ、は、良い、よ」
 そう言うと、紺野はまたびゅくっと白濁を溢れさせる。すっかり足は精液塗れで、とても床に下ろせる代物で
はなくなっている。
「先輩、脱がせてください」
 高い位置でゆらゆら揺れる足を捕まえ、ゆっくりと靴下を引き抜く。熱い紺野自身を擦っていたせいか、現れ
た足はむわっと熱を持っていた。
「もう、さわっていーですよ」
 熱に浮かされたように彼女は命じた。じらされすぎた紺野の体はすぐに動かず、何度か手を握ったり開いたり
した後、少女の足を取ってそこに唇を下ろした。散々苛めてくれた足指を丁寧に一つずつ舐める。
「ゃぁ…あ、んっ、あんっ」
 もぞもぞと腰をひねる彼女は非常にいやらしい。指の股をねぶり足裏をくすぐるようにしてやると、あからさまな嬌声が上がった。
 くったりとなった雪子の体を持ち上げ、ベッドにうつ伏せに降ろす。尻だけを上げさせ、ぐっと開くと彼女の
そこは滴るほどに濡れ、液が太股に行く筋か伝っていた。それをを掬うようにして股をつぅ、となで上げると腰
が揺れる。ぐっと中に押し入れると、潤んだ内壁がきゅうきゅう締め付けてくる。
「ぐずぐずだね」
「らって、わたしも、がまんしてた…っん」
 興奮しすぎて舌が回っていない彼女が可愛くて仕方が無い。多分明日には恥ずかしさに頭を抱えていることだ
ろう。それをどう慰めるか想像しながら、ベッドに置いていたゴムを手に取り歯で開ける。
「じゃ、今日は後ろか、らするよ…っ」
「へ?ぁ――あぅうん!」
 まるで動物の交尾のような姿勢で、一気に貫かれる。初めての体勢に体中が痺れたようになり、ふっと意識が
遠くなる。
「あはァ…あっ…あはっダメ…ダメッ…もう、…はううん!」
「ゆきこさんっ、うわ、すご…」
 ただひたすら交わるだけの姿勢に、二人は夢中になる。ゆっくりと穏やかに愛し合うのを好む二人が初めて到
達する領域。
「ダメ…ダメッ!せ…んぱ…い、んあはっ、ああ、深ぁ!」
「うゎ、ッ――――ふっ…ううっ!」
 猫のようにベッドに爪を立て、無意識に腰を振る雪子が叫びながら痙攣する。その姿に煽られ、紺野もゴム越
しに大量の精液をぶちまけた。

 最近ご無沙汰であったのも災いして、二人はまさに精も根も尽き果てるまで交わり続けた。一度ほんの少し二
人が我に返った時、紺野の携帯電話に送られた
『盛り上がってるみたいだから、母さんも父さんと一泊二日で温泉にいってくるわ。お姉ちゃんも今日は帰らないって』
というメールを見て、物凄い羞恥に苛まれる事になる。が、その後開き直って風呂やキッチンにまで場所が広が
ったことは二人の秘密だった。



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -