「休養」

 ぼろぼろ涙をこぼしながらも、熱を上げる体は暴走する。下腹部に打ち込まれた他人の熱が戸惑う心以外の全てを連れ去っていく。
「やだ、やだぁ、あ」
「嫌じゃないだろう」
 眼鏡を外した紺野の顔は見慣れなくて、しかも意地悪でいやらしい笑顔を浮かべているから雪子は思わず目をそらす。
意地悪は行動にも伝染し、深く挿れられたままの物がぐちぐちと捏ねる様に動く。
「――ぁ―」
 声も出ないほど衝撃に雪子の体がぴんと緊張した。すさまじい感覚が背骨を抜けて頭まで真っ白になり、きゅうときつく内壁も絞まる。
うねる肉に紺野も達しそうになるが、奥歯をかみ締め何とかこらえる事に成功する。
「かわいい、雪子さん」
 くたりとソファに沈み込んだ体に覆いかぶさって抱きしめ、そのままキスを仕掛ける。未だ快感に慣れず、
行為の度に泣いてしまう彼女が可愛くて仕方が無い。
「か…わいくなんか、ない、です」
 容赦のないキスから逃れた唇は、荒い息にまぎれながらも真っ先にそう言った。
「かわいいよ、かわいすぎて僕のほうがどうにかなりそうなんだけどな」
 臆面も無い言葉に、情欲に染まった頬が更に赤くなる。恥ずかしすぎて雪子はのろのろと顔を腕で隠す。
ベッドだと枕に隠れることが出来るのに、生徒会室のソファには二人の間をさえぎるものは何も無い。
 いやいやをするように恥ずかしがる仕草はいたずらに男を煽るだけということを知らないのだろう。姿勢が変わることで
露になった小さなまるい胸に口付けを落とし、紺野は力の抜けた雪子の体を持ち上げた。
「ひゃ、あ、あぁあぁん」
 そのままソファに腰掛けた男の膝をまたぐ様に座らされた雪子は、衝撃に高い声を上げてしまう。芯を失っていない熱が
より深く進入する。一度達して甘くとろけた肉はいやらしい水音を立て、新しい体勢に順応しようとうごめく。
「まだむり、まって」
「駄目、雪子さんばかりずるいよ」
 下から突き上げられると、そこから愉悦が湧き上がる。それはぶわっと体中に広がって、雪子の理性や感覚を根こそぎ奪
っていく。腕はもう縋りつくことしか出来ず、顔は紺野の肩に埋め揺さぶられる体は成すがままとなる。
 開かされた腰が溶けるようだ。もう声を抑えることも出来ない。
「やぁ、ん、せんぱい、ふかいっ」
 男は華奢な腰を掴み、きつい肉の感触を楽しむ。先だってその処女を奪ったばかりの体はまだまだ情事に不慣れで、それが紺野を煽る。
 奥までねじ込むたび、肩口にある赤茶色の髪の毛がいやいやをするように揺れるのが見える。この様子では腰を振るよう
に言うのは余りにかわいそうだろうと判断し、紺野は少女の悦ぶ場所を狙って突き上げた。
「あ、あ―――」
「っ」
 大きすぎる快感に、雪子は高い声を上げぎゅうっと紺野にしがみ付く。スキンをつけているので直接的な感触は無いが、
ずっと中に入ったままのものも、熱を放ったようだっだ。 ぎちぎちと締めてくる内壁はまだ男を誘う。正直紺野の体力
は余っているし性欲も収まる兆しが無いが、これ以上の行為には少女の体が耐えられないだろう。それに腕時計を見ると
もうそろそろ見回りの教師が来る時間だ。
 ずるりと性器を抜き出し、スキンを処理してビニール袋に入れる。まだ紺野の膝上でぐったりしている雪子の頭を撫で、
顔を起こさせ軽くキスをする。おさまらない呼吸や涙の膜が張った焦点の合わない瞳に、やりすぎたかと僅かな後悔が過ぎる。
「せんぱいのばか」
 ばか、と繰り返す彼女を膝の上から下ろしてソファに座らせてやって、その正面に跪き乱れた下着や制服を直してやる。
「ばかで結構だよ。僕は幸せな馬鹿だ」
 そういった時、生徒会室の扉がノックされた。
「おーい、もう帰れよー」
 伸びやかな大迫の声に、雪子はばれはしないだろうかとぞっとする。開けていいかーという教師の声に、紺野ががらりとドアを開ける。
「すいません、色々片付けていたらこんな時間になってしまって」
「おう、わかった。村田もいるのか。危ないから紺野に送ってもらえよ」
 わかりましたー、と雪子は出来る限り平常を意識して返事をする。そのままにこやかに出て行った小柄な背中を見て、ほっと息をついた。
「紺野」
 生徒会室の外に出た大迫は、廊下で紺野を手招きする。ばれはしまいと思っていた頭をガツンと殴られたような気がし
ながら、後ろ手に扉を閉めた。
「あまり俺をなめるなよ、まあ普段の行いに免じて今日は見逃してやる。村田をきちんと家まで送り届けるんだぞ!」
 はい、と答え頭を下げる。今まで一切ばれたことが無かったのに、この若い教師にのみ見破られてしまった。もともと
ばれた時の手段もいくらか用意してはあるが、こう広い度量を見せられると素直に従ってしまう。
 がらがらとドアを開けると、おぼつかない足取りで雪子は帰る準備をしていた。
「大迫先生、なんて言ってた」
「キミが生徒会でどんな役割なのか、って聞かれた。とてもよく気の付く子で助かってます、って言っておいたよ」
 笑顔でぺらりと嘘をつく。そうでもしないと、このまじめで恥ずかしがりやな恋人と次に抱き合えるのが何時になるか分からない。
 またそんなことを、と言いながら鞄を肩にかけた勢いで細い体がふらつく。大股で彼女に近寄り腕を取って支えてやると、むくれた顔が見上げてきた。
「ちゃんと送るから」
「…おねがいします」
 紺野は自分の荷物を取り、恥ずかしがる雪子を宥めながら寄りかからせるように腕を組み、生徒会室を後にした。

 次の日雪子が学校を休み、見舞いに行ったらしい紺野が思い切り頬を腫らしているのを見て、「まあ、あれも青春だな」と、大迫は白い歯を見せて笑った。



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