藍沢先生誕生日ネタ。

 ある程度歳をとってしまうと、己の誕生日など毛ほどの価値を見出せなくなる。年々早くなる体感時間を再認
識するくらいで、酷いときにはすっかり忘れてしまう。数日遅れて、ファンからの祝いやプレゼントが編集部か
ら届けられて初めて思い出すこともままあった。
 だから、歳若い恋人に自分の誕生日を告げることなど忘れていたと言うより意識にも上らなかった。彼女の誕
生日は盛大に祝っておいて、だ。作家としてプロフィールは公開しているから特に秘密にしているわけではない。
現に頼みもしないのにプレゼントや花が届く。
 そして間の悪いことに、十月二十九日夜、ファンからの贈りものを両腕に抱えた編集部員と雪代が藍沢のマン
ションでかち合ったのだ。
「もう、先生、わざわざ持ってくるの大変だったんですよ。取りに来てくださいよ」
 ばさばさとダイニングテーブルの上に綺麗な包みや花束を下ろした編集部員を、雪代は目をまんまるにして見
つめている。藍沢が己の失策に気づいたのはその時点であり、とても遅すぎた。
「あ、こんにちは雪代ちゃん」
「こ、こんにち、は、あの、それ」
「え?これ藍沢先生宛の誕生日プレゼントだよ、今日もまだまだ届くと思うんだけど昨日までに着いた分で結構
な量になったから、一旦持ってきたんだ」
 油の足りない機械のようにぎこちない動きで少女が藍沢の方を向く。
「あー、っと、何だその、俺位の歳になると、自分の誕生日なんて忘れる、んだ」
 本当だ、信じてくれと弁明するが、じわっと彼女の瞳に涙が浮いた。妙な空気に気付いたのか、編集部員もは
たと顔を上げ藍沢と雪代を交互に見る。
「あの、もしかして…、ご存じなかった?」
 こっくりと頷いてごめんなさいとつぶやき、少女はぱたぱたとキッチンへ逃げ込んでいった。
「失敗ですね、藍沢先生」
「うるさい」
 ぐったりとうな垂れる作家は、しっしっと編集に退場を促す。
「はいはい、せいぜいきちんとご機嫌とってあげてくださいね」
「煩い早く帰れ」

 バタンと玄関が閉まる音がして、また部屋に二人っきりになったことに雪代は気付く。今日が藍沢の誕生日だ
なんて一切知らなかった己に腹が立ち、それで悲しくなってしまった。ほんの少しパソコンで検索したら分かる
ことで、沢山の人が藍沢の誕生日を祝っていたのに自分は何もしなかった。それが歯がゆくて仕方がないし、こ
んな些細なことで泣きそうになっている自分の幼さが嫌だった。
 コンコン、とリビング側においてある冷蔵庫を叩く音がしてはっとそちらを見ると、困ったような顔をして藍
沢が立っていた。
「ご、ごめんなさい。あの、取り乱しちゃって。誕生日くらい何てことないですよね」
「無理するな」
 何時だってこのひとまわり上の恋人は、欲しい言葉と態度を与えてくれて甘やかしてくれる。大またで近寄っ
てきた藍沢に抱き締められると我慢していた涙がぽろぽろとこぼれた。
「っく、あの、ごめんなさい、こ、子供っぽくて、ひっく」
「いいんだ、それほど俺の誕生日が君にとって大事だったって事なんだろう、嬉しいな」
 誕生日だ何だというのは恐らく彼にとっては瑣末なことなのだろう。そんなちょっとしたことでワガママを言
っても許してくれるその余裕と優しさに、胸がぎゅっとなる。なんでこんなに素敵なおとなが、つまらない小娘
な自分を好いてくれるのだろうと何時も心に思う疑念が強くこみ上げた。
 そんな不安などお見通しなのだろう、先回りするように顔を上向かされキスをくれる。何度も軽く唇を合わせ
るうちに、マイナス思考も少しずつ霧散していった。不安や恐れなどが溶けた底に残る素直な気持ちを、今なら
口に出せると思った。
「あの、えと、お誕生日おめでとう、ございます。秋吾さんがこの世界にいてくれて、わたしは幸せです」
「…全く、君は」
 この娘は自分がどれほどの殺傷能力を持っているのか知らないらしい。型にはまったデートや高級なプレゼン
ト、万の賞賛よりも勝る、藍沢の存在自体を喜び祝う言葉と気持ちに胸が熱くなる。どれほど書き尽くしても今
の藍沢を包む幸福を書き表すことは出来ないだろう。
 ありがとう、と呟いて今度は深く口付けた。

「きょ、今日は私がしますっ」
 掬う様に抱えあげられあっさりとベッドに下ろされた雪代は、何時ものように優しくしかし強引に快楽へと落
とそうとする男を手で制した。
 驚いたように動きを止めた彼は少し笑って、何をどうしてくれるんだいと意地悪く言った。
 今まで友人から聞きかじったり、書籍で読んだ知識を脳内でひっききまわす。
『雪代ってふわふわだよねえ、それに着やせしすぎじゃない?この胸』
 ぴんと来たのはカレンのその言葉だった。スレンダーでしなやかな体が素敵な彼女はしかし、ことあるごとに
そういって雪代の体をふにふにと触ってきたものだ。
 ベッドに腰掛けるよう藍沢に頼み、その前の床にぺたんと座り込む。スラックスの前たてを開いて、下着の中
からまだ柔らかな雄を引き出した。
 たったそれだけの事なのに、恥ずかしさと不慣れさに思わず時間を食ってしまう。興奮だか緊張だか分からな
い熱で頬が燃えるようだ。ちらりと上目遣いで藍沢を伺うと、穏やかだがからかいを含んだ目で見下ろしていた。
「へ…ただと思います、から、あの痛かったら、言ってください」
 臨戦状態ではないそれを見るのも触れるのも初めてで、ふにゃっとしているのに芯のある手触りが不思議だっ
た。きゅっと手で握り何度か擦ると、徐々に持ち上がってくる。そこが性器であろうとも皮膚であることには変
わらないので乾いた状態だと擦るのに不具合だ、と気付いたが、さてどうしたら良いのかがわからない。いつも、
藍沢が使ってくれる液体があれば良いなと思ったが自分でねだるのは恥ずかしすぎた。が、今日は自分がサービ
スすると決めたのだと勇気を出し思い切って口を開く。
「あの、秋吾さん」
「何だ?」
 ぬるぬるを貸してください、と真っ赤になった雪代から言われたときの筆舌しがたい感情を押さえるのに、男
は必死にならざるを得なかった。余裕を装ってはいるものの、サイドボードに伸ばす手は震え己の欲望を抑える
のに懸命になる。今すぐ抱き潰したいが、美味しすぎる状況をみすみす逃すわけには行かない。
「ほら、手をだしなさい」
「は、はい」
 素直に差し出された小さな手に、ぬめる液体を大量に零す。
「っ!冷た…」
 一瞬驚いたように跳ねる様子がかわいい。普段藍沢はきちんと手で温めてから使っている事に気づくだろうか。
 ボトルをぽいとベッドに放り、雪代の出方を待つ。
 とろとろと男の性器にそれをこぼし、少女は塗りつけるように手を動かす。単純に上下させるだけでも十分に
大きくなったそれから一旦手を離し、腫れ物に触るようにちょんとつつく。露出した先端の色は赤黒く、割れ目
からは透明な液が滴り始めていた。
「どう、ですか?」
 おずおずと見上げると、いとおしそうに見つめる視線は彼が欲情しているときのそれだった。
「悦いぞ」
 わざわざ身を屈めて囁かれた言葉と吐息に、雪代の体が震えた。その情事を思わせる声に目の前にあるもので
深く犯されたとき、腹の奥で感じる快感を思い出してしまい腰のむずむずが止まらない。
 だが、今は自分ではなく藍沢を気持ちよくさせないといけないのだ。恥ずかしいとか触って欲しいとか考えて
はいけないと、ぎゅうっと手を握る。
 ふうふうと緊張と興奮で上がった息を深呼吸で落ち着けようとして失敗した後、雪代は藍沢の予想を外した行
動に出た。ブラウスの前ボタンを開いて下着を緩め、存外に豊かなその胸を露出させたのだ。
「よ、よいしょ」
 そのまま胸の間にいきり立った藍沢のものを挟み、やわらかく揉んだ。俗に言うところのパイズリという奴だ。
 正直ぬるぬると柔らかいだけで、手や体内ほどの締め付けがなく、特別にきもちいいと言う訳ではないが、視
覚効果は的免だ。血管が透けて見える弾けそうに張った胸を、両手で掬うように持ち上げそそり立つ肉棒を挟ん
でいる。
「ん、んっ、ふぅ」
 にゅぷ、にゅぷっとやり難そうに何度か擦りあげた後、雪代は眉を八の字にして藍沢を見つめてくる。
「コレ、いいですか?」
「ああ」
 そうですか…、とあまり納得のいかない表情で少女は奉仕を続ける。
「頑張っている君の姿が、な」
「えっ、ぇ…」
 与えられた思いも寄らない褒め言葉に、かあぁっと赤くなってしまう。こう言われては頑張るしかない、と目
の前の藍沢自身に目を落とす。
 胸で挟んだまま、ちゅ、と先端に口付ける。大量のローションをぶちまけ、さらに胸や手で擦られたそれはつ
るりと光沢を放ち、あまり汚いものに見えなかった。舌を尖らせて液を零す部分をつうと舐め下ろす。
「う、わ、ちょっと、待て」
 先程までの余裕を無くし、身を引こうとする藍沢の様子にやっと達成感を得る。根元の方を胸で挟んだまま、
張った部分に唇を寄せて男の表情を伺う。そのあまりに淫蕩な光景が藍沢の興奮を煽り立てた。
「―!」
 どくん、と震えた陰茎がびゅくびゅくと精液を吹き出す。半透明の白い粘液が雪代の頬や胸、髪の毛に飛び散
る。
「わ…ぁ」
 目を逸らさずに吐き出される様をじっとと見つめる雪代は、何故か感動した様に声を上げる。恥じらいが無い、
というより好奇心が勝っているようだった。大方を吐き出し終えた穴を指で拭き取り、脱力したようにへたんと
床に座り込んだ。
「秋吾さんに気持ちよくなってもらえて、うれしーです」
 胸をむき出しにしたまま精液まみれでにっこり笑われると、大人としてどういった反応を返したらいいのか解
らなくなる。
「あ―、ま、ありがとう、な」
 とりあえずズボンを上げ、そのままじゃ生臭いだろうと雪代の意見を聞くまでも無く、掬うように抱き上げて
さっさと風呂場まで運ぶ。
「シャワー浴びるだけじゃなく、きちんと擦るんだぞ」
「はぁい」
 上機嫌な彼女を風呂に押し込め、はぁと溜息をついた。

 初めて性的なことで藍沢を気持ちよく出来たのが嬉しくて、思わず自分の胸をむに、と触る。地味であまり
交友関係の多くない自分には過ぎたもので誰かに上げられるものなら差し上げたいと思っていたけれど、藍沢が
喜んでくれるなら良かったと思う。
 シャワーを弾くぱつんと張った胸は、先程まで藍沢の欲に塗れていた。
 そう思うと、きゅんと身体の芯が震える。
「…ん」
 言われたとおり丹念に洗おうとスポンジを這わせるだけで、じんわりと快感が走る。ぷくんと膨らんだ乳首に
スポンジが当たると、腰が砕けそうになった。
「ぁ、はぁん、しゅうご、さぁん」
「何だ?」
 無意識に口から出た言葉に、すりガラスの向こうから返答され驚く。思わず足を滑らせてしまいごんっと尻餅
をついた。
「いたぁ…!」
「おい、大丈夫か?」
 一瞬躊躇した様だったが、あまりの音に開けるぞ、と一言断った後藍沢はドアを空けた。
「うぇ…」
 泡塗れの雪代が、うずくまって痛みに涙を流している。
「見せてみろ」
 バスタオルで前を隠してやりながら、打ち付けたらしい臀部を覗き込む、そこは赤くなっていて、酷い青あざ
になることは容易に予想できた。
「後で湿布を張らないとな」
「ごめんなさい…」
 しゅんとうな垂れる首筋から背中にかけてのラインが、取りあえずの大事なしを確認した藍沢の欲を煽る。
 ちゅ、と耳に口付け、そのまま肩先までを舐めるとひくん、と少女の身体が揺れた。その様子にむくむくと悪
戯心が湧き上がる。
「危なくて一人では風呂に入れられないな、洗ってやる」
「へ?」
 シャツが濡れるのも構わず背中から雪代を抱き込んで風呂場の床に座り、そのままスポンジを拾ってあわ立て
る。
「ひ、いいですっ、やぁ…ん」
 スポンジが腹を撫で柔らかくこする。そのまま胸へと登り、円を描くように泡の軌道を残す。
「さっきは頑張ってくれたからな。良く洗わないと、な」
 スポンジを置き、ボディソープをつけた掌で胸を包み込む。
「やぁん!ぁ、ん!」
 柔い肉に指を沈められ、揉みこまれる。なのにすっかり充血した先端には一切触れられず、切ないような感覚
が溜まっていく。
「ぁ…あぅ、ふぁ…」
 きりきりのところまで指が這い、すっと離れていく。もどかしい。我慢できずに、自ら体勢を変えて藍沢の指
に先端が擦れるように動いてみる。だが男は巧みに手を離し、じらし続ける。
「ぅ―」
 仕方なく、ぎゅっと目を閉じて自分でそっと触れてみる。途端に体に走った痺れるような快感に身体が跳ねた。
「なんだ、胸は自分で洗うのか」
 なら、と今度は男の手が下腹部に伸びる。下生えをまるで髪の毛を洗うように泡立てられ、その下に潜む突起
に触れられる。
「ぁんっ!」
 露骨な喘ぎ声が風呂場に響き、雪代は手で口を塞いだ。そんな様子を見て、男は笑みの形に口を歪める。
「ほら、ちゃんと洗いなさい」
 右手は突起に触れたまま、左手で少女の手取って胸を触らせる。人差し指と中指で先端を挟み、きゅうと抓み
ながら胸をもむ。
「ぅや!ぁん!はぁん!」
 浮き上がる下半身を足で封じ、より深く股間に手を忍ばせる。
「ちゃんと洗えない子には、何もしてあげないからな」
「あ…」
 クク、と耳元で囁くとまじめな雪代はひゅッと吐息を呑んだ。
「っ…ん…、ぁあん…」
 自分の胸を揉みながら、男に性器をいじられる。あまりの痴態に何度も手が止まりかけたが、手の動きを緩め
るたびに身を離して行為をやめようとする藍沢に負けてしまった。
 ふにふにと胸を揉むと、柔らかく外側のひだを撫でられて、先端を弄ると突起を刺激してくれる。
「はぁー、ん!あんっ!やぁん!」
 シャワーの湯は出しっぱなしで、もうもうと風呂場は曇っている。のぼせて訳がわからなくなっているのか、
気持ちよくて変になっているのかが解らない。
 ひくんひくん、と小刻みに痙攣しだした雪代はもう限界のようだ。藍沢もそろそろ、彼女を抱きたいと思って
いたので、柔らかく抱き締めてキスを落としてやる。
「しゅうごさぁ…ん」
 雪代も己の胸から手を離し、身体を捻ってキスを求めてくる。よしよし、と頭を撫で、よく頑張ったなとねぎ
らってやるとふるりと震えた。そして、じゅ、と舌を吸いながら、シャワーをスタンドから外し勢いを強めて、
少女の股間に押し当てた。
「!―!っふ!」
 強引なキスを止めずに、狂ったように跳ねる身体を封じる。やがて大きな痙攣が収まり小刻みにカタカタと小
さな体が震え続ける。
 ちゅ、じゅる、と深く深く口腔を貪り、シャワーの位置を微妙にずらしていく。暫くそれを続けると、舌がま
ったく反応を示さなくなった。
 目を閉じて失神する少女に、先程の仕返しにしてはやりすぎたか、と藍沢は弛緩した身体を丁寧に流し、タオ
ルでくるんで風呂から引き上げた。

「…?」
「気付いたか」
 風呂に入ったのだろうか、髪を後ろに撫で付けた上半身裸の藍沢が傍にいて、頭をなでてくれる。
 ぶつんと切れた記憶を手繰り寄せようと、周囲の状況を確認する。おざなりにワンピースの寝巻きを身につけ、
濡れ髪で寝室のベッドに横たわっている。体勢を変えようとするとずきり尻が痛んだ。
「痛っ…」
「あまり痛むなら病院に行ったほうがいいな」
 その痛みでぶわと風呂場の記憶が蘇り、じんじんとした股間の疼きがを意識してしまう。
「しゅ、秋吾さんの変態!」
「なんだ急に」
 自分で胸を触る様を観察して楽しむなんて、変態であると雪代は思うのに、男はしれっとしている。
「へんたい…」
 ひだを探り、突起を剥いて触れる指と、爪の深さほど出し入れされた指の感覚を思い出す。その後の水流も滅
茶苦茶気持ちよかったが、ナカは燻るように熱を持っている。
 変態と罵る割には熱っぽい視線で藍沢を見つめてくる少女に、軽く口付ける。一瞬と惑った後、雪代は僅かに
男の腕を引いた。
 散々乱れようが好奇心旺盛であろうが、セックスを覚えて半年も無い彼女の精一杯な誘いを汲んでやり、ベッ
ド脇のスイッチで部屋の電気を落として、男は覆いかぶさるようにベッドに沈んだ。
「んぅ…、しゅうご、さぁん」
 寝巻きを剥いで全身に触れる手に何時もより敏感に反応してしまう。鈍いベッドサイドの明かりだけが頼りな
ので、次どこに触れられるかわからずにいちいちいびくびくしてしまう。
 素直に反応を返し初心に跳ねる身体とは裏腹に、風呂場での行為で温かく開いた性器はぬるりと楽に指を受け
入れる。
「ん、んぅ…」
 何時もなら初めて挿れる時は眉間に皺を寄せる雪代も、今日は気持ちよさそうにすがり付いてくる。ふわっと
充血したそこには少し湯が残っていて、それがより、指の動きを滑らかにした。
「今日はもう、大丈夫だな」
 ずる、と指を引き抜きベッドの上に放り投げたままだったボトルを手に取る。液体の中身を掌に取り、それを
体温と馴染ませてから結合する部分に垂らす。
 くた、とシーツに倒れこんだ雪代はじっとその様子を見ていた。訳がわからなくなるまで触れられてから挿入
されるいつもとは違い、まだ意識もはっきりしているから、少し、いや大分恥ずかしい。しかも、藍沢の陰茎の
形やそれが射精する様を目の前で見た後なので、あれが私の中に、と想像してはドキドキしてしまう。
 緊張が藍沢に伝わってしまったのだろうか、ゴムを着け終わった彼に唇の端で笑われ、圧し掛かるようにして
額に口づけられた。
「今日は、ナカだけでイけるかもな」
「へ?」
 間抜けな声を上げたときに、軽く足を開かされて、ずぶりと侵入を許してしまう。目を男の手で塞がれると、
自分の中をあの屹立が進んでいる光景が見えた気がして、ぞくぞくと背中が浮いた。
 容易く根元まで収めきったあと、少女の呼吸と己のモノを馴染ませるように、藍沢は一切動かなかった。
「あ…」
 侵入者の脈動を腹の内側で感じ、思わず雪代は下腹部に手を当てた。
「どくどく…いってます」
「解るか?」
 ひくん、ひくんと少女の膣も馴染むように蠢き始める。こくんと頷くと、一緒になることができた喜びが、い
つもの何倍も襲ってきた。
「…動くぞ」
 ずる、と引かれて擦られる強烈な快感に、ぎゅっと藍沢にしがみ付く。
「ぅあ、あぅ、ひぅ」
「―、はぁ、は」
 紛らわせるように身体に触れる事はなく、ただ抱き締め合って交わる。極めて本能的な行為は熱を帯び、滴る
汗と荒い呼吸を生む。ぐじゅっとあわ立つほどに濡れた結合部は快感しか生まず、与える熱と与えられる熱が飽
和する。
「はぁー、は、あつぃ…れす」
「ふ、っ俺も、だ」
 奥の奥までねじ込まれ深く抱き締められたとき、雪代もぎゅうっと腕と足でしがみ付いた。そのまま小刻み
に奥を何回も叩かれると、あまりの快感に膣も痙攣し、それに全体を絞られた陰茎が暴発する。
「…ぁ、でて、るぅ」
「―いっ…ぅ、はぁ…」
 どくんと震えたそれを感じ取ったとき、雪代の頭も真っ白になった。
「悪い、今日は、このまま」
 いつもなら必ずインターバルを置く藍沢が、申し訳なさそうに告げて手早くゴムを付け替え、ころんと雪代を
転がし、バックの体勢で再び深く沈みこんでくる。藍沢の肩に爪を立てていた手が所在無くシーツの上をさまよ
うのを見て、指同士を組み合わせるように縫いとめた。
 ふるん、と上向く尻は薄暗い中でも真っ赤でとても痛そうだ。
「おしり、あんまり、みないでぇ…」
 恥ずかしそうに身をくねらせる少女の声が響いた。繋がった部分の少し上で、息づくアナルも丸見えだ。いつ
かそこも快楽に咲かせてやろうとぼんやり思い描き、藍沢は暴走する熱に身を任せた。

 我を忘れるほどに女を抱いたのは初めての時以来かも知れないと思いながら、男はカーテン越しの朝日を呆然
と眺めていた。
 まさか自分が後始末もせずにそのまま眠ってしまうとは、とばりばり頭をかいて周囲を確認する。投げ散らか
した衣服に散乱する使用済みゴム、サイドボードの照明はついたままで、全てを彼女が起きる前に片付けなけれ
ば、と溜息をついた。



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