ここら周辺には春雨とか夜兎工業とか吉原とか銀魂とか。たくさん高校があるわけだけれども一番安全なのは銀魂高校だ。

姉さんと同じ高校には行きたかったけれどとこの際仕方がない。姉さんにはなるべく安全なところにいて欲しいし、かといって俺は神楽と同じ学校に行きたくない。

まぁ姉さんをひとりで学校に通わせるより神楽が守ってくれてるだけマシだけどね。


「神楽、お前のクラスの沖田ってやつなんなの?」

「……なにかあったアルか?」

「あぁ、お前は知らないのか。今日姉さんと帰ってたからどういうことなのかなって」


見たとき思わず傘を折ってしまったことはしょうがない。そりゃあ、折るに決まってるでしょ?

俺の大好きな大好きな姉さんが、いかにもモテそうな敵の多そうな、そんなやつと一緒に歩いてたんだから。

姉さんが可愛いのは認めるけれど姉さんと2人で下校?そんなの認めない。姉さんの隣を歩く男は俺一人で十分だ。

心当たりがないのか神楽はしきりに首を傾けているが、てかそのスピードで右に左にと傾けていると真面目に考えてるのかと疑いたくなる。どうやら思い当たることはないらしい。


「付き合ってるって噂もないし同じクラスってことしか接点ないネ」

「ふーん…」

「あ、でも部活が一緒アル」


部活。その言葉に不安が過ぎる。部活なんて大きな影響のある場ではないと思っていたからなにも言わなかったけど、よく考えたら青春にもってこいじゃないか。

姉さんには俺がいるから男なんて興味ないよね、なんて思ってた俺が馬鹿だった。男に興味がないんじゃない。俺が近付けなかったんだ。


「で、その部活ってのは?」

「剣道部で、姉ちゃんがマネやってるアル」


一番駄目な奴だ…!美人で優しくてたまにものすごく可愛い、そんな子が自分たちのためにサポートをしてくれてる。そんな勘違いを沖田がしていたら惚れてることは確定じゃないか!

いやあながち勘違いではなく姉さんのことだから本気で応援してるんだろうけど。そんなの許さない。

どうしたものかと考えていると、玄関のほうで物音が聞こえた。きっと姉さんだ。だとしたら、することは決まっている。


「ただい、ま?ちょっと神威どうしたの」

「許さないから」

「え、なにを?」


リビングに入ってきた姉さんに抱きつき華奢な肩に顎を乗せる。柔らかくて、ふわりと香る髪に欲情しちゃったり。

ちゃんと、双子だということは理解しているけど。これ以上はない繋がりだ。

だからこそ、余計に。ただのクラスメートであり、ただの同じ部であるだけの人に嫉妬をしているわけだけれど。


「姉さんが、俺以外の男の隣を歩くのは許さない」

「…私の隣はいつだって神威だけど…、あ、沖田君と歩いてるの見たの?」

「見てない!…いや…ごめん見た」


くすくすと笑う姉さんを前に小さな罪悪感。そして少しだけ、にやけてしまったことにも申し訳ないと思っている。

だって“私の隣はいつだって神威だけど…”なんて言われたらにやけてしまうに決まってる。姉さんはいつだってずるい。


「神楽の話をしてたの」

「神楽…?」

「沖田君と神楽がいわゆる犬猿の仲ってやつで…姉妹とは思えないって話から始まっていっぱい文句聞いちゃった」


拍子抜けするほど穏やか…悪く言えばくだらない内容で、あんなに必死だったのが恥ずかしくなってくる。ちゃんと神楽のいいところも言ってきたんだから!と付け足した姉さんの笑顔はこれ以上はないほどに輝いてる。

姉さんの一番は結局俺たち兄弟、とくに俺だったってことで今回はそれでいいや。ねぇ?姉さん。




(姉さんそんなマフラー持ってたっけ?)(あぁ、これは剣道部のみんなに貰ったの)(侮れないなぁ、剣道部)


*20131129
遅くなって本当に申し訳ありません!話が進んでないだけにどうするか迷った末、終わりがよくわからない学パロというね、神威のシスコンが表現できてればいいなぁと!思います!これからもYOUTHをよろしくお願いいたします。ありがとうございました!


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