君はなぜ平凡を装っているんだい? 帰り際。赤司君は確かに私にそう言った。なぜと言われても私にはどう答えたらいいのかわからなかった。 別に装っているわけじゃない。隠れやすいだけだ。音楽の才能なんて、誰かに訴えなきゃ伝わらない。でも伝えたい相手なんて近くにはいないんだ。 「一昨日はありがとな。大丈夫かー?」 「どっかの誰かさんの所為で疲れました」 「ごめんごめん」 あのあと早急に体育館に戻り、荷物を持って軽く挨拶をし帝光を去った。しばらく涼太とは会えないし会う気もない。偶然会わないように気をつけなきゃ。 学校の小さい机に突っ伏し、横目で高尾君を睨む。眉尻を下げながら笑う高尾君はやっぱり人懐っこそうで羨ましくなった。 無論、それにより周りに人が集るのも嫌なんだけど。群れるのは部活の友達とだけで十分だ。 「もうほっといていいから友達のとこ行きなよ」 「え、なんで?」 「なんでって…私と絡んでてもいいことないでしょ」 「あ、わりぃ俺といるの楽しくなかったよな。俺は楽しいんだけど…」 「は?」 相当大きな声で言ってしまったらしく、一瞬静かになった教室に頭が痛くなった。失態だ。 「っごめん、高尾君。楽しくないわけじゃないよ。ただ、高尾君を待ってる人はたくさんいるでしょ?」 慎重に選んだ言葉は、選んだにも関わらず逃げ腰みたいな私らしくない羅列だった。最もそれに気づくような人はこの教室にいない。 この前再確認した。私は他人と関わるべきではない。仮に親友ができたとしても、彼氏ができたとしても、涼太に会ったらその瞬間に関係が崩れる。 だから。私は無関心なままでいい。誰も傷つかないように、私が傷つかないように。 私と涼太の喧嘩に出くわして不快な思いをしない人なんて多分いないと思うんだ。いたとしたらそれはよっぽどの物好きだ。 「お前、なんか勘違いしてね?」 「なにが?」 「今日の放課後、体育館来い」 「私だって部活あるんだけど」 「いいから!」 「っ…」 今までに見たこともないくらいに必死な高尾君の誘いを断れるはずがなくて、なんでこんなに必死なのかわからなくて。 あぁ、高尾君って、他人って、こんなにも遠いんだな。 (わからない) *20130809 今は銀魂進撃熱が強くてもうアホですでも頑張って黒バス書きました← prev / next ←BACK |