つまらない。弱い。面白くない。どこに行っても楽しませてくれる相手がいなくなる程強くなった俺は、この喉の乾きをどう潤せば良いのだろう。

殺し合い以外で俺を楽しませてくれる存在なんてあるわけがないのだけれど、それでも楽しめないとは大問題だ。これから現れる強い奴と闘うために生きる?まぁ実際そういう生き方をしているけれど俺が楽しみたいのは今だ。

この1ヶ月いくつもの星を巡りいく人もの天人と殺り合って、でもなにも変わらない。


「今日はたいそう機嫌が悪いようで?」

「………そんなことないよ、それよりここの天人は?」

「それが見当たらないんだよなぁ」


任務でこの星に来たのはいいけれど、やっぱりこれは可笑しい。

まず、そもそもだけれど、生命体がいない。多少栄えていたようで市場のような場所はあるがそこにあるべき生き物がいない。いきなり消えたと言っても寡言ではないほど、売り物は揃っているんだけど。

そして、にも関わらず赤が舞っているわけではない。生臭くもない。誰かが暴れたわけではないらしい。


「阿伏兎………」

「あぁ、厄介だねぇ」

「別にどうだっていいんだけど此処にいた奴らってそこそこ強いんでしょ?そしたらそいつらを消した奴を倒したいじゃないか」

「言うと思いましたよ団長」


心底呆れているようだが阿伏兎がどう思おうと関係ない。阿伏兎は俺に尽くせばいいんだ。

ふと目に入った白。遠目でよく見えないけれど、あれは…人?横たわっている。白いスカートがなびく。と共に、


「血のにおい…ちょっと行ってきてよ阿伏兎」

「面倒だな」

「だから阿伏兎に行かせるんじゃない」

「たく、迷惑な上司をもったもんだ」


愚痴をこぼしつつも行ってくれるのだから、相当躾られてるなと思う。躾てるのは俺だけど。


「!?おい団長!!!」

「なにか面白いことでもあった?」

「面白いってか…は?」

「はっきり言ってくれなきゃわかんないんだけど。…………………え?」


俺より色素の薄い髪。陶器のような白い肌。怪我をしたのか所々血に濡れているが、完治している。極めつけには、俺と瓜二つな整った顔立ち。

なぜチャイナ服じゃないのだろうなんて疑問はあった。だけど抱えられてる紫の番傘がその疑問を吹き飛ばした。

間違いない。姉さん…神椰だ。

確信してからの俺の行動は早かった。抱き上げ、頬につく血を拭い、そして抱き締めた。


「神椰、姉さん。起きてよ、ねぇ。姉さん…!」

「ん…………………かむ…い?」

「姉さん!?」


一瞬だけ、俺を認めた瞳。虚ろだったけど俺より色素の薄い青は変わらずだ。

再び気を失った姉さんを背負い、阿伏兎に言う。


「帰ろうか」


任務をこなしてないのに帰れるわけないのだけれど。阿伏兎も俺に逆らえるわけがないんだ。




(ものすごく、軽い)
(またすぐに消えちゃいそうで、怖かった)


*20130301
神威視点苦手みたいです。でももうちょっと頑張る!



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