■ぜんぶ、あげる。

 初心なさくらは、一つ一つにつまづく。手を引き、大人への階段を一足飛びに登らせることに琉夏はもう躊躇
しなかった。
「ん…、ぅ、はぁ」
「そう、うん、大分上手くなってきた」
 ベッドに腰掛けて琉夏の膝上に座り、何度も深いキスを受けるさくらの息は絶え絶えだ。鼻で息をすることも
出来ず、ぜいぜいと言っていた彼女に少しずつやり方を教え、何とか形になるようになってきた。とろりとした
表情に頬を赤く染め、すがりついてくる様子がとても可愛い。
「うん、キスは合格点かな」
 そういってベッドに押し倒し、洋服を脱がせる。くたりとしたさくらは何をされているのか良くわかっていな
いのだろう、成されるがままだ。
「ふぅん…」
 結構な質量の胸はスポーツタイプの下着に包まれていて、妙にいやらしい。琉夏がやわりと触れるだけでふる
んと弾力のある揺れ方をする。
「普通のブラ、持ってないの?」
「え、えと…、ワイヤーが苦手なの…」
 両手で下着越しに触れると、びく、と震える。薄いカップは容易く先端の位置を知らせ、くすぐるようにそこ
に指を滑らせる。
「痛かったら、言って」
 男の掌の力加減は絶妙で、ちっとも痛くなくただびくびくとしてしまう。
「―ぁ、あ、ふぁ…」
「胸、キモチイ?」
 窓から入る光を背負った琉夏は、やらしい顔をしているのにとてもきれいだと思った。胸に触れる間にも片手
で髪を梳いたり首や耳にキスをされたりと沢山触れられ、どんどんさくらの熱は上がっていく。
「あ、なんか…ぁ」
 もじもじと足をすり合わせるさくらに、琉夏の掌がすっと下腹のほうへ伸びる。下着越しに指で強く割れ目を
なぞられると、今まで感じたことのない衝撃がさくらを襲った。
「―っ!」
「自分でしたことも、無い?」
 そこに触るのは、お風呂の時だけだ。だからふるふると思い切り首を振ると、は、と琉夏に笑われる。
「ほんとに、もう…」
「う―、ごめんなさい…」
「謝んないで、嬉しいだけだから」
 じゃあ脱ごっかと言われ、ずるりと手早く下着を脱がされる。その手際のよさに改めて琉夏はそういうことに
長けているのだと知らされ、さくらはちょっとショックを受けてしまう。
 真っ裸をまじまじと見られるのは本当に恥ずかしくて、胸を押さえて足をきゅっと閉じてしまう。
 その様子を優しく見下ろす琉夏は、ふと何かに気付いたように自分の衣服も脱ぎだした。
「や、やぁ―」
「なんでさくらが恥ずかしがるの?」
「だって、だってぇ」
 男の人の裸なんて、初めて見る。しかも、相手は琉夏だ。恥ずかしくて恥ずかしくて、正視できない。
「じゃ、こうしよう」
 ぎゅ、と抱き締められると確かに裸は見えなくなる。しかし、じかに触れる体温や感触が強烈な感覚となって
さくらを襲う。
「ふぁ…」
「すごいどきどきしてるね」
 体重のかけ方を加減してくれているのだろうか、琉夏に包まれたような姿勢はとても心地がよくいつまでもこ
うしていたいような気がしていた。

 緊張をほぐそうと抱き締めていると余程心地が良いのだろうか、さくらはとろとろと瞼を閉じかけていた。ま
ったく、緊張感の無い子だ。だから、琉夏も不安になったのだが。
「なるべく、痛くないようにしてあげるから」
 そう囁くと、居眠りを咎められたかのようにさくらはびくっと目を開き、懸命にこくこくと頷く。
 そっと尻の方から股間に手を差し込み、何度も割れ目をなぞる。ぬる、と指を滑らせるそこはそれでも開くこ
とはなく頑なだ。
 こっそり用意していた潤滑剤のチューブを彼女の死角で搾り出し、指に乗せて潤いを足してやる。
「ん、なんか、じんじん、するぅ…」
「そう?」
 少しそういった成分の入った潤滑剤は、しかし初心な彼女にはいくらか効果をもたらしたらしい。
「かゆい…」
 もじもじと太股をすり合わせる様子に、琉夏はほくそ笑む。痛みを与えるつもりは全く無い。快感に溺れさせ、
骨抜きにする事が目的なのだ。
「かゆいんじゃないよ、キモチイイの。ほら言ってみな」
 唇で上半身を辿りながら性器に触れる手に力を入れ、ぷくりとした突起をこりこりと弄ってやる。
「やぁああ!き、きもちい…の?これが、きもちいい…?」
「うん、そうだ」
「うん、きもちいい…、そこ、じんじんする」
 ひくっひくっと背を反らすさくらにキスをして、琉夏は彼女をもう一度抱き締める。
「ほら、さくらがやらしいから、俺もイイよ」
 ごりっと陰茎をこすり付けるが、さくらには何だか解らないだろう。
「なに?これ、ごりごり…する?」
 柔らかな太股で確認するようにそれに触れる様子が、可愛らしい。
「さあ、なんだろうね」
 くくっと低く笑い、ゆるゆると随分柔らかくなってきたそこに指を馴染ませる。
「ひゃ…ぅ、ぁ、あぅ」
 彼女はまだ、十六歳なのだ。熟れていないからだは、花開くのに時間がかかる。入り口にたっぷりと潤滑剤を
絡ませた指を押し付け、狭い中を蹂躙し始める。
「―っ!ふぇ、うぇ…」
「痛い?」
「わかんな、わかんないぃ、おなか…へんなのぉ…」
 泣きながらもきゅうきゅうと締め付けてくるさくらに、琉夏はふうと息を吐く。
「今から、いいところ。探してあげるから」
「ぅ?」
 一度奥まで挿れた指を、中を掻くように引き出す。違和感にじたばたともがくさくらを押さえつけ、執拗に繰
り返す。
「っひゃ!あ、あぅ」
「ここ、だね」
「やだぁ!やだやだっ!んっ!」
 ぞくぞくした衝撃がさくらを犯す。琉夏の指がそこを抉るたび、おなかがきゅんきゅんして体が勝手に跳ねて
しまう。
「さくら、それも、きもちいい、だ」
「う…ん、きもちい、きもちいーの!や、へんになるっ!」
 かくかく震える腰が、急に重たくなって力が入らなくなる。息も上がり、気付いたら汗もかいていた。
「はぁー、はぁー」
「きもちよかった、ね?」
 にっこりとそう言われ、こくんと少女は頷く。
「じゃあ、いまから本番」
「ほ、ほんばん?れんしゅう、だったの?」
 びっくりしたように目を瞬くさくらに、琉夏は笑みを深める。自分がこれくらいの歳の頃とは大違いだ。
 チューブの残りを全部出してベッドが汚れるのも構わず繋がる部分に塗りこめ、自身にも纏わりつかせる。
「さくら、ほら」
「なぁに?」
 小さな飴を琉夏は口に含んで、さくらにキスをする。りんご味のそれはころころと甘く、緊張していたらしい
さくらの強張りを解いていく。飴がなくなる頃唇を離され、つうと引いた唾液をぼんやりと見つめた。
「ちょっと痛いかも、我慢できるね?」
「う…ん」
 腰を掴まれて、何か熱いものが股間に宛がわれた。
「う…うぅ―!くふぅ」
「―やっぱ、キツ…」
 胃がせり上がるような気持ち悪さに、さくらはぎゅうっとシーツを握り締める。何が起こっているのか分から
ないが、先程指をいれられた所が苦しかった。
 いっぱいいっぱいで涙に霞む視界に、琉夏の苦しそうな顔が見えた。自分もとても苦しいが、琉夏の辛そうの
顔を見るのが嫌で思わず両手でその頬を覆ってしまう。
「さくら…」
「くぅ―、…かにいちゃ…ん、だいじょ…ぶ?」
 その仕草に呆然とした琉夏は一瞬動きを止め、深く溜息をついた。まさか初めて男を受け入れる苦痛を味わっ
ている彼女から気を遣われるとは思わなかった。やっぱり、さくらには敵わない。
 じりじりと腰を進め、なんとか奥まで収めきることが出来、琉夏はぎゅうっとさくらを抱き締めた。
「好きだ、さくらを誰にも渡したくない」
「…ん」
 少女もそれに頷いて、ぎゅっと琉夏を抱き締め返す。暫くそのまま馴染むまでそうしていると、さくらがたど
たどしく口を開く。
「あの、えっと、えっち…してるん、だよね」
「そうだよ」
「そうかあ…」
 あまりに今更な問いに、ほんの少しだけ罪悪感が戻る。セックスの意味も知らない子供を犯したのだという現
実は意外と重かった。
 それを振り切るように、少し、腰を揺らす。先程見つけた彼女の気持ちの良い場所に擦るように抉ると、苦し
そうな吐息の中に声が混じる。
「ぁ、あ…、ぅあ…ん」
「気持ち良い所に、当たってる?」
 こくんと頷いた少女は、薄い腰を懸命に開いて琉夏を受け入れようとする。抱き締めあったままなので、挿れ
たままゆっくり奥を抉る動きになるが、その波に乗ろうと目を閉じた。
「きゃ、いま、ぞわって…いま、くぅ…」
「俺も、いま良かったよ」
 呼吸が合って、ぞくぞくするタイミングもあって、何もかもが溶け合い同調する感覚に飲み込まれる。何も考
えられなくなってただ波に飲まれると、頭が真っ白になった。

 ゴム越しに琉夏が射精する頃には、さくらは半分意識を飛ばし琉夏にしがみ付いてただ泣いていた。
「終わったよ」
「ふぇ?」
 涙を零しながら見上げてくる顔の汗を拭いてやり、何度も口付ける。
「今日は、もう終わり」
 よく頑張ったねとペニスを引き抜き頭と背中を撫でてやると、とろんと目を半分閉じてさくらは笑った。
「家には連絡しておいてあげるから、今は寝よう」
「うん…、るかおにいちゃん、さくらをもらってくれて、ありがとう…」
 まさかそんな事を言われるとは思わず。琉夏はあまりの可愛さとけなげさに悶えた。
 ころんと丸くなってうとうとする彼女に毛布をかけてやり、軽く叩いてやる。十数年前、眠くなってむずがる
さくらを寝かしつけたことを思い出しながら口元を緩め、さて何と電話しようかと脳をフル回転させた。

 卒業するまでは、なるべく穏便に。
 それだけが琉夏の望みになった。



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