屈託のない笑顔のまま涼太を責めた高尾君に感謝しつつ、少し怖いと感じた。笑顔で怒る人は怖いとは言うけれど…なるほど、怖いわ。

教室に入り、高尾君は私を庇うようにして涼太との間に割って入った。涼太のいつもの余裕の笑みに、困惑の色が混ざる。


「俺たちの問題なんスけど、高尾君」 

「それはそーだけど、渋ってる荒木に頼み込んだの俺だから。ごめん荒木」

「い、や……ありがとう」


中学生になってからは揉め事も厄介事も面倒な事も全部避けてきたから、懐かしいと思うと同時に虚無感に襲われる。少女漫画みたいだとか勝手に思って、全然現実味がわかないんだ。

けれど紛れもなく私に背を向ける高尾君がいて、その奥に私を睨む涼太がいる。頬をつねる必要なんて、ない。肌にピリピリと伝わる空気が本物だと物語っている。


「高尾君さ、なんでこんなのと一緒にいるんスか?あ、もしかして俺たちと話したかったから?そういう理由ならあんたも含めて軽蔑するけど」

「残念ながらそっちの趣味はねーよ。一応こんなでも俺モテるんだよねー荒木にはあんまだけど」

「ごめん高尾君、モテそうとは思ってたけど本当にモテるなんて知らなかった」

「だろうと思った。荒木はこうやって他の女と違って異性に無関心で、媚びを売ったりしない。こんな女友達なかなかできないっての」

「!」


異性に無関心なんじゃなくて、他人に無関心なんだ。なんていつもみたいに悲観的にはもちろんなった。そりゃなるよ。事実だし。

でもそれ以上に嬉しい。他人に無関心なことは褒められたことじゃないし、実際褒められたことでもない。でも彼は、褒めてくれた。

私がひとり感動しているなかで、2人の言い争いは続く。


「そんないい女じゃないっスよ、咲希は」

「なにか根拠でもあんの?」

「だってそいつ、」


俺に惚れてるから



空気が固まる。低い声音にぞくりとした。

涼太は少しの笑みを浮かべながら、でも鋭い視線を私に向けた。この顔は、表情は、好きじゃない。


「今は、涼太のこと好きなんかじゃないよ。昔のことは否定しないけど」


勘違いされ続けるのも嫌で、思っていることをストレートに言った。そうだ、私は涼太のことなんて好きなんじゃない。最早他人に無関心な、冷たい人間だ。

高尾君に可哀想だという目を向けられた。なぜかは、わからないけれど。




(暗闇に光が射したのも一瞬)(また無関心な私へと戻るのです)


*20130615
人間不信は直ってないけど、高尾がそのきっかけになればいい



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