This is still O.K.



 桜井兄弟といえば兄が硬派で弟が軟派だと、皆一様に言うがそれは違うと沙雪は思う。確かに琉夏の方がおお
っぴらにモテるし下半身もゆるいが、琥一だって大概なのだ。
 大体から早熟でしっかりしている彼は、オトナの女性から人気がある。中学生の時からそんなお姉さま方に揉
まれ育てられたからか、歳相応よりかなり、いやずば抜けてそういうことには長けている。だから、同い年の男
子ならとっくに理性がぶちきれるような場面でもぐっと自分を殺し、相手の事を気遣う事もできるのだ。
 そのずば抜けた忍耐力が、沙雪をちょっとだけ不満にさせる。
 普段は沙雪の事を荷物かモノように担いだり持ち上げたりするくせに、えっちな事になるとものすごーく丁寧
なのだ。そりゃあ琥一が理性も何もない状態で突如襲い掛かってきたら死ぬかもしれないけど、ちょっとがっつ
くくらいならや沙雪だって平気だ。壊れたりはしない。
 もっと好き勝手していいのに、というのは贅沢な悩みなのだろうか。

 高校を卒業して、一年。
 沙雪は専門学校の二年生に進み、琥一は相変らず桜井組管下の現場アルバイトに精を出している。そして琉夏
はなんと宣言どおり一流大学に入学し、建築家にでもなろうかなと暢気な事を言っていた。
 沙雪も琥一もあまり勉強ができる方ではないので、去年の冬は勉強をする琉夏をおろおろ眺める事しか出来な
かった。だから本人より神経をすり減らしたし、合格発表のあとは三人で大いに呑んで食べて大騒ぎした。
「ほんと良かったね、るかちゃん」
「オウ」
 心配事のなくなった二人は、久しぶりにツーリングに出かける事にした。
 晩春の夏めいた日差しが青々と山を照らし、爽やかな風を運んでくる。琥一にぺったりとひっついてツーリン
グを楽しむ沙雪は、見慣れたはばたき山ハイウェイに真新しい看板を見つけた。
「コウくんコウくん!」
「ン?」
「はばたき道の駅リニューアル、だって!行こうよ!」
 走るうちにまた同じ様なデザインの看板が現れ、わき道へと入るように誘導してている。
「まァ、いいか」
「やったあ!」
 ぐん、と琥一は看板の方向へハンドルを切って、エンジンをふかした。
 程なく真新しいログハウス調の建物が見え、沢山の人が楽しげに買い物をしている様子が見えてくる。だだっ
広い駐車場の端にバイクを止めると、二人はぐるりと周りを見渡した。
「へェ、中々頑張ってるじゃネェか」
「わぁ…、市場と食べ物やさんに食堂に甘味所…温泉まであるの、すごいすごい!」
「食いモンばっかじゃネェか、クク」
 きゃっきゃと飛び跳ねて喜ぶ沙雪を眩しそうに見つめ、琥一はメットを収納する。なんだかこうやって二人で
遠出をするのが久しぶりなような気がして、柄にもなく浮かれる気持ちを押さえた。
「コウくんいこ!」
「オイそんなにはしゃぐな」
 それは沙雪も同じなのかも知れない。ぎゅうっと琥一の腕にしがみ付いてきらきらと笑顔を零す彼女は、テン
ションが上がりきっていた。


「ふー、おなかいっぱぁい!」
「オマエはちぃと食い過ぎだ」
 ぽこっと出たおなかを触られて、いやぁと沙雪は逃げる。散々市場を物色して、屋台の地産料理を平らげ遊び
まわった二人の前に、はばたき道の湯という分かりやすい建物が現れる。
 ガイドによるとはばたき道の駅自慢の温泉で、源泉掛け流しが出来るほどの豊富な湯はぬるりとして肌触りが
良く、いま大層な評判になっているらしい。
「ちょっと入りたいなぁ…」
「いいぜ、サッパリしてから帰るか」
 断られるかと思いきや意外と乗り気な琥一に、沙雪はびっくりする。
「何だその顔は、足伸ばせる風呂は好きなんだよ」
「おおー、なるほど」
「おまえみたいなちんちくりんには分かンネェだろうけどな」
 からかう琥一にぷうっとさくらが膨れる。ぎゃあぎゃあとやりあいながら受付へと進むと、案内係が神妙な顔
をしてこう告げた。
「ただいま浴場が大変込み合っております…、もし良ければ家族風呂をご利用ください。料金は変わりませんので…」

 家族風呂といえども結構贅沢な作りで、全面窓からは山の風景が見え、それなりの大きさの湯船に温泉が満ち
満ちている。
「えへへ、こんよく、だね?」
「…家族風呂だからな」
 白い乳房が温泉に浮かんでいる。きらきらとお湯は乱反射しているけれど、つんと尖った薄桃色の乳首が透け
て見えている。ゆらゆらゆれる水面の下には引き締まったウエストとふわっとした陰毛が続いていた。
 とろんとした目をして琥一の胡坐の上に座る少女は、少し恥ずかしそうに体を屈めて体重を預けてくる。
「コウくんのムキムキ、好き」
 そういや、最近あんまりそういったことをしていなかったな、と柔らかなからだに手を回しながら琥一は考え
る。さわさわと自分の腕や胸に触れてくる小さな手は、甘えたそうに燻っているようだ。
 一応お付き合いをして二年位は経っているのだけれど、あまり甘い雰囲気になることはない。やっぱり琉夏を
含めて三人で遊ぶ事も多いし、なにより天真爛漫で無邪気な彼女は琥一にオンナを感じさせないのだ。
 しかし最近、沙雪は甘え方を知らないだけなんじゃないかと思うようになってきた。こうやって、強制的にで
も雰囲気を作ってやるととたんにべったりになる。
「…すき…」
「…オウ」
 長い睫がふわりと閉じられたのを合図に、琥一は柔らかい唇に口付ける。
 ちゅ、と一度軽く触れ合わせて、まぶたや頬にも触れていく。上手く口にできない想いをこめて、飽きずにキ
スを繰り返す。
「くすぐった、も、う…」
 もぞもぞと、しかし嬉しそうに身をよじる様子が可愛くて、ますます止められなくなる。
 その甘い行為に耐えられなくなったのか、急にぐしゃぐしゃと髪を乱されて琥一は動きを止める。特にタオル
などは巻いていないので、ばらりと顔に髪の毛が落ちてしまう。
「コラ、ふざけんな」
「ふざけて、ないもん…」
 真っ赤になって両手で顔を覆い俯く様子が、琥一の胸を苦しくさせる。愛しくて愛しくて大事にしたくて、で
も強く全てを奪ってしまいたい本能も呼び起こされる。
 琥一は、欲望を愛情にすり替える術を知らなかった。
 琉夏に寄ってくる女がストーカー気質というか愛情過多なタイプが多かったのとは対照的に、琥一に声を掛け
る女達は実にさっぱりした性格をしていた。イイカラダをした物分りのいいオトコノコと、それなりのムードで
遊んでセックスをしたい。そういう意図を隠しもしない人たちとの付き合いは、面倒ごとが嫌いで自分の趣味を
優先したい琥一にも合っていた。
 要するに、恋を知らなかったのだ。
「…ふぅ…」
「暑くねェか、のぼせるなら出るぞ」
 ふるふる首を振ってきゅっと抱きついてくる体温は、琥一に幸福を与えてくれる。
 触れ合う皮膚が粘膜が愛情を伝えるなんて、沙雪を抱いて初めて知ったのだ。そんな感情を伴ったセックスは、
理性をあっという間に溶かしてしまう。その衝動はきっと、やわらかく小さな体を容易く傷つける、それが怖く
て仕方がない。
 湯の中で背中や尻を撫で回し、露出している肩が冷えないように偶に湯を掛けてやる。
「あったかいね…」
「…ン」
 完全に甘えたな状態になった沙雪は、とろんと幸せそうに引っ付いてくる。琥一が際どい所に触れる度に体が
揺れて、ちゃぷちゃぷとお湯に波が立つ。
「ひゃ…」
「大丈夫、か?」
 長い指が割れ目をなぞり、すこしふやけたそこを甘くいたぶりはじめる。普通のカップルよりは少な目かも知
れないが、もう何度もセックスをしているのだ。触れられる位、なんてことはない。
「びっくりしただけ、だよ」
「そうか」
 何度も陰唇をくすぐり、やがてずるりと指が媚肉を割っていく。何時もなら溢れる愛液で加減が分かるのだが、
お湯の中なのでそれが分からず不安になる。せめてよく表情を見ようと片手で抱き寄せると、しっとりと濡れた
表情が驚くほど色っぽくて理性が遠のきかける。
「んっ、コウ…くん、どうか、したのぉ…?」
 ぱちゃ、と水面を揺らして沙雪も琥一の両耳のあたりに手を伸ばし、じっと覗き込んでくる。少し背を伸ばし
たからか、桃色に染まった胸が完全にお湯から出てほわりと湯気を上げている。
 その魅力的な光景に抗える男はそういないはずだ。ずるっと指を抜き去り、腰を支えるようにして胸にかぶり
つく。
「ぁん!くすぐった…、も…ぅ!」
 きつく口付け甘噛みしながらそのふくらみを堪能すると、ひくんひくんと背をそらしながらもきゅっと耳を引
っ張ってくる。いちいち反応が可愛くて、どんどん煽られ止らない。歯形とあざまみれになった胸を舐めあげ、
先端に強く吸い付くと、じゃぶっと波が立つ。
「ぁ、や、ぁー…!ぁ!あふぅ!」
 仰け反る体を逃さずに、強く吸っては舌で抉る。左胸に食いつくと、どくどくと早い鼓動が聞こえて彼女の興
奮を知る事が出来た。
「ぁ…!ぁは…、はぁー…」
「…?お、オイ、大丈夫か」
 ぐったりと凭れ掛かってくる彼女の頬は真っ赤で、汗だか蒸気だかわからない液体がだらだらと流れている。
「のぼせたか」
「…こう、ちゃん…、ちがう…の、きもちいー…の」
 だから、やめないで。そう囁く声が甘くて、琥一のほうがぐらりとのぼせそうになる。胸をがぶがぶ噛まれた
しかえしとばかりに唇に噛み付いてくる沙雪に応えながら、結構ぎりぎりまで興奮している自身に気付かれない
ように腰を引く。
「ばかぁ…、にげないでよぉ」
「…っ!チッ!」
 沙雪も全く学習しないわけではないらしい。さわさわ、と腹筋に触れられて陰茎をきゅっと握られる。つたな
い動きでも湯の圧力と相まってかなりクる。なにより胸を押し付けられながら、ちょっと怒ったような拗ねたよ
うな顔で手コキをされて我慢できる男が居れば見てみたいと思う。
「ゴムねぇから、な」
「今日はだいじょぶ、なの!」
 奥歯を噛んでギリギリまで抵抗するも、彼女は逃がしてくれない。
「バカが…」
 腰を掴んでひょいっと持ち上げ、彼女につかまれたままの陰茎をぬるりと膣口に押し当てる。一応指を軽く押
し入れると、先程馴らしたせいかふやけたのかお湯に浸かった中は結構な柔らかさで、大丈夫そうだなと安心す
る。
「は、ぁ…!ぅあ、あああ…!ぅ…」
「―ッツ!」
 ごりごりと太くてかたいものが、肉襞を開いていく。苦しそうな表情を浮かべる沙雪にやはり罪悪感が沸き、
琥一は宥めるようにその背中や腰を撫でさすってやる。
「んはぁ、は、ぁあっ」
「苦しいか」
「んん、らいじょ、ぶ、っあ、奥ぅ…」
 ごりっと奥に琥一の先端が当たるとそれが全部入ったサインだ。きつきつの入り口に絞られ、絶妙な熱と柔ら
かさな膣にきゅうんと包まれて、先端は弾力のある子宮口に押しつぶされている。本当にぎりぎり全部入ってい
る状態なので、琥一も挿れただけで結構な快感を与えられてしまう。
「…―ふ…っ、オイ、コラ…」
「れんしゅー、ね?」
 ぎゅ、と目を閉じ男にしがみ付いて、沙雪は膣を締め上げようとする。元々運動神経は良く筋肉もついている
ので、やり方さえつかめたらきつくきゅうきゅうと絞ることができる。
「―っつ、ヤベェ、止めろ」
「ふ、ぁ…!」
 きゅううと絞られ琥一自身がどくどくと質量を増す。それが気持ちよくてもっと締め付けてしまい、快感の連
鎖が始まっていく。
「ぁ!おっきぃ…、あは、あんっ!」
「お、マエ、なぁ…!」
「あ。あぁぁあああぁああ!」
 いくら大丈夫な日であろうともやはりナカに出すのはまずいだろう、と寸での所で思い切り引き抜き、湯の中
に白濁を吐き出す。
「ひ!ぁひ…、ふぁ…あ」
「オイ、大丈夫…じゃネェな」
 引き抜かれた衝撃で達してしまったらしい少女は、目の焦点が合っていない。へたりと男に寄りかかって小刻
みに痙攣している。どうせあまりするとのぼせるだろう、とざばっと掬い上げ大股で家族風呂併設の小さな休憩
部屋へと運ぶ。
 タオルで包み全身を拭いてやると、ふるふると頭を振った沙雪は抱きつこうとしてくる。
「コラ、ふざけんな」
「ふざけてないもん、ね、コウちゃん…」
 誘い方を知らない沙雪は、ぎゅっと抱きつくことしか出来ない。お腹で琥一を感じ取って、ごりごりと粘膜を
擦られる感覚を知ってしまったカラダは、一度抜き差しされた位では満足できない。
「コウ、ちゃ…ん」
 全身で抱いてと縋られ、あまりのその色気に琥一は理性が解け落ちそうになる。洗面台の上に沙雪を座らせ、
何時もの騎乗位ではなく正面から十分にいきり立ったそれを捻じ込んでゆく。
「あ、あぁああぁあああ!すご、ぉ!あんっ!」
「ふーっ、ッ、喰っちまうぞ」
「うん、イイよ、あげる、ぜんぶ、あ、あはぁ…!」
 がぶっと胸に食いつかれ、益々歯形が増える。何時もより凄く速いスピードで膣をかき混ぜられ、敏感な突起
も琥一の陰毛や腰に擦られてびりびりする。
 ごぷごぷとお湯混じりの愛液や粘液が股間からあふれて、ぐちょぐちょとそこを塗らしていく。突き上げられ
るたびにイッってるんじゃないか、と思うくらい脳が痺れてしまう。
「あー!あ、あー!ふひ、ひぃ…」
「はー、は、はーッ」
 急にぎゅうと抱き締められ、限界を超えて子宮にねじこまんばかりに深く陰茎を押し込まれる。
「あ、熱っ、でてる、ぁ…あ」
「…責任位、いくらでも取ってやる」
 初めての中だしに失神寸前の沙雪は、そのプロポーズじみた言葉を聴き逃がしてしまう。
 大事にしたい気持ちが、初めて欲望に負けた。凄まじい反省が襲うかと思いきや、これでコイツは俺のモンだ、
とけだものじみた独占欲が満たされる。
「あ、あぅ、コウ、ちゃん…、ナカ…」
「大丈夫、なんだろ?」
 彼女の股から溢れる液体に白いものが混ざり、益々琥一を煽る。ゆるゆると腰を動かすと、次第に焦点が合っ
てきた沙雪はそっと足を絡ませてくる。
「うん…、あんっ…、だいじょぶ…っ!」
「まだだ」
 隠していた獣性が次第に現れる。ヨくさせるのではなく、自分の欲を満たす為に動き始める。
「あ、あぁー、あっ、あんっ!!また、すご…、いっぱ…ぁ」
 貪られるかわいそうな小鹿は、それでも悦んでいるから虎は存分にその牙を振るうことにした。


「…すき、だぁいすき」
「…オウ」
 体中ガタガタで少しの体力も残っていない沙雪は、それでも幸せそうに琥一に引っ付いている。とてもバイク
に乗れる状況ではないので、高速バスで帰ることにしたのだ。バスはガラガラだから、少女は毛布をかぶってこ
ろんと青年に身を預ける。
「また、いこーね?」
「まァ、暇があったら、な」
 そっけない答えに拗ねそうになったが、目線を合わせず耳まで赤くする琥一の様子を見て沙雪も頬が熱くなる。
はじめて気を使わずにおもいきり抱いてくれた事が嬉しくて、軋む全身が幸せに満ちていた。



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