「咲希ちゃんまた賞もらったの!?」

「本当荒木先輩ってクラリネット上手ですよね」

「雑談はいいから練習練習!」


今中学三年生の先輩が引退して早数ヶ月。あのとき窓から見えた紅葉やイチョウはすでに散っている。

練習開始のミーティング終了後群がってきた雑談好きな部員を追い払い、ため息をついた。コンクールに出て毎度思うが、一体誰がそんなコンクールの情報を集めているのだろうか。私が他人にいう前に知っているのだから、本気で怖い。

それにしても音楽は、いい。人に裏表があっても音楽にはそれがない。奏でた人の心がそのまま表れるんだ。演奏者の思いや記憶、そういうのが込められてやっと音楽が完成する。楽譜通りに吹いているのでは、ただの音だ。

………涼太の笑顔も、音。笑顔の型がもう完成していて、それにはめるだけ。面白くない。

涼太からしたら、そんな笑顔なのにキャーキャー言ってるファンの子のが面白くないのだろうが。ファンなら、察してあげればいいのに。偽物の笑顔だって。


「咲希、バスケ部の高尾くんが呼んでるけど?」

「……高尾くん?」


涼太、のことだろうか。正直な話面倒だ。なるべく涼太には関わりたくない。

私を使って涼太と関わろうとするのは高尾くんに限った話ではないのですでに諦めている。ただ、それが嫌で中学生になってから秘密にしていたのだから少し悔しい。


「…ごめん、部活お願いしていい?」

「いえっさー」


友人のゆるーい返答を背に、体育館へ向かった。寒い、なぁ。




(高尾くんとはこの前のが初めて話したに等しいのに)


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*20121123
ヒロインのキャラクター像が迷子



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