キセキの世代の自己紹介を終えたところで、私はひとまず高尾君と合流することに決めた。一生徒会役員として、連れてきた者としてちゃんと責任は持たないといけない。

問題は、なぜか。なぜかはわからないけれど、涼太に引っ張られているということだ。


「ちょっと涼太!」

「煩いっスよ。黙ってて」

「…」


もうなんなの。わけがわからない。流されるのが私のポリシーだと言っても、高尾君のお願いをきいてしまったことを絶賛後悔中だ。

涼太に引っ張られているとはいえ男のスピードについていくなんて文化系の私には難しいし、なんだか頭の中がゴチャゴチャして涙でてきそう。涼太と関わらないようにって思って来たのに、なんで、こうなったの。

連れてこられた場所はとある教室。抵抗せずに入っていったところを考えると涼太のクラスなんだろう。ガタガタに並べられたら机がいかにも中学生らしい。


「なに考えてんスかあんた」

「は?」


それは私の台詞だよ。


「そうやって誤魔化すの好きっスよね。わかってるんスよ。あんたがキセキに興味あるってことぐらい」

「(めんどくさい…)」

「高尾君だっけ?あいつは自分から頼んだって言ってたっスけど怪しいっスね。お前が頼んだんじゃねーの?」


あ、やばい。涼太の口調が変わった。

自然と体が強ばるのがわかる。私にとって、涼太の口調が崩れること即ち罵倒の合図だ。細められたら目が、私を蔑んだ。


「本当になんなんだよお前。迷惑なんだってそんなこともわかんねーの?目障りなんだよわざわざあんたがいない中学選んだのにシャーシャーと部活に顔出されたら意味ないっつの。つーか俺のプライベートに一切関わらないで。視界に入んないでまじで」

「…」


涼太ファンの子たちが見たら、驚くだろう。でもこれが、私を前にした涼太の通常運転だ。

高尾君に頼まれたのは事実だ。そう言ったって信じてもらえないのもわかっているけど。だって私と涼太の仲だし。

結局黙って、涼太の気が済むまで罵倒を聞き続けなきゃいけない。まったく、初恋の相手とこんな関係だとは我ながら笑える。



「黙って聞いてればさーなーんか黄瀬君好き放題言い過ぎじゃね?」


突然聞こえた声に私だけではなく涼太も振り返った。私たちが入ったのとは反対側の入り口。

そこに、いつもの人に好かれそうな笑みを浮かべた高尾君がいた。




(なんだか少しだけ、救われた気がした)


*20130525
ヒーロー高尾君。すみませんちょっと短い



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