クラスメートのひとりが捻挫をしたり、野球部食中毒事件があったりとなかなか大変だった。代理をたてたり全校集会があったり。

しかもだ。その捻挫した子が長距離の子でみんな代理なんか嫌がるし、全校集会が開かれたのはちょうど私たちの体育の時間。なんの嫌がらせだ。

とまぁいろいろ事件があったわけだが無事に今日、体育大会を迎えられたのだ。

そして終盤。リレー出場者が続々と集合場所に集まっている。


「咲希ちゃん、お前リレーだったよな?」

「それがどうかしました?」

「行けよ」

「だって会長仕事さぼるじゃないですか間に合うようには行きますよ」


普段は真面目で素敵な先輩なのだが今日に限っては興奮して仕方がないらしい。熱い方ですもんね、目指せ優勝ですもんね。

ライバル同士だったらなにを言われるかわからないが、ありがたいことに先輩は3年3組。縦割り学級で同じチームだ。


「ま、頑張ってきますよ」

「一位以外許さねーからな」

「…頑張ります」


…本気の目だった。できるできないじゃなくて、一位をとらないとやられる。

高尾君を見つけて話しかけてみたが私の緊張が伝わったのかなにか固い雰囲気になってしまった。ごめんなさい。でもなんとしても優勝をあの会長に捧げなければ…!


「荒木、だ、大丈夫だって」

「う、えっと、うん」

「…なんか挙動不審なのってレアだな」

「そういうのいいから!」


こちとら結果によって数週間の放課後が決まるんだ。なるべく吹部に支障を出すわけにはいかない。

でも学校大好きな会長にそんなお願い通じるわけないんだ。だから、勝つしかない。

深呼吸をする。一瞬なにも聞こえない気がした。声援も、アナウンスも、ピストル音も。


走り出した1年生に期待を込め、位置に着く。体育大会の華、リレー。最終的な結果もリレーによって決まる。

体育大会は、始まったばかりだ。


♂♀


「まじかよ…」


うちの次期会長、荒木咲希はやっぱり凄かった。脅したのも関係するのだろうが、それにしても…。

1年生のリレー選手が最後尾スタートなんて冗談にもならないことをしてしまい、途端俺は諦めた。最後の体育大会は優勝は無理か、なんて。

でもあいつ、咲希ちゃんは諦めなかったらしい。

先頭と相当な距離があり、もう追いつくのは無理だろう。そんな雰囲気のなかバトンを受け取った咲希ちゃんは、


「《3組女子!凄まじいスピードで追い上げています!2位!2位と並びました!》」


実況も今までとは打って変わって気合いのあるものに変わった。今日一番の盛り上がりだ。

その中心にいるのは、咲希ちゃん。

きっとあのシスコンが来ていたら喜んで、それで俺に自慢するだろう。安易に想像できる。でも、今の咲希ちゃんは小学校のときからじゃ想像できない。

同じ小学校出身は悲しいかな、俺と咲希ちゃんの2人だ。だから咲希ちゃんの家族を詳しく知っている人はここにいない。あいつにとっては好都合なんだろうが。

あいつらと咲希ちゃんが離れたのは正解だったと思う。ちゃんと咲希ちゃんはあいつらの家族だ、ちゃんと輝いてる。


「《3組女子!すごいです!2位だった4組女子を追い抜きました!》」

「《1位とほぼ同じタイミングでバトンパス!3組と5組の1位争いです!》」

「《おおお3組男子!あれは…高尾か!?さすが我が校エースは違う!一気に5組との距離を離した!》」

「《ところでさっきの3組女子!よく見てみれば荒木さん?音楽もできて運動もできて美人とか素晴らしいですねあいたっ!会長なにするんですか!?》」


思わず放送委員を殴ってしまったのは許して欲しい。ちゃんと実況しろ!




(咲希ちゃんお前やっぱあいつの妹だよな)(そんなの嫌ですよ、ところで優勝おめでとうございます)(咲希ちゃんのおかげだよ、ありがとな)(!!)


*20131006
高熱により体育祭不参加者がここに…



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