騒音が近付いてくる。私はそろそろお暇するべき、というよりかは、なるべく存在を知られたくないのだ。

現在、なにも任務を請け負っていない自由な身。ただ目的は宇宙にあるから、旦那か神威のどちらかに協力を求めることになる…のだけれど……。


「とりあえず神威、しばらくは旦那にお世話になるよ」

「…なんで」

「旦那は私にとっては上司なんだよ、直接ではないけど。…私の直属の上司と連絡取れますよね?」


くるりと身体を回転させれば、やはり余裕な笑みを浮かべた旦那。面白いとでも思っているのだろう。

いつかこの人の驚愕したお顔を拝見したいものだが、私の行動なんてお見通しなんだろう。面白くない。

わかっているのに、私の口から答えを聞き出そうとするところも、やはり面白くない。


「自由になったのに、お主はそれでいいのか?」

「こんな逃げたみたいな形じゃなくて、ちゃんと上司に勝って自由になりますよ」


私は、あなたの期待通りの解答ができたでしょうか?できたでしょうね。

旦那は口の周りの皺が深くさせた。反対に私の頬の筋肉は強張るばかりだ。


「そういうところは双子のようだ」

「…だってさ、神威。あぁ、あと神楽」


どうしようもなく胸が痛かった。泣きそうになった。

もうただの夜兎ではない私が、神威と似てるなんてことあるわけないのに。一卵性の双子なのにおそらくDNAは違う。それが私と神威の関係を崩す決定打なのだ。

そんな動揺を知ってか知らずか、神威はいつも通りの笑みを浮かべている。その笑顔の裏で泣きそうなのには気付かないフリをした。

私も大概酷い姉だと思う。例えすでに縁が切られたものだとしても。


「…神楽が、どうしたの?」

「来てるよね、ここに」

「!?…なんでわかったの?ていうか覚えてたんだね、神楽のこと」

「わかるよ気配ぐらい。それに、たったひとりの可愛い妹だから」


少し嫌みな言い方をされた。別に気にしないし、実際気にしていない。溝を見せつけられただけだから。

それでも私は神威の双子の姉なのだ。単なる習慣、あるいは強がりなのかもしれないけれど。

番傘を開き、再び旦那に目を向ける。神威と同じように、気持ちのこもらない笑みを浮かべながら。


「神椰よ」

「なんでしょう、旦那」

「日輪の警護を頼んでも良いか?」

「なんなりと…私があの人を倒すまでは、あなたは私の上司ですから」


この建物に入る際に、外から日輪は確認している。場所は曖昧だけど、なんとかなるだろう。

とにかく上を目指せってね。


「じゃあね、神威」


永遠の別れになるかもしれない。それでも構わなかった。

思い出したよ神威。約束を守ってくれて、守らせてくれてありがとね。




(神椰、いつか一緒に地球に行こうよ)(地球?お父さんが言ってた?)(そうそう!美味しいもの、沢山食べようよ)(わかった、約束ね)


20140221
笑顔三人衆


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