高尾君はやっぱり、誰とでも仲良くなれる、そっち側の人間なんだと思う。それが素かどうかは知らないけれど、涼太みたいに冷たい目では笑っているわけではない。 そういう意味では、同じ人懐っこいでも高尾君のがずっといい。涼太より演技がうまいなんてことがあったら最早軽蔑ものだが。 というわけで兄と高尾君は普通に仲良くやっている。兄がオマケのはずの今日のイベントは、はたから見たら私がそう。後ろをただ着いていくだけの私を、誰も2人を誘った張本人だとは思うまい。 「……あ、」 見覚えがある人物がいる。ピュアというか真っ直ぐな人で、劣等感を抱かせる人。そんな真っ直ぐさは私にはない。 「荒木?どうかした?」 「いや…知り合いがいただけ。ま、バスケ部で会うでしょ」 「おい咲希また男友達か!?」 「ほっといてよ、女友達だけど」 小さな声で桃井さつきか、と呟いたのが聞こえた。さすが生徒会長ちゃんと生徒を把握してらっしゃるんですね。数多いマネージャーの中でさつきちゃんを選んだのは謎だが。 彼女は、嫉妬の対象だ。私と同じように有名人と幼い頃から関わりがある。だが同じ境遇にも関わらず、あの子は綺麗だ。 私は弱かったんだと思う。さつきちゃんは、周りからの妬みに負けなかった。ただそれだけだ。 考えてもみよう。別にさつきちゃんがバカな人間だとか言うつもりはない。ただ、私が聡い人間だとは自覚している。鈍感なんて無縁で、かつ回転の速い人間だ。 そのため部長に選出されたし、立候補ではなく推薦で生徒会なんて厄介な委員会に所属させられている。ちなみに推薦は私ひとりだ。 話を戻す。つまり、人間関係に関して信頼は無理だとか裏表があるだとか、そういうのを幼いながらにして気付いてしまったのだ。お姫様とか、そういうのに憧れるだろう幼稚園児のときに。 「…相変わらず無駄にでかい体育館だね」 「200人もいりゃ無駄じゃねーよ。それに体育館を使うのはバスケ部だけじゃねぇし」 「…数だってあるし」 「それでもまだ足りないくらいだよ」 私からふったのだけれど、面倒になってふーんと流した。 もう、すぐそこに、涼太がいるんだ。 (…………)(ワクワクし過ぎて声も出せないってか)(あんたに呆れられるとか高尾君可哀想)(咲希、言葉の暴力って知ってっか?) *20130110 prev / next ←BACK |