今のところ会ったのは赤司君と青峰君、そして緑間君の3人。キセキの世代に含まれるのは5人らしく、涼太を含めたら会ってないのはあと1人だけ。

飛び抜けて大きい人がいたから、多分その人だとは思うのだけれど。才能とか関係なしに身長だけでやっていけそうだ。


「咲希ちゃんちょっと待っててもらえる?」

「いいけど…」


唐突にどうしたんだとは思っても理由を聴く必要はない。さつきちゃんは私の案内係の前にバスケ部マネージャーだ。きっと部員のほうで問題が起こったに違いない。

案の定ひとりの部員のそばに寄り…


「テツくーーーーーんっ!」

「なんでしょう桃井さん」


さつきちゃんのさっきの台詞には最後にハートがついてた気がする。そして言うまでもなく黄色い声だった。ちなみに抱きついてた。


また、心が疼く。汚い嫉妬。

イケメンに囲まれ妬まれるから恋なんかしてないんだろうとかそんな予想を勝手にしていた私が悪い。とはいえ、普通できないと思うんだ。

私の場合一時期異性とまったく話せない時期があった。正確には話さなかった。男子と話すだけで調子乗ってるやら口説いてるやらって言われようだった。たまったもんじゃない。

調子乗ってるのは、口説いてるのは貴方のほうでしょ。そう言ってしまえば良かったものの如何せん私は面倒なことが昔から嫌い。だから無闇に関わる必要なんてなかった。

男子の運動部マネをやっているさつきちゃんからしたら愚問だろうし、きっと負けたくなかったんだろう。また勝手な解釈をする。

大好きな人たちとの関わりを、周りの人の目を気にして切るなんて私には無理かな。

ほら、こんな風に彼女なら語りそうだ。


「なんか甘い匂いするー」

「は?ちょっと!!」


上からの急な重みに耐えられず足下から崩れる。抱きつかれるなんて体験は初めて(兄を除く)で、さすがに冷静ではいられない。

かといって喚くわけにもいかず、上からの圧力に従うだけ。反射的に手が出そうになるけど骨折すると楽器を吹くときに困るなーなんて呑気に考える余裕はあるらしい。


「ちょっと紫原君、咲希が可愛いのはわかるけど兄の前でそれはやめようか」


声と同時に目の前に現れた兄が私の肩を掴み支えてくれる。なんだか他人に無関心だった私はあーイケメンだなーなんて思ったりして。

でもよくよく台詞を考えてみたらやっぱりシスコンで、ちょっとだけ萎えた。やっぱりこの人残念だ。

紫原君という人についてはよくわからないけれど、どうやら甘い匂いに反応したらしい。心当たりがないわけではない、けれど。

兄と紫原君が口論している間を割って紫原君の目の前にひとつの飴を差し出す。


「紫原君が言う甘いものってこれ?」

「それそれーくれるの?」

「こんなんでいいなら、あげる。よく気付いたね」

「やったーありがとー。だって荒木ちん甘い匂いするしー」


荒木ちん?と聞き返せば会長の妹なんでしょーと返された。いやそうだけど。そういう質問をしたつもりはなかった。

見た目と中身のギャップが激しい。喋ってる限りまるで子供だ。

……この人の素はどんな感じなんだろうと探ってしまうあたり私の人間不信はまだまだ治らないらしい。無論治す気もないが。


さつきちゃんも、キセキの世代とやらも、こんな私に普通に接してくれる。中学の友人とはお互いに無関心だし、小学校では妬みの対象だった。こんな交友関係しか持てない私はきっと、彼らのようにはなれない。


「咲希ちゃーん!こっち来てー!」


さつきちゃんの声が聞こえ、そちらを見る。さて、それじゃあ彼女の元に参りましょうか。




(会長の妹なのに荒木ちん優しいー会長と全然違うしー)(それ俺に喧嘩売ってるよな?)


*20130325
最近忙しくて…すみません



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